相続税の申告手続きをすると気になるのが、相続税の税務調査。「税務調査が入るのはどんな人?」とか「税務調査ではどんなことを調べられるの?」など、疑問や不安を感じている方も多いと思います。
本記事では相続に強い税理士が多数在籍する杉並・中野相続サポートセンターが相続税の税務調査について知っておきたいことを徹底的に解説します。
税務調査の種類や、税務調査が行われる時期に加え、税務調査の対象になりやすいケースから税務調査の流れまで詳しくお伝えしていきます。
目次
納税者の申告によって計算されている相続税。相続税の税務調査は納税者の申告が正確に行われているか、いい加減に申告していないかを税務署がチェックする手続きです。税務署が入手した相続に関わるさまざまな情報と申告内容とのズレを確認します。
申告内容に疑問点や不審なところがある場合、税務調査が行われます。正しく申告していても確認のために行われることもありますので、冷静に対応しましょう。
税務調査は、大きく分けて任意調査と強制捜査の2種類です。この章では、税務調査についてより詳しく解説していきましょう。
任意調査を行う場合は、事前に税務署から連絡があります。故人が亡くなる直前まで住んでいた自宅で行われることがほとんどです。相続人全員か、可能な限り多くの相続人や税理士が立ち会います。
当日は税務署員からの質問や、必要に応じて通帳や土地の権利証の確認が行われます。任意調査とありますが、不当に断ることはできません。ただし、見られたくない部屋を無理やり調べられるようなことはないので、心配はいりません。
もし、任意調査を強硬に断ってしまうと、強制捜査が行われる可能性もあるので気を付けましょう。
強制捜査は、事前の通知はなく、抜き打ちで自宅や事務所に入る調査です。明らかに悪質な脱税が疑われる場合や、任意調査を拒否した場合に行われます。映画やドラマで見かけるマルサ職員が行うガサ入れのイメージに近い調査です。
しかしながら、たいていは任意調査で解決する場合が多いため、強制調査はめったに行われません。
所得税や法人税、贈与税など、さまざまな税金で税務調査は行われますが、相続税は他の税金に比べ、圧倒的に調査件数が多い傾向にあります。これは、相続税は高額な場合が多く、申告漏れの金額も比較的大きくなることが多いためです。
国税庁の資料では「申告漏れの非違件数は全体の85.7%」との報告があり、「10.7%が実地調査を受けた」と発表されています。
つまり、相続税の申告をした人のうち85.7%の人が追徴課税を払い、相続税を申告した10人に1人が相続税の税務調査を受けたということになります。
相続税の税務調査が行われるのは、相続税を申告した手続き後1~2年後の秋が多いと言われています。
税務署では提出された膨大な量の相続申告書を順番に確認していくため、調査までに時間がかかります。また、税務署は7月に大きな人事異動が行われるため、人事異動後の8月~11月のタイミングで調査先の選定を行います。
税務調査は8~11月の選定後に開始され、翌年6月までに終わります。そのため税務調査は8~11月に行われる場合が多いのです。
相続税には、申告や納付を行わなかった場合の時効があります。一般的な相続税の時効は5年間、悪質な脱税や無申告では7年間が経過すると時効です。
ただし、マイナンバーカードなど申告漏れを防止する制度が整備されているため、時効になることは滅多にありません。
関連サイト国税庁「社会保障・税番号制度<マイナンバー>FAQ・相続税・贈与税に関するFAQ」
相続税の税務調査を行う前に、税務署ではある程度、事前調査を行っています。国税庁の資料によると相続税の申告漏れは、現金や預貯金、その他の骨とう品や動産が圧倒的に多数です。
それでは、税務署はどのような調査で、財産情報を入手しているのでしょうか?この項では、税務署が財産情報を調査している方法を詳しくお伝えしていきます。
税務署は故人の住所地である最寄りの各金融機関で貯金通帳の照会をしています。預金残高だけでなく、過去10年分のお金の流れも金融機関のデータにより確認します。税務署が主に確認する金銭のデータは以下の通りです。
