公正証書遺言は、遺言者の意思を確実に反映させるための有効な手段として広く利用されていますが、それでも相続人同士で争いが生じることがあります。
特に、遺言内容が偏っている場合や、遺留分を侵害している場合には、トラブルとなりやすいので注意しなければなりません。
このような事態を避けるためにも、公正証書遺言を作成する際には、事前に専門家に相談しておくことをおすすめします。
本記事では、公正証書遺言があっても発生し得る相続トラブルや、その回避方法について解説します。
目次
公正証書遺言とは公証人が遺言者の意思を聴き、それを文書にまとめ、公証人と証人2人の立会いのもとで作成する遺言書です。
公正証書遺言は公証人が作成するため、信頼性が高いなどといったメリットがあります。
遺言書にはいくつか種類がありますが、その中でも最も一般的なものは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。
自筆証書遺言は、遺言者が自ら手書きで作成する遺言書で、形式的な要件さえ満たせば、簡単に作成できる点がメリットです。
しかし、自筆証書遺言はその内容に不備があると無効となりますし、原本の改ざんや紛失リスクもある点に注意しなければなりません。
関連サイト法務局「自筆証書遺言と公正証書遺言の違い」
公正証書遺言は、他の遺言書と比較して信頼性が高いという特徴がありますが、それでも無効になる可能性がゼロではありません。
上記のようなケースでは、公正証書遺言が無効になる恐れがあります。
公正証書遺言があるにもかかわらず、相続人同士でもめてしまうケースは、主に下記の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
相続人が遺言の内容に納得していない場合、遺言内容を巡ってトラブルになりやすいです。
特に、遺言内容が一部の相続人に有利で、他の相続人にとって不利益になる場合、その不満から訴訟に発展することもあるでしょう。
遺言内容が偏っている場合にも、相続人や受遺者同士でもめる原因となります。遺言者が特定の人物に遺産を多く遺すと、他の相続人が不公平感を持ちやすくなるからです。
遺言内容に納得しない相続人が、遺言書の有効性について訴訟を起こす可能性もあるでしょう。
遺言内容が遺留分を侵害している場合も、もめやすいので注意しなければなりません。遺留分とは、配偶者や子供、親といった法定相続人に民法で最低限保証された相続分です。
遺留分は遺言より優先されるため、公正証書遺言で遺留分を侵害するような内容が記載されていた場合、遺留分トラブルが起きる恐れもあるでしょう。
遺言書作成当時の遺言者の判断能力の有無に曖昧な点があるなど、公正証書遺言の有効性が疑われる場合も、トラブルに発展する可能性があります。
遺言者の判断能力の有無の他にも、証人に欠格事由があった場合にも、公正証書遺言が無効であると相続人などが主張する可能性があります。
公正証書遺言の内容そのものに問題はないものの、遺言に記載されていない遺産があった場合にも、もめる可能性があるのでご注意ください。
公正証書遺言に記載されていない遺産が新たに発見された場合には、その財産について相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。
相続トラブルを回避するために遺言書を作成した場合、記載漏れがあると効果が薄れてしまう恐れもあるので、事前に財産目録を作成した上で遺言書を作成することが大切です。
公正証書遺言は、遺言者の意思を確実に反映させるための有効な手段とされていますが、遺言書があるにもかかわらず相続人同士で争いが生じることがあります。
本章で、公正証書遺言があるのに遺産分割に関する争いが起きた場合、どのように対処すべきかを解説していきます。
まず、相続人や受遺者同士で問題を解決するために、話し合いの場を持つことが重要です。公正証書遺言が存在していても、その内容について不満や疑問が生じることもあるからです。
遺言内容に不公平感を抱いている相続人や受遺者がいる場合には、理由をきちんと説明し、調整を行っていきましょう。
遺言内容にどうしても納得できない場合や、当事者同士では感情的になってしまう場合には、相続の専門家に相談してみることも有効です。
当事者同士の話し合いで解決できない場合、遺言無効確認調停や遺言無効確認訴訟を行いましょう。
遺言無効確認調停とは、家庭裁判所で行う手続きで、遺言書が本当に遺言者の意思を反映しているか、または遺言者の意思能力に問題がなかったかを調停委員を交え、話し合うことです。
遺言無効確認訴訟とは、調停が不成立となった際に行う手続きであり、裁判所で遺言の有効性について判断を下してもらえます。
このような調停や訴訟の手続きには専門的な知識や経験も必要となるため、相続トラブルに精通した弁護士に相談すると良いでしょう。
遺言内容が遺留分を侵害している場合には、遺留分侵害額請求を行うことを検討しましょう。遺言無効確認調停・遺言無効確認訴訟にて、遺言書の有効性について争うとともに、遺留分侵害額請求を行うことも認められます。
遺留分侵害額請求を行えば、遺産を多く受け取った人物から遺留分侵害額相当分の金銭を受取可能です。
本章では、公正証書遺言による相続トラブルを回避するためにすべきことを詳しく見ていきましょう。
公正証書遺言を作成する際には、遺留分を侵害しない内容にしましょう。遺留分は遺言より優先され、遺留分を侵害した遺言はトラブルに発展する恐れもあるからです。
遺言書作成当時の遺言者の判断能力が問題になることを避けるためにも、遺言書作成時の証拠を残しておくのも良いでしょう。
例えば、遺言者が医師による診察を受けておくことやビデオなどで当時の様子を記録しておくこともおすすめです。
公正証書遺言の内容に付言事項を記載すれば、相続トラブルを防げる可能性があります。付言事項とは、遺言書における遺産分けに関する補足的なコメントや、遺言者の意図を説明する文言です。
付言事項は法的効力を持ちませんが、遺言者の真意を伝えるために有効な手段となるでしょう。
例えば、「同居した長男に多くの遺産を遺したい」といった希望を記載しておけば、他の相続人も納得しやすくなるはずです。
公正証書遺言の作成を専門家に依頼すれば、これまで解説してきた対策も行ってもらえます。
遺言内容のアドバイスももらえるはずですし、場合によっては公正証書遺言の作成以外の相続対策を進めてもらえる場合もあるでしょう。
被相続人が公正証書遺言を作成していたとしても、遺言内容や作成時の状況によっては、トラブルが起きる可能性があります。
このような事態を防ぐためにも、公正証書遺言を作成する際には、事前に専門家に相談しておくと良いでしょう。
専門家であれば、公正証書遺言の内容も提案できますし、遺言書の作成と他の相続対策を組み合わせた提案も可能です。
遺言書作成を始めとする相続対策は、相続に強い税理士や専門家が多数在籍する「杉並・中野相続サポートセンター」までご相談ください。
当サポートセンターでは開業して30年以来、2,500件を超える相続の相談をお受けしてきました。弁護士・司法書士などの専門家と協力体制を取りながら、ご相談者様の相続手続きをワンストップでサポート可能です。
杉並・中野相続サポートセンターは西荻窪駅・徒歩1分に事務所を構え、下記エリアを中心とした地域密着の相続相談を承っています。ぜひご相談ください。
公正証書遺言を活用すれば、希望の人物に財産を相続させたり、相続トラブルを回避できたりします。
しかし、公正証書遺言の内容や作成当時の遺言者の状況によっては、相続人間でもめてしまう恐れもあるのでご注意ください。
公正証書遺言を使って相続対策をしたいのであれば、自己判断で作成するのではなく、作成を検討した段階で、相続に強い専門家に相談することをおすすめします。