相次相続控除とは、過去10年以内に2回以上の相続が発生した場合に相続税の負担を軽減できる制度です。
関連サイト国税庁「No.4168相次相続控除」
短期間で複数回の相続が発生すると税負担が非常に重くなるため、公平性を期すために設定されています。相次相続控除を適用する際には、相続税申告書に必要書類を添付する必要があります。
ただし、相次相続控除の適用により、相続税額が0円になる場合は申告不要です。本記事では、相次相続控除の適用要件や計算方法について詳しく解説さいます。
目次
相次相続控除とは10年以内に2回以上の相続が発生した場合に、相続税の負担を一部軽減してもらえる制度です。
例えば、10年以内に父親が亡くなり、その後連続して母親も亡くなった場合、相次相続控除が適用される可能性があります。
相次相続控除が設定される理由としては、短期間で相続が発生すると相続税の税負担が非常に重くなってしまうことが多いからです。
相次相続控除は、短期間で相続が発生したときの税負担を公平に保つために設定されています
相次相続控除は、すべての相続で発生するわけではありません。具体的には、下記の要件を全て満たした場合に適用可能です
それぞれ詳しく見ていきましょう
相次相続控除を利用するには、今回発生した相続の相続人であることが条件のひとつとなっています。
一方、相続人でない人物が遺贈や相続時精算課税制度で財産を取得したとしても、相次相続控除の適用はできないのでご注意ください。
相続人となる人物や優先順位は、民法によって下記のように設定されています。
配偶者 | 常に相続人になる | |
---|---|---|
第1順位 | 子ども |
|
第2順位 | 親 | 亡くなった人に子どもがいなかったら、配偶者と親が相続人となる |
第3順位 | 兄弟姉妹 | 子どもがおらず、両親や祖父母も亡くなっていれば、亡くなった人の配偶者と兄弟姉妹が相続人となる |
なお、上記に該当する人物であっても、相続放棄をした人や相続欠格事由に該当する人、相続人排除された人は適用できませんのでご注意ください。
相次相続控除を適用するには、1回目の相続が発生してから2回目の相続が発生するまでの期間が10年以内でなければなりません。
例えば、2回目の相続が2024年2月25日に開始したのであれば、前回の相続は2014年2月 25日以降に発生している必要があります。
相次相続控除を適用するには、今回の相続で死亡した被相続人が前回の相続で相続税を納税している必要があります。
相次相続控除は、短期間で複数回の相続が発生した場合の税負担を軽減することが目的の制度だからです。
相次相続控除の計算式はやや複雑ですが、前回の相続と今回の相続の期間が短いほど控除額も大きくなるように、前回の相続で課された相続税が大きいほど控除額も大きくなるように設計されており、相続税の負担軽減に繋がるようになっています。
A×C/(B-A)×D/C×(10-E)/10
C/(B-A)の割合が100/100を超えてしまうときは100/100で計算をする
A | 今回の被相続人が前回の相続で課せられた相続税額 |
|
---|---|---|
B | 今回の被相続人が前回の相続時に取得した純資産価額 | 純資産価額=「取得した相続財産+相続時精算課税によって贈与された財産-(債務+葬式費用)」 |
C | 今回の相続・遺贈や相続時精算課税制度による贈与で財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額 | 純資産価額に関しては、Bと同様 |
D | 今回の相続人の純資産価額 | 純資産価額に関しては、Bと同様 |
E | 前回相続から今回相続までの期間 | 1年未満の場合は切り捨てる |
この計算式を前回の相続から3年6ヶ月で2回目の相続が発生したケースにあてはめてみましょう。
A | 祖父が死亡したときに父が課税された相続税額 | 800万円 |
---|---|---|
B | 祖父から父が相続した財産の純資産価額 | 1億円 |
C | 父の相続財産を引き継いだ全員が取得した純資産価額 | 7,500万円 |
D | 長女が相続した財産の価額 | 5,000万円 |
E | 経過年数 | 3年 |
800万円×7,500万円/(1億円-800万円)×5,000万円/7,500万円×(10-3年)/10=約304.3万円
このケースの場合、304.3万円の相次相続控除が適用できることになります。
相次相続控除を申告する際には、相続税申告書の第7表および第8表の8に記入する必要があります。
なお、相次相続控除を適用する際に添付書類は不要ですが、前回の相続税申告に使用した下記の書類を添付しておくと安心です。
相次相続控除適用する際には、適用要件を満たしているか確認しておきましょう。
なお、同時死亡の際には相次相続控除を適用できない点に注意しなければなりません。本章では相次相続控除を適用する際の注意点について、詳しく解説していきます。
相次相続控除は、単に複数回の相続が短期間で繰り返されているだけでは適用できません。
今回の相続で亡くなった被相続人が前回の相続で相続税を納めていることが適用要件に含まれますし、相次相続控除を適用できるのは相続人のみとなっています。
交通事故や災害などで複数名の家族や親族が同時に死亡した場合、相次相続控除適用することはできません。
今回の相続で死亡した被相続人が前回の相続で相続税を負担してないため、適用要件を満たしていないからです。
ただし、すべての同時死亡で相次相続控除の適用が認められないわけではなく、今回の相続で死亡した人が10年以内に相続税を支払っていれば、相次相続控除を適用できる可能性があります。
相次相続控除を適用したことにより、相続税額が0円になるなら申告は不要です。
ただし、相続税の配偶者控除や小規模宅地等の特例を適用するのであれば、相続税額が0円であっても申告は必要なのでご注意ください。
相次相続控除は、両親が連続して死亡した場合などの使用を想定する人が多いですが、兄弟などであっても条件を満たせば適用可能です。
相次相続控除を適用できるか判断が難しい場合には、相続税に精通した税理士に相談してみることをお勧めします。
相次相続控除は、相続税の申告期限から5年以内であれば更生の請求により、後から適用可能です。
相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内と非常に短いため、控除や特例を漏れなく適用することが難しい場合もあります。
後から相次相続控除適用できることに気付いた場合は、更生の請求を行うのが良いでしょう。
相次相続控除は遺産が未分割の状態でも適用可能です。
遺産分割協議が相続税の申告期限である相続開始から10ヵ月以内にまとまらない場合は、遺産未分割で申告しなければなりません。
ただし、この場合でも相次相続控除を適用できるので、要件を満たす場合は相続税の負担を軽減できます。
相次相続控除を適用すれば、相続税の負担を軽減できます。ただし、相次相続控除の適用要件を満たしているかの確認および控除額の計算をするには、専門的な知識や経験が必要です。
相続人がミスなく控除額を計算し、相続税を申告することは現実的ではありません。
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相次相続控除とは、過去10年以内に2回以上の相続が発生した場合に相続税の負担を軽減できる制度です。
直近10年間で複数人の家族や親族が死亡している場合には、相次相続控除の適用要件を満たしていないか確認してみると良いでしょう。
また、相続税には相次相続控除の他にも様々な控除や特例が用意されています。
漏れなく控除や特例を適用したい場合は、相続に精通した税理士に相続税申告を依頼するのがおすすめです。