また、故人の金融データだけでなく、相続人の資産を調べる場合もあります。他人名義の預金通帳を調べるケースもあり、贈与税の申告漏れといったこともすぐに調べられてしまいます。
市区町村役場から税務署に死亡届が出されるのと同時に、固定資産税についても伝わっていると言われています。土地や建物などの不動産といった固定資産税には相続税がかかるケースが多いためです。
遺産分割後に不動産の名義を変更する相続登記が行われた際、法務局の登録免許などの情報により、不動産の相続が行われたことを調査することも可能です。
生命保険が支払われた場合は、保険会社から税務署に支払報告書が提出されます。そのため、故人名義で支払われた生命保険については申告漏れの心配はありません。しかし、「被保険者が相続人」となっている場合は要注意です。
税務署には過去に納めた法人税の申告データがあり、会社の資産については税務署も把握しています。そのため法人税の申告書の情報と合わせて調査を行うことが可能です。自社の株式は相続税の対象です。相続税の評価を行い、申告を行う必要があります。
相続税の税務調査は富裕層だけの話だと思っている方もいるかもしれません。しかし、不正申告抑制のために、平均的な経済状況の方にも税務調査は行われます。
それでは、相続税の税務調査の対象となりやすいのはどんなケースなのでしょうか?詳しく説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
相続税の申告書に不備があると税務調査の対象になりやすくなります。相続税の計算や、評価を誤っている場合、添付書類の不備のほか、相続財産として計上すべき財産が漏れている疑いがある場合などです。
自分で相続税を申告する人や、経験のある税理士以外の人が申告書を作成した場合は、計算や評価の間違いが起こりやすいので注意が必要です。
たとえば2億円以上という多額の財産を相続した場合、税務調査の対象になる確率が上がります。なぜなら、財産が多いとミスや財産の申告漏れといったリスクが増えるためです。
骨とう品や貴金属類、有価証券、不動産といった財産の評価を誤ったり、見落としたりすることや、悪質な財産隠しが疑われます。税務署には富裕層のリストがあり、念入りな調査を行うとも言われているため注意が必要です。
生前、大きな買い物をしていた場合や、親族や相続人名義の口座に資金を移していた場合などは税務調査の対象になりがちです。
故人が相続税対策していたことを疑われたり、お金の貸し借りがあったことを親族が知らず、申告から漏れている恐れがあったりするため、調査されやすくなります。
金融機関に多額の負債があるのに、その額に見合うだけの不動産などの財産がなく、相続額が少ない場合も税務調査が入りやすくなります。相続人が遺産を把握しておらず申告漏れの恐れがあるというのが理由です。
故人が配偶者や子供、孫などの名義を使って開設した「名義預金」も税務調査の対象になりやすくなります。名義人が違っても、通帳や印鑑を故人が管理していた場合や、名義人がお金を管理していなかった場合は、実質的には故人の財産とみなされます。
専業主婦や未成年者など、収入が少ない人に多額の預貯金がある場合は名義預金や生前贈与が疑われ調査の対象となります。仮に、名義貯金が意図的に隠されていた財産だということが分かると多額の追徴課税を課される恐れもあります。
また、「暦年贈与」が多いケースも税務調査の対象となる可能性が上がります。暦年贈与とは、毎年110万円までの生前贈与は非課税という基礎控除を利用し、長期間に少しずつ財産を贈与する節税方法です。
ただし、毎年繰り返し、規則正しい贈与が行われていた場合、多額の財産を最初から贈与する意思があったと税務署が判断します。その場合、一括贈与と同等の贈与税を請求されることもがあります。
証券口座の名義が相続人となっている配偶者や子供などの名義で、名義人の収入と見合わない財産が残っている場合も、名義預金同様に調査の対象になりやすくなります。配当金を故人が受け取っていたり、使っていたりした場合は、故人の財産とみなされ追徴課税の対象となります。
