特例贈与財産とは親や祖父母などの直系尊属から18歳以上の子や孫といった直系卑属に贈与された財産です。なお、特例贈与財産以外は一般贈与財産と呼ばれます。
特例贈与財産に適用される税率は一般贈与財産よりも低いので、相続税対策や贈与税の節税を考えているのであれば直系尊属から18歳以上の直系卑属に贈与を行うのが良いでしょう。
また、親や祖父母から子や孫に対して贈与を行う場合、贈与の目的によっては控除や特例を適用できます。贈与税を節税したいのであれば、利用できる控除や特例を漏れなく活用することも大切です。
本記事では、特例贈与財産とは何か、贈与税の計算、申告方法や注意点を相続に強い税理士が多数在籍する杉並・中野相続サポートセンターがわかりやすく解説します。
目次
特例贈与財産とは直系尊属(親や祖父母)から18歳以上の直系卑属(子や孫)に贈与された財産です。
なお受贈者である子や孫の年齢については、贈与時点の年齢ではなく贈与された年の1月1日時点で判断するのでご注意ください。
また、令和4年4月1日より成人年齢が引き下げられたことにより、特例贈与財産の年齢要件も引き下げられました。
関連サイト国税庁「法の改正(成年年齢引下げ)に伴う贈与税・相続税の改正のあらまし」
贈与財産は特例贈与財産と一般贈与財産の2つにわけられます。一般贈与財産とは特例贈与財産以外の贈与財産です。特例贈与財産に適用される税率は一般贈与財産より低く設定されています。
そのため、生前贈与を考えるのであれば親や祖父母などの直系尊属から子や孫などの直系卑属に贈与を行うのが良いでしょう。
特例贈与財産と一般贈与財産は贈与税の税率が異なるだけであり、基本的に贈与税を計算する流れは共通しています。
上記の流れで計算していきましょう。具体例と共に詳しく解説していきます。
まずは贈与財産の合計額を計算しましょう。贈与税は贈与をした側ではなく、贈与を受けた側にかかる税金だからです。
その年の1月1日から12月31日までに受け取った特例贈与財産の合計額を計算しましょう。
例えば、上記のケースでは特例贈与財産の合計額は「150万円+100万円」と計算可能です。
贈与税には毎年110万円の基礎控除額が用意されています。そのため、特例贈与財産の合計額を計算した後は基礎控除額を引き、課税対象額の計算をしましょう。
先ほどのケースでは「250万円-110万円=140万円」が贈与税の課税対象額となります。
贈与税の課税対象財産の計算が完了したら、贈与税率を掛けて税率を計算しましょう。特例贈与税率は一般贈与税率よりも低いので、計算時には間違えないようにご注意ください。
特例贈与税率および控除額は、下記の通りです。
課税対象額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | なし |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
例えば、特例贈与財産140万円にかかる贈与税額は「140万円×10%=14万円」です。
関連サイト国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
特例贈与財産も一般贈与財産と同様に年間110万円を超える場合、贈与税の申告および納税が必要です。贈与税の申告方法や期限を詳しく解説していきます。
贈与税の申告は、下記の4つの方法があります。
税理士に依頼して申告書を作成、提出してもらう方法以外は、自分で手続きをするので費用はかかりません。
税理士に依頼した場合、費用がかかるもののミスなく申告できますし税務調査が来るリスクも下げられます。
また、贈与税の申告に利用できる控除や特例を漏れなく利用できるので、自分で贈与税の申告をするより節税できる可能性もあります。
贈与税の申告を自分でするのが難しい場合や高額な贈与を行うため税務調査が来ないか不安な場合は、生前贈与に詳しい税理士に相談するのが良いでしょう。
特例贈与財産の申告をする場合、贈与税申告時には下記の書類も必要です。
なお、過去に同じ人物から贈与を受けて申告していた場合、申告書第一表の「過去の贈与税の申告状況」に下記の情報を記載すれば、書類の提出は必要ありません。
贈与税の申告および納税期間は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までです。申告および納税期間を過ぎてしまったり虚偽の申告を行うと、下記のペナルティが発生します。
ペナルティ | 概要 |
---|---|
無申告加算税 | 申告期限までに申告書を提出しなかった場合に発生するペナルティ |
