家族や親族が亡くなり自宅などを整理していると、故人が遺した遺言書を見つけることがあるでしょう。
遺言書を見つけたとき「中に何が書いてあるんだろう」とすぐ開封したくなりますが、遺言書の種類によっては開封してはいけないのでご注意ください。遺言書のうち、自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが必要だからです。
万が一、自筆証書遺言と秘密証書遺言を検認手続きの前に開封してしまうと5万円以下の過料が発生してしまうのでご注意ください。
本記事では、遺言書の種類ごとの開封手続きや検認手続きの流れ、必要書類について解説していきます。
目次
相続対策で使用される遺言書には複数の種類があり、種類ごとに開封手続きが異なるので注意しなければなりません。
相続手続きで用いられる遺言書は、主に下記の通りです。
自筆証書遺言 | 検認手続きが必要(法務局の保管制度を利用している場合を除く) |
---|---|
秘密証書遺言 | 検認手続きが必要 |
公正証書遺言 | 検認手続きが不要 |
それぞれ詳しく解説していきます。
自筆証書遺言とは、遺言者がすべて自著で作成する遺言書です。自筆証書遺言の原本を自分で保管していた場合、家庭裁判所での検認手続きが必要なので勝手に遺族が開封することはできません。
なお、自筆証書遺言は法務局での保管制度が2020年7月から開始されました。法務局による自筆証書遺言の保管制度を利用していた場合、検認手続きは不要です。
ただし、自筆証書遺言の原本は法務局に保管されているため、遺言者が死亡した後に相続人が法務局にて閲覧請求を行う必要があります。
関連サイト法務局「自筆証書遺言書保管制度について」
秘密証書遺言とは、公証役場にて存在のみを証明してもらう遺言書です。公正証書遺言と異なり、公証役場では遺言の内容を確認しないため、内容を秘密にできる特徴があります。
秘密証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが必要なため、原本を被相続人の自宅などで見つけても遺族が勝手に開封してはいけません。
検認手続きの流れや必要書類については、本記事の後半で詳しく解説していきます。
公正証書遺言とは、公証役場にて公証人が作成してくれる遺言書です。公正証書遺言を作成した場合、遺言書の原本は公証役場にて保管されるため、家庭裁判所での検認手続きは必要はなく、遺族が開封しても問題ありません。
また、被相続人の自宅などで見つかる公正証書遺言は原本ではなく写し「正本」と呼ばれるもので、検認をせずに相続手続きが可能です。
遺言書を開封した後は、記載されている内容にしたがって相続手続きを進めていきましょう。
先ほど解説したように、秘密証書遺言や法務局による保管制度を利用していない自筆証書遺言が見つかった場合は、遺族が開封してはならず、家庭裁判所による検認手続きをしなければなりません。
遺言書の検認手続きの流れは、下記の通りです。
検認手続きの申立てに必要な書類は、主に下記の通りです。
関連サイト裁判所「遺言書の検認」
自筆証書遺言や秘密証書遺言の検認手続きが完了した後は、遺言書の内容に従い、遺産の名義変更手続きなどの相続手続きを行っていきます。検認手続きが不要である公正証書遺言に関しても同様です。
なお、遺言執行者が選任されていれば、相続人ではなく遺言執行者が単独で遺産の名義変更手続きを行えます。
関連サイト裁判所「遺言執行者の選任」
検認手続きが必要である自筆証書遺言や秘密証書遺言を遺族が勝手に開封してしまうと、5万円以下の過料が発生する恐れがあるのでご注意ください。
遺言書の開封手続きについての注意点は、主に下記の通りです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
被相続人の自宅などから遺言書が見つかった場合、すぐに開封して中身を確認したくなることもあるでしょう。
しかし、封がされた遺言書を裁判所外で勝手に開封すると、法律に違反してしまうのでご注意ください。
遺言書の開封については民法第1004条では「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。」と定められています。遺言書を勝手に開封した場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。
ただし、この罰則は、遺言書の内容を改ざんしたり、意図的に隠したりすることを防ぐための措置であり、間違えて開封してしまった場合などは科されないことも多いです。
被相続人の自宅などから、自筆証書遺言や秘密証書遺言を見つけた場合は、すぐに検認手続きの準備をしましょう。発見した遺言書の種類がわからない場合は、相続の専門家に相談するのもおすすめです。
仮に誤って遺言書を開封してしまった場合でも、遺言書の効力自体が失われることはありません。遺言書の内容そのものが無効になるわけではなく、先ほど解説した過料が発生する可能性があるだけです。
ただし、遺言書を勝手に開封した場合でも、検認手続きが不要になるわけではありません。自筆証書遺言や秘密証書遺言は検認手続きをすませないと、相続手続きで使用できないのでご注意ください。
間違って遺言書を開封してしまった場合でも、速やかに検認手続きの申立てをしましょう。
自筆証書遺言は、封印に関する要件がないため、まれに封をしていない遺言書が見つかる場合もあります。
しかし、封をしていない自筆証書遺言であっても、家庭裁判所での検認手続きをすませないと相続手続きに使用できないのでご注意ください。
また、自筆証書遺言は封をしていなくても有効なため、家庭裁判所での検認手続きが完了し内容に問題なければ、遺言書に記載された通りに相続手続きを行えます。
被相続人が遺言書を用意していた場合は、原則として遺言書の内容に従い相続手続きを行う必要があります。
遺言書の内容によっては、相続税申告が複雑になり、専門的な知識が必要になる場合もあるでしょう。
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遺言書には複数の種類があり、その中でも自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが必要です。
検認手続きを行う前に遺族などが遺言書を勝手に開封してしまうと、5万円以下の過料が発生する恐れもあるのでご注意ください。
なお、遺言書を用意している人は遺産の額も多く、相続税の負担が大きくなる傾向があります。相続税の負担を少しでも軽減したい人やミスなく申告したい人は、相続に詳しい税理士に相談することもご検討ください。