固定資産評価証明書は、不動産に関する相続や登記、売買などの場面で必要となる重要書類です。
しかし、評価額の意味や他の書類との違い、取得方法や適切な年度の選び方など、実務上のポイントを正しく理解している方は多くありません。
本記事では、固定資産評価証明書の基本から、相続手続きでの具体的な確認ポイント、取得方法について解説します。
目次
固定資産評価証明書とは、土地や建物といった固定資産について、市区町村が評価した「評価額(課税標準の基礎となる価格)」を証明する公的書類です。
主に各市区町村の役所(資産税課など)で取得でき、不動産の売買、相続、贈与、担保設定など、様々な場面で必要となります。
固定資産の価格とは、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて評価された額を知事又は市町村長が決定し、固定資産課税台帳に登録したものをいいます。
引用元:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)(東京都主税局)
固定資産公課証明書は、評価額に加えて「課税標準額」や「年税額(固定資産税・都市計画税)」が記載された書類です。
つまり、評価証明書が「評価額の証明」に特化しているのに対し、公課証明書は「実際に課されている税額まで含めた課税状況の証明」である点が大きな違いです。
実務上は、用途によって使い分けます。
例えば、不動産の登記や相続手続きにおいて評価額のみが必要な場合は評価証明書で足りますが、売買時の精算や金融機関への提出など、税額情報も必要なケースでは公課証明書が求められることが一般的です。
固定資産税納税通知書は、毎年4月頃に市区町村から納税者へ送付される書類で、その年の固定資産税・都市計画税の納付額や納期限が記載されています。
納税のための通知であるため、証明書としての性質はありません。
一方、固定資産評価証明書は「第三者への提出を前提とした公的証明書」であり、必要に応じて申請・取得する点が異なります。
名寄帳(なよせちょう)とは、特定の納税義務者が所有する固定資産を一覧形式でまとめた帳簿です。市区町村ごとに、その人が所有している土地や建物がすべて網羅されており、いわば「資産の全体像を把握するための資料」といえます。
これに対し、固定資産評価証明書は「特定の不動産ごとの評価額を証明する書類」です。
相続実務では、まず名寄帳を取得して被相続人の不動産を漏れなく把握し、そのうえで必要な物件について評価証明書を取得するという流れが一般的です。
固定資産評価証明書は、不動産に関する各種手続きにおいて「公的に評価額を証明する資料」として幅広く利用されます。
相続手続きにおいては、遺産の内容と評価額を正確に把握することが不可欠です。
具体的には、相続税申告において建物の評価額を算定する際や、遺産分割協議で各相続人に分配する財産価値を整理する際に活用されます。
また、不動産の名義変更(相続登記)を行う際には、登録免許税の算定基礎として固定資産評価額が用いられるため、法務局へ提出する資料としても必要です。
課税標準となる「不動産の価額」は、市町村役場で管理している固定資産課税台帳に登録された価格がある場合は、原則その価格です。
引用元:No.7191 登録免許税の税額表(国税庁)
相続以外でも、固定資産評価証明書が必要となる場面は多岐にわたります。
代表的なものとしては、不動産の売買や贈与に伴う手続きが挙げられます。売買契約においては、固定資産税の精算金を算出するための参考資料として使用されることがあり、また贈与税の計算においても評価額の確認資料として活用されます。
加えて、不動産の担保設定を行う際に金融機関から提出を求められるケースや、離婚時の財産分与において不動産の価値を把握するために取得するケースもあります。
固定資産評価証明書は、不動産の所在地を管轄する市区町村役場で取得します。
窓口での申請のほか、多くの自治体では郵送申請やコンビニ交付(マイナンバーカード利用)にも対応しています。
関連サイト東京都主税局「固定資産に関する証明等(23区内)」
申請時に必要となる書類は、主に以下の通りです。
手数料は自治体ごとに異なりますが、一般的には1通あたり数百円程度です。
なお、年度ごとに評価額が更新されるため、提出先の要件に応じて「どの年度の証明書が必要か」を事前に確認しておくことが重要です。
相続手続きにおいて固定資産評価証明書を取得した場合、単に評価額を見るだけでは不十分な場合があります。