延滞税 | 納税期限までに贈与税を納めなかった場合に発生するペナルティ |
重加算税 | 財産隠しや偽装をして贈与税を申告しなかった、過少申告した場合に発生するペナルティ |
関連サイト国税庁「No.4429贈与税の申告と納税」
特例贈与財産として生前贈与するのは、相続税対策としても有効です。
しかし、親から子や祖父母から孫へ相続税対策として生前贈与する際には、いくつか注意すべきことがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
養親から18歳以上の養子への生前贈与にも特例贈与税率が適用されますが、適用できるのはあくまでも養子縁組した日以降です。養親と養子は養子縁組によって法律上の親子関係が生じるからです。
また、養親から養子の子(孫)へ贈与するときには特に注意が必要です。養親から養子の子(孫)への生前贈与で特例贈与税率を適用するには、養子の子が養子縁組より前に生まれていなければなりません。
ケース | 特例贈与財に該当する or しない |
---|---|
養子の子が養子縁組前に生まれた | 特例贈与財産に該当しない |
養子の子が養子縁組後に生まれた | 特例贈与財産に該当する |
養子縁組前に生まれた養子の子と養親の間には、祖父母と孫の関係が生じていないと考えられるからです。
相続税対策で養子縁組をする場合や養子の子にも贈与を検討している場合は、それぞれのタイミングについてご注意ください。
贈与者が死亡した場合、相続発生から3~7年以内に行われた生前贈与は相続税の課税対象財産に含まれる場合があります。
ただし、過去に行われた生前贈与が相続税の課税対象財産に含まれるのは、相続人もしくは受遺者に対して行われた生前贈与のみです。
そのため、遺言や生命保険などで遺産を受け取っていない孫などに行われた生前贈与は贈与時期にかかわらず、相続税の課税対象財産に含まれません。
また、生前贈与が相続税の課税対象財産に含まれる期間は、贈与の時期によって下記のように変わります。
贈与の時期 | 生前贈与加算の対象期間 |
---|---|
2023年12月31日まで | 死亡前3年間 |
2024年1月1日以降 | 死亡前7年間 |
2023年の税制改正によって、上記のように相続税の課税対象財産に含まれる期間が変更されました。
直系尊属から直系卑属に行われる贈与は、特例贈与財産として贈与税を節税できるだけでなく、贈与の目的によって様々な控除や特例を適用できます。
直系尊属から直系卑属に対しての贈与で利用できる控除や特例は、下記の通りです。
控除・特例 | 概要 |
---|---|
相続時精算課税制度 | 2,500万円までにかかる贈与税を非課税にできる |
教育資金贈与の特例 | 30歳までの子や孫に対して教育資金を一括贈与すると1,500万円まで非課税にできる |
結婚・子育て資金の贈与の特例 | 18歳以上50歳未満の子や孫に対して結婚、子育て資金を一括贈与すると1,000万円まで非課税にできる制度 |
住宅取得資金贈与の特例 | 子や孫に住宅取得資金を贈与すると1,000万円まで非課税にできる制度 |
相続税対策や生前贈与には様々な方法があり、贈与者と受贈者の関係や贈与の目的、資産状況によってベストな対応が変わってきます。
相続税対策には専門的な知識や経験が必要になるので、控除や特例を漏れなく適用するには相続税対策に詳しい税理士に相談するのがおすすめです。
杉並・中野相続サポートセンターは西荻窪駅から徒歩1分の便利な場所に事務所があり、開業して35年以来、杉並区や中野区をはじめとした地域に密着してご相談者様の相続をサポートしてまいりました。
必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家とも連携を取りながら、ご相談者様の相談や依頼をワンストップで解決していきます。
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初回利用者向けの無料相談も開催しておりますので、お気軽にお問合せください。当サポートセンターの対応エリアは以下の通りです。
親や祖父母などの直系尊属から子や孫への直系卑属に生前贈与をすると、特例贈与財産として扱われます。
特例贈与財産は一般贈与財産よりも贈与税の税率が低く設定されています。そのため、相続税対策を考えるのであれば親や祖父母から子や孫に贈与を行うことも検討しましょう。
ただし、相続税対策は複雑であり対応方法はケースバイケースです。どんな相続税対策が適しているか知りたい場合は、相続に詳しい税理士への相談もおすすめします。