海外に資産をたくさんある場合も税務調査が入りやすくなります。資産の運用がグローバル化している近年、税務署も海外にある資産を把握するようにしています。
100万円を超える海外への出金や海外からの入金があると、金融機関から税務署への報告があります。税務署の資産情報と申告内容が異なると税務調査の対象になります。
故人に生前、マンションやアパートの賃貸料といった不動産所得や、株式の譲渡があったのに、少ない額の相続税しか申告されなかった場合、税務調査が入ることがあります。利益があったのにも関わらず利益を申告していない可能性が疑われます。
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名義預金ではなく、故人の家族自身の預貯金口座に多額の資産がある場合も、税務調査の対象になる場合があります。収入に対して残高が高額過ぎたり、そのほかに多くの財産を持っていたりすると、相続税対策の生前贈与が疑われます。
たとえ税務調査されても、きちんと贈与税を支払っていれば問題ありません。しかし、申告漏れがあると追徴課税を課されます。
故人が生前、社会的地位の高い職業だった場合も税務調査が入る可能性はアップします。上場企業の社長や重役、医師や弁護士など高収入の仕事は、相続財産が高額になることが予想されるためです。
もし、申告した相続税が予想よりも少なければ、申告漏れや資産隠しを疑われ調査の対象となります。
自分で相続税の申告を行った人も税務調査が行われることが多い傾向にあります。相続税の申告は、書類が非常に多く、難しい計算も行わなければならないため、財産を見落としたり、計算を間違えたりする可能性が高いためです。
そのため、税務署によるチェックが厳しくなります。反対に、申告を税理士に依頼した場合は、信頼度が高く税務調査の可能性も低くなります。
税務調査は実際、どのように行われていくのでしょうか。税務調査当日の流れや、税務調査を受ける際のポイントを解説していきますので、参考にしてください。
税務調査は基本的に10時から開始されます。午前中は税務署員からの質問やヒアリングがメインです。調査開始の1時間~30分前に税理士と税務調査に対する心構えなど、打ち合わせをしておくと安心です。
1時間のお昼休みが入ります。この間、税務署員は午前中にした質問の答えをもとに午後の調査について打ち合わせを行います。税務署員は、必ず外でお昼ご飯をとりますので、税務署員のお昼を用意する必要はありません。
税務署員が外で昼食をとっている間に、税理士と午後の調査への対策をしておくと良いでしょう。
午後の調査で、税務署員は故人や相続人の通帳や土地の権利証、保険証券、電話帳といった資料を確認していきます。
また、貴重品を保管していた金庫やタンスなどの確認も行います。その後、その日のヒアリングに対する回答などをメモした「質疑応答記録書」の確認を求められる場合もあります。税務署員はだいたい15時から17時までには帰ります。
税務調査を受けるときは、できるだけ協力的な態度で臨みましょう。非協力的な態度では、税務署員の心象が悪くなってしまいます。
また、故人が通帳や印鑑を保管していた場所を見せてほしいと言われることもあります。しかし、プライベートなスペースなど見せたくない場合もあるでしょう。その場合は「私物もあるので、必要なモノがあればここに持ってきます」と断ることも可能です。
ただ、保管場所を見せないと「隠しているものがあるかも」と感じる税務署員もいます。よっぽどの事情がない限り、協力した方が得策です。
また、最後に提示される「質疑応答記録書」は、必ず立ち会ってもらっている税理士に内容を確認してもらってから署名押印するようにしましょう。
相続税の税務調査で調べる事柄はどんなことで、どの程度調べられるのでしょうか?この項では、税務署員が税務調査でチェックしているポイントや当日準備しておいたほうが良いものなどを、詳しく見ていきましょう。
税務調査では、事実関係が事前調査と違っている点はないかという確認と、以下の内容を調査します。
調査当日、税務署員はたくさんの資料を見せるよう求めてきます。以下の資料を事前に準備しておけば、当日の税務調査がスムーズに運びます。