まず最優先で確認すべきは「評価額」です。建物についてはこの評価額がそのまま相続税評価額となるため、申告や遺産分割の基礎資料となります。
一方で土地については、相続税評価は原則として路線価等で行われるため、評価証明書の評価額は参考値として扱いますが、固定資産税の精算や遺産分割の目安として利用されることがあります。
路線価(その道路に面している標準的な宅地の1平方メートル当たりの千円単位の価額)が付された地域の宅地を評価する場合には、評価する宅地の面する路線の路線価を基として、次のように評価します。
引用元:No.4604 路線価方式による宅地の評価(国税庁)
次に重要なのが「所在・地番(家屋番号)」です。不動産は住所表示ではなく地番で特定されるため、相続登記や遺産分割協議書を作成する際には、この情報が正確に一致している必要があります。
他には、「地目」「地積」「床面積」「構造」などの物件情報も確認対象となることがあります。これらは不動産の実態を把握するための基本情報であり、相続財産の漏れや誤認を防ぐために役立ちます。
固定資産評価証明書は毎年更新されるため、「どの年度のものを取得すべきか」は手続きの種類によって異なります。
誤った年度の証明書を提出すると、再取得が必要になることもあるため注意しましょう。
相続登記においては、登録免許税の算定基礎として固定資産評価額が用いられます。この場合、原則として「最新年度(申請時点で直近の年度)」の評価証明書を使用します。
固定資産税評価額は4月に評価替えが行われるため、4月1日以降に申請する場合はその年度の証明書が必要となります。
3月31日以前に申請する場合は前年度の証明書を使用することになります。
相続税の申告においては、「被相続人の死亡時点」における財産評価が原則です。例えば、令和6年中に被相続人が亡くなった場合は、令和6年度の評価証明書を使用するのが基本です。
なお、土地については路線価等で評価するため評価証明書の評価額自体は直接使用しませんが、面積や地目の確認資料として必要となるため、やはり同年度の証明書を取得しておくのが一般的です。
最後に、固定資産評価証明書についてよくある質問を回答と共に紹介していきます。
原則として、固定資産評価証明書を取得できるのは「所有者本人」または「正当な利害関係を有する者」に限られます。具体的には、所有者の同居親族や相続人、代理人、不動産の買主や担保権者などが該当します。
手数料は自治体ごとに異なりますが、一般的には「1通あたり300円〜400円程度」かかります。土地と建物で別々に発行される場合や、複数物件を取得する場合はその分費用がかかります。
近年は、マイナンバーカードを利用したコンビニ交付に対応する自治体も増えています。ただし、すべての市区町村が対応しているわけではなく、また取得できる証明書の種類や対象年度(当年度のみとする自治体が多い)にも制限がある場合があります。相続手続きのように複雑な条件が絡む場合は、窓口または郵送での取得が確実といえるでしょう。
相続登記においては、登録免許税を算定するための資料として固定資産評価証明書の提出が求められるのが一般的です。そのため、実務上は「必須書類」と考えて差し支えありません。
不動産を相続したときには、相続税申告や相続登記が必要であり、その際には不動産の相続税評価額や登録免許税を正確に把握しなければなりません。
固定資産評価証明書を取得しても相続税評価額や登録免許税の計算に不安がある場合には、相続手続きに精通した専門家に相談することも検討しましょう。
相続登記や相続税申告に不安がある場合には、相続・贈与に強い税理士や専門家が多数在籍する「杉並・中野相続サポートセンター」までご相談ください。
杉並・中野相続サポートセンターは西荻窪駅・徒歩1分に事務所を構え、下記エリアを中心とした地域密着の相続相談を承っています。ぜひご相談ください。
固定資産評価証明書は、不動産の評価額を公的に証明する書類として、相続登記や相続税申告をはじめ多くの手続きで活用されます。
重要なことは、評価額だけでなく所在地や地番などの情報を正確に確認し、登記簿や名寄帳と照合することです。
また、手続きの種類によって必要となる年度が異なるため、取得時期の判断も実務上のポイントとなります。
相続手続きは自分で行うこともできますが、不安な場合や忙しく書類を収集する時間がない場合には、専門家に相談することもおすすめします。
この記事の監修者
監修者
廣瀬 一俊