生前贈与の課税方法には暦年贈与と相続時精算課税制度の2種類があります。相続時精算課税制度を利用すれば、2,500万円までの贈与を非課税にできます。
相続時精算課税制度は贈与税の節税効果が大きいもののデメリットもあるので、利用時にはシミュレーションが必要です。
相続時精算課税制度を利用すべきか迷われた際には、相続に詳しい税理士への相談もおすすめです。本記事では、相続時精算課税制度のメリットとデメリットを解説します。
目次
相続時精算課税制度とは、60歳以上の親や祖父母(贈与者)などから成人している子供や孫(受贈者)に対して行う贈与を最大2,500万円まで非課税にできる制度です。
2,500万円の非課税枠を超えて生前贈与を行ったとしても贈与税の税率は一律20%です。そのため、相続時精算課税制度を利用すれば、贈与税を大幅に節税できます。
ただし、相続時精算課税制度を利用して生前贈与を行った場合は、贈与者の相続発生時に贈与財産をすべて相続税の課税対象財産に含めて計算します。
そのため、贈与税の節税効果はあるものの相続税の直接的な節税効果はなく、利用時には事前にシミュレーションが必要です。
2023年度の税制改正により、相続時精算課税制度にも暦年贈与同様に110万円の基礎控除枠が設けられるようになりました。
そのため、2024年1月以降に相続時精算課税制度を利用すると、2,500万円の控除枠とは別に行う毎年110万円までの贈与は下記のように取り扱われます。
税制改正により、相続時精算課税制度の控除枠が増えるので利用者にとってメリットが大きくなるといえるでしょう。
関連サイト国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」
相続時精算課税制度は、贈与税の非課税枠が大きく節税効果の高い制度です。主なメリット3点をそれぞれ詳しく解説していきます。
相続時精算課税制度を利用すれば、2,500万円までの生前贈与に贈与税がかからなくなります。生前贈与は相続と異なり、贈与者と受贈者が双方ともに合意すれば、任意のタイミングで行えます。
そのため、下記のようにまとまった出費が必要な時期に相続時精算課税制度を利用して生前贈与を行うのも良いでしょう。
相続時精算課税制度を利用すれば、2,500万円の非課税枠を超えた生前贈与に関しても、贈与税率が一律20%として計算可能です。
なお、相続時精算課税制度を利用しない暦年贈与の贈与税率は下記の通りです。
課税対象財産 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
直系尊属から成人している直系卑属に行われる贈与税の計算で用いられる「特例贈与財産」の税率を記載しています。
贈与税は累進課税制度を採用しており、贈与の額が増えれば増えるほど贈与税の負担も上がります。多額の資金を贈与したいと考えている場合には、相続時精算課税制度を利用するのも良いでしょう。
相続時精算課税制度は、税制改正により2024年以降は年間110万円の基礎控除額が設定されます。基礎控除額内の贈与であれば申告不要とされ、贈与税および相続税は一切かかりません。
相続時精算課税制度に基礎控除額が設けられたことで、暦年贈与と比較した際のデメリットが減り、多くの人にとってメリットが大きい制度になったと言えるでしょう。
相続時精算課税制度には、メリットだけでなくデメリットもあるので利用時には注意が必要です。デメリットをそれぞれ詳しく解説していきます。
相続時精算課税制度の利用開始した年や年間で110万円を超える生前贈与を受けた場合は、贈与の都度申告が必要です。
贈与税の申告方法は、本記事の後半で詳しく解説します。
相続時精算課税制度は、一度でも利用申し込みをすると撤回できません。
上記のケースでも暦年贈与に戻せないので、利用時にはシミュレーションをしておく必要があります。
相続時精算課税制度を利用すると、贈与者が亡くなったときに小規模宅地等の特例を適用できないのでご注意ください。
小規模宅地等の特例とは、被相続人が所有していた土地の相続税評価額を最大8割削減できる制度です。
相続時精算課税制度のメリット、デメリットを踏まえ、利用をおすすめしたい人の特徴は、主に下記の通りです。
相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は、相続発生時に贈与時の相続税評価額に基づいて相続税を計算します。
そのため、値上がりしそうな土地や株式などは、早い段階で相続時精算課税制度を利用して生前贈与すると節税効果が高いです。
相続時精算課税制度を利用して生前贈与をするときには、贈与税の申告期限内に申告書と相続時精算課税選択届出書などを提出しなければなりません。
相続時精算課税制度を利用して生前贈与を行ったときの贈与税申告方法は、下記の通りです。
申告する人 | 贈与を受け取った人(受贈者) |
---|---|
申告先 | 受贈者の住所を管轄する税務署 |
申告期限 | 贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日まで |
必要書類 |
|
相続時精算課税制度以外にも生前贈与時にかかる贈与税を節税できる控除や特例がいくつかあります。
控除や特例にはそれぞれ要件が設定されていますので、利用できそうなものがないか確認してみるのも良いでしょう。贈与税の控除や特例は、主に下記の通りです。
控除・特例 | 概要 |
---|---|
暦年贈与 | 毎年110万円内の贈与であれば、贈与税の申告および納税は不要 |
教育資金贈与の特例 | 直系尊属から直系卑属に行われた教育資金の贈与が最大1,500万円まで非課税になる |
結婚・子育て資金の 贈与税の特例 | 直系尊属から直系卑属に行われた結婚・子育て資金の贈与が最大1,000万円まで非課税になる |
住宅取得等資金の 贈与税の特例 | 直系尊属から直系卑属に行われた住宅取得資金の贈与が最大1,000万円まで非課税になる |
贈与税の配偶者控除 | 婚姻期間20年を超える夫婦間で行われた居住用不動産もしくは購入資金は最大2,000万円を非課税にできる |
どの控除や特例を利用できるかわからない、贈与税を最大限節税したいとお考えの人は、生前贈与や相続税対策に詳しい税理士への相談をおすすめします。
相続時精算課税制度は贈与税の節税効果は大きいものの贈与財産は相続発生時に他の遺産同様に相続税の課税対象財産として扱われます。
また、相続時精算課税制度は一度利用すると撤回できません。
このように、相続時精算課税制度はメリットとデメリットがあるので、利用すべきか判断するには相続に関する専門的な知識が必要です。
相続時精算課税制度を利用すべきか悩んだときには、相続に強い税理士が多数在籍する「杉並・中野相続サポートセンター」までご相談ください。
当サポートセンターでは開業して30年以来、2,500件を超える相続の相談をお受けしてきました。経験豊富な税理士がお話を伺い、弁護士・司法書士などの専門家と協力体制を取りながら、ご相談者様の相続手続きをワンストップでサポート可能です。
初回利用者向けの無料相談も行っておりますので、相続に関する疑問やお悩みをお持ちの方はお気軽にお問い合わせくださいませ。
相続時精算課税制度を利用すれば2,500万円までの贈与に贈与税がかからなくなります。
また、2023年の税制改正により、相続時精算課税制度を利用した人にも毎年110万円の基礎控除枠を利用できるようになります。
相続時精算課税制度に基礎控除枠が追加されたことにより、これまで以上に相続時精算課税制度のメリットは増えるといって良いでしょう。
相続時精算課税制度を利用したい、利用すべきか迷っている人は、相続に精通した税理士に一度相談してみることをおすすめします。