税務調査では、税務署員からたくさんの質問をされます。これには相続人がごまかしたり、財産をかくしたりしていないかを確認する目的があります。そのため、分かっていることでも、あえて質問してくるケースもあります。
また、午前中は質問やヒアリングがメインとなり、午後から本格的な調査が行われるのも、このためです。相続人のごまかしや財産隠しが意図的か意図的じゃないかによって、追徴課税の税率は大幅に変わります。税務調査の質問には、それを確かめる目的もあるのです。
なお、ごまかしや財産隠しが意図的ではない場合、追徴課税は過少申告加算税として10%~15%です。しかし、意図的だと認められると、重加算税として35%~40%もの追徴課税を支払わなければなりません。
ここでは、相続税の税務調査でよく質問される内容をまとめておきました。税務調査に対する心構えのためにも、ぜひ参考にしてください。
税務調査によって、申告漏れが明らかになった場合は、修正申告をしなければなりません。それに伴い、追徴課税などのペナルティが課せられます。ここからは、ペナルティについて詳しく説明していきましょう。
延滞税は納付期限までに相続税を納められなかった場合に課せられます。相続税の申告・納税は10か月以内に行わなければなりませんが、10か月を過ぎた後に税務調査で申告漏れがあった場合、延滞税が適用されます。
関連サイト国税庁「No.9205 延滞税について」
加算税は、申告を正しく行わなかった場合に課せられます。3種類の加算税があり、それぞれ税率が異なります。
無申告加算税は、申告が必要だったにも関わらず申告しなかった人に課せられます。多くは、意図的に申告しなかったわけではなく、うっかり忘れていたケースや、申告の必要がないと思って申告しなかったケースです。
正式な納税額が50万円までの場合は15%、50万円以上の部分には20%を加算します。
支払った相続税が本来の税額よりも少ないことが明らかになった場合に課せられるのが過少申告加算税です。悪気はないのに申告漏れしていた財産が判明したり、財産評価の計算を間違えたりしていた場合に課せられます。
修正申告あるいは更正により納める税金の10%が過少申告加算税です。
重加算税は、意図的に財産を少なくごまかしたり隠したりして、納税しなかった場合や税金を少なく申告した場合に課せられます。加算税としては最も重い罰となっていて、無申告では40%、過少申告は35%となっています。
意図的な財産隠しやごまかしにより相続税を少なく申告した場合や納税をしなかった場合、悪質な脱税だとみなされると刑事罰が科せられることもあります。脱税は10年以下の懲役か1000万円以下の罰金を科せられる重大な犯罪です。
関連サイト財務省「加算税の概要」
現在、相続税の追徴課税は、8割以上の人が課せられています。また、相続税の税務調査は、相続税を申告した人の10人に1人が受けている状況です。脱税を疑われているわけではなく、申告内容の確認作業なので落ち着いて対応しましょう。
相続税の税務調査ではさまざまな質問を受け、多くの資料を要求されますが、正直に対応することが大切です。
当サポートセンターでは、税務調査の立ち合いを行っており、年に数件は立ち合いを依頼されています。
調査の前に納税者と調査官が質問するであろうと予想される項目を打合せし、その場で答えれるよう資料等の準備をします。納税者の方は相続税の税務調査を受けられるのは、初めての方が殆どであり、どのように答えればよいかが心配されるのは当然です。
その他にも、
特に、税務調査は調査官の質問に対する納税者の答え方により事実認定されるケースも多いので緊張のあまり調査官の質問に対して思っていることがうまく表現できず誤解を生むような回答をした場合には納税者のサポートします。
税務調査は、一人で乗り越えるべき問題ではなく専門家と一緒に解決すべき事柄です。相続専門の知識とノウハウを最大限に活用して税務調査で納税者側に不利のないように最大限サポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。