相続廃除とは、被相続人の意思で特定の相続人の相続権を失わせることです。
例えば、被相続人を虐待していた相続人や財産を不当に処分したりした相続人は相続人廃除され遺産相続できなくなる恐れがあります。
相続廃除は自動で認められるわけではなく、家庭裁判所に申立てもしくは遺言書に記載しておく必要があります。また、すべてのケースで相続廃除が受理されるわけではないことを理解しておきましょう。
本記事では、相続廃除とは何か、条件や手続き方法について詳しく解説していきます。
目次
相続廃除とは、特定の相続人の相続権を失わせることです。相続廃除された相続人は一切の相続権を失い、遺留分の権利も失います。
相続廃除の取り扱いについて、詳しくみていきましょう。
相続廃除は誰でも手続きできるわけではなく、被相続人のみが手続きを行えます。例えば、母への態度がひどいから兄が弟を相続廃除するなどは無理なのでご注意ください。
また、相続廃除できる相続人は推定相続人のうち、遺留分を主張できる人物で、配偶者や直系卑属(子・孫)、直系尊属(両親・祖父母)が該当します。
一方、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められないため、相続廃除を行わなくても遺言書を作成しておけば、兄弟姉妹に財産を遺さないようにできるからです。
相続廃除された相続人は、一切の相続権を失うため、遺産を受け取ることができなくなってしまいます。
相続廃除された相続人は相続権を失うだけでなく、遺留分に関する権利も失います。したがって、他の相続人や受遺者に対して、遺留分侵害額請求を行うこともできません。
相続廃除をした相続人は相続権を失いますが、相続放棄とは異なり代襲相続は発生します。代襲相続とは、本来相続人である人物が相続発生時に死亡しているときに相続人の子供が代わりに遺産を受け継ぐことです。
相続排除された相続人がいる場合、代襲相続が発生するため、廃除された相続人の子供や孫が代襲相続人となり遺産を受け継ぎます。
相続廃除は一度手続きが完了しても、被相続人の意思があれば取り消すことができます。当たり前ですが、相続人側から相続廃除を取り消すよう要求することはできません。
相続廃除が認められるには要件を満たした上で、家庭裁判所で申立てをしなければなりません。
ただし、家庭裁判所で相続人廃除が受理される確率は高くはなく、申立てに対して2割程度しか認められません。相続廃除を認めてもらうためには、相続廃除の条件を満たす客観的な証拠が必要です。
残念ながら相続廃除の条件を満たすのが難しい場合は、遺言書の作成や生前贈与などで相続対策をしておくことも検討しましょう。
相続廃除と似た制度に「相続欠格」があります。相続欠格とは、被相続人を殺害しようとした相続人などが永遠に相続権を失うことです。
相続廃除も相続欠格も相続権を失う点では共通していますが、下記のような違いがあります。
相続廃除 | 相続欠格 | |
---|---|---|
手続き | 被相続人の家庭裁判所への申立て、または遺言による廃除の表示 | 欠格事由に該当すれば当然に相続権を失う |
取り消し | 被相続人の家庭裁判所への申立て、または遺言による取消意思の表示 | 不可 |
相続廃除は被相続人が希望するだけでは認められず、下記の要件を満たす必要があります。
上記のように、相続廃除が認められるのは、相続人が被相続人に対し、著しい不利益を与えた場合などです。相続廃除の条件を満たすか判断が難しい場合は、相続に詳しい専門家に相談しましょう。
相続廃除は自動で認められるわけではなく、家庭裁判所で手続きをする必要があります。
手続き方法は、生前のうちに申立てる方法と遺言に記載する方法の2種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続発生前に相続廃除の手続きをしたいのであれば、被相続人が家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
手続きの流れは、下記の通りです。
家庭裁判所への申立て時に必要な書類は、下記の通りです。
生前廃除の場合、被相続人が元気なうちに手続きできるので、確実に自分の目で相続廃除できたかどうかを確認できます。
また、戸籍にも「廃除」の記載がなされますので、廃除された人を相続人から除外して相続登記することができます。
相続廃除は先ほど解説した生前廃除の他に遺言書に記載しておくことでも可能です。遺言書で相続廃除する場合、相続廃除したい人物や相続廃除を望むことや理由について、記載しておかなければなりません。
また、遺言廃除であっても家庭裁判所への申立てや市区町村役場への届け出は必要であり、こちらの手続きは相続発生後に遺言執行者が行います。
したがって、遺言廃除を行うときは遺言執行者を生前のうちに選任しておかなければなりません。
相続廃除された相続人がいると、法定相続人が誰になるのか、および法定相続割合の計算が複雑になります。場合によっては、相続廃除された相続人が納得せず遺族の間でトラブルになる恐れもあるでしょう。
相続廃除された相続人がいる場合は、ミスなく確実に相続手続きを行うためにも相続に精通した専門家に相談するのが確実です。
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相続廃除された相続人は一切の相続権を失い、遺産を受け取ることができません。
ただし、相続廃除は被相続人と相続人の関係が悪いなどの理由で行えるわけではなく、要件を満たした上で家庭裁判所にて申立てを行わなければなりません。
相続廃除が認められるケースは申立て件数に対して約2割程度と低く、その理由によっては、家庭裁判所に申立てを認めてもらえない可能性もあります。
被相続人が相続廃除を希望した場合、相続人やそれぞれの相続分の判断が複雑になるため、相続手続きが難航する場合もあるでしょう。
必要に応じて、相続に詳しい専門家に相談することもご検討ください。