相続税は預貯金や不動産などの遺産に対してかかるため、被相続人が住んでいた家も相続税の課税対象です。
ただし、被相続人と同居していた人物や被相続人の配偶者が自宅を受け継ぐ場合は、小規模宅地等の特例や配偶者居住権を活用し、相続税を節税可能です。
本記事では、被相続人が住んでいる家の相続税の計算方法や節税方法について、わかりやすく解説します。
目次
被相続人が亡くなり住んでいた家を相続する場合、たとえ相続人がその家に住んでいたとしても相続税がかかる可能性があります。
相続税は、相続や遺贈によって財産を取得した人が納める税金であり、家などの不動産も課税対象だからです。
相続や遺贈によって取得した財産および相続時精算課税の適用を受けて贈与により取得した財産の価額の合計額が遺産に係る基礎控除額を超える場合に必要です。
引用元:No.4205 相続税の申告と納税(国税庁)
ただし、一定の条件を満たすことで、相続税の負担を大幅に軽減できる「小規模宅地等の特例」や「配偶者居住権」を利用し相続税を節税できる場合があります。
それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。
「小規模宅地等の特例」は、被相続人が住んでいた自宅(宅地)を相続した場合に、その宅地の評価額を大幅に減額することで相続税を軽減できる制度です。
被相続人の自宅に小規模宅地等の特例を適用すれば、最大で土地の評価額が80%減額されます。
個人が、相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用または居住の用に供されていた宅地等のうち一定のものがある場合には、その宅地等のうち一定の面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、下記の「減額される割合等」の表に掲げる区分ごとにそれぞれに掲げる割合を減額します。
自宅の土地は高額な評価額となることが多いため、小規模宅地等の特例を利用することにより、相続税の負担が大幅に軽減されるケースもあります。
小規模宅地等の特例を適用するには、いくつかの要件を満たす必要があります。
まず、被相続人が住んでいた宅地であることが前提です。その上で、以下のいずれかに該当する相続人が特例を利用できます。
| 配偶者 | 無条件で適用できる |
|---|---|
| 同居親族 | 相続開始時に同居しており、かつその後も継続して住み続ける場合に適用できる |
| 持ち家がない親族 | 被相続人と同居していないが、相続開始前から持ち家がない親族で、相続開始後は相続した住宅に居住する場合に適用できる(家なき子の特例) |
これらの条件を満たしている場合に限り、小規模宅地等の特例を適用できます。ただし、相続税の申告期限までに相続人がその宅地を所有していることも条件ですので、注意しましょう。
建物が区分登記されていなければ、玄関や生計が別であっても「同居」と認められ、小規模宅地等の特例(評価額最大80%減額)を適用できるケースがあります。
以前は建物内部で行き来できる構造かどうかが判定基準とされていましたが、現在は区分登記の有無が分かれ目です。一方、親子それぞれの名義で区分登記している場合は、原則として親名義部分に対応する土地のみが対象となります。
私共が担当した事例では、実際に外階段でつながった別玄関の二世帯住宅にお住まいだったお客様について、登記簿・住民票をもとに確認し、同居親族としての適用可否を整理したケースもあります。「玄関が別だから使えない」と思われがちですが、まずはご自宅の登記状況をご確認ください。
親と別居し賃貸住宅にお住まいのお子さまでも、一定の要件を満たせば「家なき子の特例」により小規模宅地等の特例(80%減額)を適用できます。
要件は、被相続人に配偶者・同居の相続人がいないこと、相続開始前3年以内に自己や配偶者・三親等内の親族が所有する家に住んだことがないこと、申告期限まで宅地を所有し続けることです。過去に自分名義の家を持っていて売却後に賃貸へ移った場合などは、適用が認められないこともあります。
杉並・中野相続サポートセンターでは長年賃貸住まいで地方の実家を相続されたお客様からのご相談内容に沿って、居住履歴や賃貸借契約・住民票の除票をもとに要件を確認し、適用できたケースがあります。別居されているからと諦めず、まずは過去の居住履歴をご確認ください。
小規模宅地等の特例を適用すれば、宅地の評価額が最大80%減額されます。
例えば、評価額が5,000万円の土地であれば、特例を利用すると1,000万円まで評価額が下がるため、相続税の課税対象となる課税遺産総額を大幅に減らすことができます。
小規模宅地等の特例は「相続」により取得した宅地が対象のため、生前に贈与してしまった自宅そのものには適用できません。
加えて、暦年課税で行った贈与は「生前贈与加算」の対象となり、一定期間内の贈与は相続財産に持ち戻して相続税を計算します。この持ち戻し期間は2024年1月以降の贈与から段階的に3年から7年へ延長されており、相続開始が2026年中であれば従来どおり3年、2031年以降の相続からは7年分すべてが対象となります(延長された4年分については合計100万円の控除あり)。
したがって、自宅の生前贈与は登録免許税・不動産取得税の負担増や小規模宅地等の特例が使えなくなる点も踏まえ、本当に贈与すべきかどうかを慎重に判断する必要があります。
