次の世代へ財産を残す方法は、「生前贈与」と「相続」があります。生前贈与とは被相続人が死亡する前に相続人等に財産を渡すことであり、相続税対策の一つとして行われることが多いです。
しかしながら、生前贈与の場合は相続税の代わりに税率が高い贈与税がかかりますので、さまざまな特例を上手に活用しながら行う必要があります。
生前贈与は、相続に強い税理士に相談することが大変重要です。今後、両親や祖父母から贈与を受けたときに慌てないためにも、生前贈与のポイントをおさえておきましょう。
目次
生前贈与とは、被相続人が死亡する前に自分の財産を人に分け与えることです。個人の財産は、各個人の意思により自由に処分できるのが原則です。また生前贈与は、将来負担すべき相続税を抑えるという目的のために利用されます。
次に実際の生前贈与の進め方を見てみます。贈与税は暦年課税で、1年間に基礎控除額が110万円です。
関連サイト国税庁「No.4402贈与税がかかる場合」
つまり、年間で110万円以下の贈与については課税されず、申告も不要ですので、一番シンプルな生前贈与の方法だといえます。
また、生前贈与を活用した節税対策には110万円の基礎控除を最大限利用することのほかに、配偶者控除を利用する方法があります。
生前贈与で配偶者控除を利用するための要件は、以下のとおりです。
生前贈与の配偶者控除は2,000万円まで、課税価格から控除できます。
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相続税は、3,000万円+600万円×法定相続人の数という基礎控除や、配偶者税額軽減などの措置が取られているために、かなり多額の遺産総額の見込みがないと発生しないので、一般のサラリーマン家庭においては、生前贈与などが税制上効果を生むケースはごく少数といえるかもしれません。
相続税対策として生前贈与を活用するには、まず被相続人の資産状況の把握が必要です。生前贈与していても実は税金がかからない状況だった、ということになっては意味がありません。
この制度がよく使われる場合としては、不動産・土地の相続等、多額の金額が動く時です。この事象に適合する場合は、将来的なトラブルを防ぐためにも専門家に相談することをおすすめします。
贈与税は相続税を補完する性格から相続税と比較して税率は高いですが、年110万円の基礎控除額等を利用し、時間(年数)をかけることにより節税の効果が増大します。
例えば、子供3人、準備期間20年とすると、限度額いっぱいまで毎年贈与をしていくと、110万円×20年×3人=6,600万円の財産の移転が無税で行うことができます。
税務署に「連年贈与」と認定されてしまうような贈与をしてしまうと、一時に多額の贈与税が課されてしまうので注意が必要です。
「連年贈与」とは例えば毎年110万円ずつ20年にわたって贈与した場合、最初から2,200万円(110万円×20年)の贈与をする意図があったものとみなされ、贈与の初年度に2,200万円全額に課税されてしまうものです。
2,200万円を贈与した場合の贈与税は795万円となります。
連年贈与認定を避けるためには、
といったことを行う必要があります。
年間110万円までは、無税で贈与することが可能ですが、相続財産が多い人、準備期間が短い人などは年110万円の贈与では節税効果が薄い場合があります。
そのような場合には、相続税の試算により相続税の税率を前もって確認しておき、その相続税の税率より低い税率が適用される金額の範囲内で贈与を行えば、贈与税を支払っても、結果として税金が安く済みます。
実際の贈与額・贈与を行う年数等は、資産の内容、現金の有無、キャッシュフロー等を勘案して、個別に考えていかなくてはなりません。
相続時精算課税とは、60歳以上の両親から20歳以上の子への贈与については、2,500万円まで贈与税がかからなくなる、というものです。
相続時精算課税を選択した贈与者ごとにその年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計金額から2,500万円(2,500万円に達するまで複数年控除可能)の特別控除額を控除した残額に対して贈与税がかかります。(贈与税の期限内申告書を提出する場合のみ、特別控除することができます。 )
また、前年以前にこの特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2,500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除限度額となります。
2,500万円を超える部分は、一律に税率20%で贈与税が課税されます。
ここで支払った贈与税は相続税の前払いの性格を持ち、将来相続が発生した時に、相続時精算課税制度により贈与をした財産は相続財産に含まれ相続税が課税されます。
相続時精算課税制度による贈与税を支払っている場合にはその贈与税額を相続税額から差し引くこととなります。相続時精算課税制度を適用する場合は贈与者及び受贈者に下記の要件が必要となります。
財産を贈与した人 (贈与者) | 60歳(注1)以上の親祖父母 |
---|---|
財産の贈与を受けた人 (受贈者) | 20歳(注1)以上の子や孫である推定相続人(注2)または孫 |
(注1)年齢は贈与の年の1月1日現在で判定します。
(注2)子が亡くなっている場合、20歳以上の孫を含みます。
また、この特例は暦年課税、もしくは相続時精算課税制度の従来の非課税枠に合わせて適用することも認められています。
なお、「相続時精算課税制度」を一度選択してしまうと、従来の「暦年課税制度」には戻せませんので注意しましょう。
贈与税の非課税枠とは、贈与税の非課税枠を利用して生前に贈与をすることで、贈与税をかけずに相続税対策をすることができます。生前贈与で利用できる非課税枠については、以下の項目でご紹介していきます。
30歳未満の子ども・孫に対する教育資金について、1,500万円まで贈与税の非課税を受けることができる特例があります。教育資金贈与については、信託契約により行い、子ども・孫が30歳に達したところで終了します。なお、こちらの特例の適用は令和5年3月31日までとされています。
夫婦間贈与の特例とは、婚姻期間が20年を超える夫婦が居住用の不動産や居住用不動産に当てるための現金を贈与する場合に最大2,000万円が非課税となる特例です。通称「おしどり控除」とも呼ばれています。この特例の適用は1回限りで申告をする必要があります。
生前贈与や相続税の対策や手続きは間違った認識のままに進めてしまうと想定外のトラブルを招く可能性もあります。
ご自身の場合はどの制度を使えるのか、またはどの制度を使うのが有効なのかを確定したいなら、相続税に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
当サポートセンターでは、生前贈与など相続に関する多くの相談を受けています。贈与の制度を使った場合と使わなかった場合の税額の比較を行うことで、今後の相続対策が明確になります。
まずは、初回の無料相談にお越しになられることをおすすめします。お気軽にお問い合わせください。相続のプロフェッショナルである税理士が具体的なアドバイスを差し上げます。