私共で承ったご相談の中には将来の相続税対策として自宅の贈与を検討されていたお客様について、贈与した場合と相続まで待った場合の税負担を比較し、小規模宅地等の特例を活かせる相続まで待つ方が有利であることをご説明した例があります。生前贈与は万能な節税策ではなく、対象財産の性質によって向き不向きがあります。
配偶者が相続人である場合、2020年の民法改正により導入された「配偶者居住権」を活用し、住んでいる家に引き続き住み続ける権利を確保する制度です。
加えて、配偶者居住権を設定すれば、二次相続にかかる相続税を節税できます。配偶者居住権とは、被相続人が所有していた家に、配偶者が無償で住み続けられる権利を設定できる制度です。
関連サイト法務局「配偶者居住権とは何ですか?」
配偶者居住権は二次相続、すなわち配偶者が亡くなったときに消滅するので、二次相続時の自宅の相続税評価額を下げられるメリットがあります。
配偶者居住権を設定するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
上記の条件を満たし、配偶者居住権を設定すれば、配偶者は自宅に住み続けられ、預貯金など他の遺産も相続しやすくなります。
配偶者居住権は前記の要件を満たしていれば権利として発生しますが、配偶者居住権を第三者に対抗するためには登記が必要であることに注意しましょう。
配偶者居住権を設定する最大のメリットは、配偶者が自宅に住み続ける権利を確保しながら他の遺産も受け取りやすくなる点です。
配偶者居住権を設定すれば、自宅の権利を配偶者居住権と所有権に分けられ、配偶者は居住権だけでなく預貯金なども相続しやすくならうからです。
また、配偶者居住権は配偶者が亡くなったときに消滅するので、二次相続が発生したときに実家の相続税評価額が軽減されるのもメリットといえるでしょう。
配偶者居住権は、自宅に住み続けながら預貯金も確保したいという配偶者にとって有効な制度で、配偶者が亡くなった際(二次相続)には居住権が消滅するため相続税がかからず、二次相続の負担軽減にもつながります。
ただし、将来自宅を売却して住み替える予定がある場合などは、あえて設定しない方が柔軟に対応できることもあり、一次・二次相続を通じた総合的な判断が必要です。
杉並・中野相続サポートセンターでは、将来的な施設入居も視野に入れておられたお客様について、一次・二次相続双方の税負担を試算し、設定する場合としない場合を比較してご提案した例があります。シミュレーションご希望の場合はぜひご相談ください。
住んでいる家の相続税を計算するには、まず土地と建物それぞれの評価額を算出する必要があります。土地と建物では、相続税評価額を計算する方法が異なるのでご注意ください。
それぞれ詳しく解説していきます。
土地の評価額は、主に「路線価方式」と「倍率方式」の2つの方法で算出されます。都市部などで路線価が定められている地域では、路線価方式が一般的に用いられます。
それぞれの特徴は、下記の通りです。
| 路線価方式 | 国税庁が定める道路ごとの標準的な価格である路線価に土地の面積を掛けて相続税評価額を計算する |
|---|---|
| 倍率方式 | 路線価が定められていない地域で使用する方法であり、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けることで相続税評価額を計算する |
建物の相続税評価額は固定資産税評価額を使用します。固定資産税評価額とは、名前の通り固定資産税や都市計画税の計算に使用する評価額です。
被相続人が所有していた建物の固定資産税評価額は、被相続人宛に届いた納税通知書や不動産の所在地を管轄する自治体の役所にて確認可能です。
タワーマンションや区分所有マンションも小規模宅地等の特例の考え方自体は戸建てと同じで、要件を満たせば敷地権(土地部分)の評価額を最大80%減額できます。
ただし、マンションは評価の出発点となる「評価額」の算定方法が戸建てと異なる点に注意が必要です。2024年1月以降の相続・贈与からは、区分所有マンションの評価方法が見直され、築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度をもとに算出する「区分所有補正率」を従来の評価額に乗じる方式となりました。
関連サイト国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」
これにより、市場価格との乖離が大きい高層階のタワーマンションを中心に評価額が引き上げられ、従来のような大幅な節税効果は縮小しています。なお、小規模宅地等の特例で減額対象となる面積は「敷地利用権の面積(敷地全体の面積×敷地権割合)」で判定するため、戸数の多いタワーマンションでは1戸あたりの持分面積が330㎡の上限に収まるケースがほとんどです。
私共が担当したケースでは、都内のタワーマンションを相続されたお客様について、新しい評価方法に基づく評価額の算定と、小規模宅地等の特例適用後の税負担を試算してご説明した例があります。マンションは戸建てより評価の計算過程が複雑になりやすいため、まずは現行ルールでの評価額を確認することをお勧めします。
住んでいる家を相続する場合、相続税申告の他にも不動産の名義変更もしなければなりません。住んでいる家を相続するときの注意点は、下記の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
土地や建物を相続した場合、不動産の名義を相続人に変更する手続きを行う必要があります。この手続きは、相続登記と呼ばれ、不動産の住所地を管轄する法務局で行います。
相続登記の際には登記申請書の作成や必要書類の収集が必要なので、早めに準備するのが良いでしょう。
関連サイト法務省「不動産を相続した方へ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」
また、2024年4月からは相続登記が義務化され、申請を怠ると過料が科される可能性があるため注意が必要です。
関連サイト東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~ 」
住んでいる家を相続する際に「小規模宅地等の特例」を適用して相続税が大幅に軽減される場合、場合によっては相続税がかからないこともあります。
しかし、たとえ相続税がゼロであっても、税務署に対して相続税の申告は必ず行わなければなりません。小規模宅地等の特例の適用要件には、期限内に相続税申告を行うことも含まれるからです。
また、小規模宅地等の特例を適用するには、遺産分割協議が整っている必要があることも注意しましょう。相続税がかからないからといって申告を怠ると、後日税務署から調査が入る可能性があります。
仮に申告が遅れた場合、小規模宅地等の特例を適用できなくなる恐れがありますし、延滞税や加算税が課されることもありますので、申告は必ず期限内に行いましょう。
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことになっています。
引用元:No.4205 相続税の申告と納税(国税庁)
期限内に確実に相続税申告を済ませたいのであれば、相続に精通した税理士に依頼することも検討しましょう。
分割協議がまとまらない場合でも、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付していったん法定相続分で申告・納税しておけば、申告期限から3年以内に分割が成立した時点で小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用し直し、納めすぎた税金の還付を受けられます。
ただし、申告期限(死亡から10か月)に遅れると無申告加算税や延滞税が生じるため、分割が難航していても期限内の申告は必要です。
杉並・中野相続サポートセンターでは、話し合いに時間がかかっていたお客様について、期限内に法定相続分で申告のうえ分割見込書を添付し、協議成立後に特例を適用し直して精算した例があります。「間に合わないから」と申告自体を止めてしまうと、かえって不利になりますのでご注意ください。
一定の要件を満たせば、老人ホーム入居前まで住んでいた自宅は「居住の用に供されていた宅地等」とみなされ、小規模宅地等の特例の対象になります。要件は、
の3点です。
要介護認定は入居時点ではなく亡くなる直前の時点で受けていればよく、認定申請中に亡くなった場合でも、後日認定が下りれば要件を満たしたものとして扱われます。一方、自宅を第三者に賃貸してしまうと、この特例は使えなくなります。
私共にご相談をお寄せいただいたケースでは、要介護認定を受けて特別養護老人ホームに入所され、そのまま自宅が空き家になっていたお客様のケースについて、認定状況や施設の種別を確認したうえで特例の適用可否を整理した例があります。「施設に入っていたから対象外」と思われがちですが、要介護認定の有無と自宅の使用状況次第では適用できることをご説明しています。
相続する人によって結論が変わります。配偶者が相続する場合は居住や保有を続けなくても特例を使えますが、同居親族が相続する場合は申告期限(死亡から10か月)までの居住・保有継続が要件となるため、早期に売却すると適用できないことがあります。また、売却時には相続税とは別に譲渡所得税や空き家に関する特別控除の検討も必要です。
杉並・中野サポートセンターでは、実際に遠方の実家を相続後に売却される予定だったお客様に名義や売却時期による影響を相続税・譲渡所得税の両面から整理し、適切な手続きをしたケースがございます。
被相続人が所有していた不動産は、相続人が住んでいる状態であっても相続税申告をしなければなりません。
ただし、相続人が住んでいる不動産を相続する場合、小規模宅地等の特例や配偶者居住権を設定し、相続税を節税できる可能性があります。
小規模宅地等の特例や配偶者居住権を設定するには、適切な手続きや相続税申告が必要です。漏れなく控除や特例を活用して相続税を節税したいのであれば、相続に強い税理士に相談するのが良いでしょう。
相続税申告は、相続に強い税理士が多数在籍する「杉並・中野相続サポートセンター」までご相談ください。
当サポートセンターは西荻窪駅から徒歩1分の便利な場所に事務所があり、開業して30年以来、2,500件を超える相続の相談をお受けしてきました。弁護士・司法書士などの専門家と協力体制を取りながら、ご相談者様の相続手続きをワンストップでサポート可能です。
杉並・中野相続サポートセンターは西荻窪駅・徒歩1分に事務所を構え、近郊の吉祥寺・三鷹・武蔵境エリアのご相談も多く承っています。下記地域を中心とした地元密着の相続相談を承っています。ぜひご相談ください。
被相続人が所有していた資産は相続税の課税対象になります。たとえ、相続人が住んでいる家であっても被相続人が所有していた場合は、相続税の課税対象となるので忘れずに申告しましょう。
ただし、相続人が住んでいる家を相続すると小規模宅地等の特例などの制度を利用し、相続税を節税できる場合があります。
特に、小規模宅地等の特例は節税効果が大きいので、不動産を相続したときは特例を適用できるか調べてみるのが良いでしょう。
この記事の監修者
監修者
廣瀬 一俊