生前贈与は相続対策として広く活用されている一方で、「いくらまでなら大丈夫なのか」「非課税枠の仕組みがよく分からない」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
生前贈与には法律上の限度額はありませんが、税務上は基礎控除や各種特例があり、正しく理解していないと思わぬ課税やトラブルにつながることがあります。
本記事では、生前贈与の限度額はいくらか、非課税枠の仕組みや活用方法について解説します。
目次
生前贈与は法的には上限は設定されていません。年間110万円を超える贈与を受けると、贈与税がかかる恐れがあります。
本章では、生前贈与の限度額について詳しく解説していきます。
生前贈与について「いくらまでなら渡してよいのか」というご相談を多くいただきますが、法律上、贈与そのものに上限額は設けられていません。
つまり、〇万円までしか渡してはいけないなどというルールはなく、当事者間の合意があればいくらでも財産を移転することは可能です。
法律上は生前贈与に限度額はありませんが、年間110万円を超える贈与を受けると贈与税がかかる場合があります。
贈与税には、年間110万円の基礎控除が設定されており、基礎控除内の贈与であれば贈与税はかからないからです。
ただし、110万円以内であっても、毎年同じ時期に同額を長期間贈与している場合には「定期贈与」とみなされ、想定外の課税が生じるケースもあるので注意しなければなりません。
関連サイト国税庁「No.4402贈与税がかかる場合」
生前贈与には年間110万円の基礎控除が設定されています。控除や特例を利用すれば、さらに贈与税を節税できる可能性もあります。
本章では、生前贈与の基礎控除額や非課税枠について解説します。
最も基本的な非課税枠が、暦年贈与における基礎控除額です。
1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与額の合計が110万円以下であれば、原則として贈与税はかかりません。
基礎控除は受贈者ごとに適用されるため、例えば子供が2人いれば、それぞれに110万円ずつ贈与することも可能です。
相続対策として長期間にわたり活用されることが多い制度ですが、単に資金移動を行うだけではなく、贈与契約書の作成や通帳管理など、贈与の事実を客観的に証明できるようにしておくことが重要です。
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与する場合に選択できる制度です。
関連サイト国税庁「相続時精算課税」
この制度では、累計2,500万円までの贈与について贈与税が課税されず、それを超えた部分に対して一律20%の税率で課税されます。
さらに、2024年(令和6年)の制度改正により、年間110万円の基礎控除も併用できるようになりました。これにより、一定額までの贈与をより柔軟に行うことが可能になっています。
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、自宅または自宅取得資金を贈与する場合には、最大2,000万円まで配偶者控除が適用されます。
これに加えて暦年贈与の基礎控除110万円も併用できるため、合計で2,110万円まで非課税で贈与することが可能です。
父母や祖父母から、住宅の新築・取得・増改築のための資金援助を受ける場合、一定の要件を満たすことで贈与税が非課税となる特例があります。
関連サイト国土交通省「住宅取得資金贈与の非課税措置」
非課税限度額は住宅の性能や契約時期によって異なり、省エネ等住宅は1,000万円、一般住宅は500万円が上限となります(令和6年1月1日以降の贈与の場合)。
祖父母や父母が、子や孫の結婚や出産、子育てにかかる費用を支援する目的で資金を一括贈与する場合、1,000万円まで贈与税が非課税となる制度があります。
ただし、金融機関で専用口座を開設し、領収書等に基づいて払い出しを行う必要があります。
結婚式費用や不妊治療費、子供の保育料など幅広い用途が対象となる一方で、対象費用や手続きには細かなルールがあるのでご注意ください。
また、結婚費用については上限が300万円と設定されています。
なお、本特例は2025年度(令和7年度)税制改正により適用期限が2年延長され、2027年(令和9年)3月31日までとなっています。
生前贈与を計算する際には、基礎控除や非課税枠を引き、課税対象額を計算し、そこに贈与税率を掛けます。詳しく見ていきましょう。
まずは、その年に受けた贈与の合計額を正確に把握することから始めます。
暦年課税の場合、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の総額を基準に贈与税の課税有無を判断します。
複数人から贈与を受けている場合でも、受贈者ごとに合計して計算することを理解しておきましょう。
次に、適用できる非課税制度や基礎控除を差し引きましょう。
暦年課税であれば基礎控除110万円を差し引き、相続時精算課税制度や各種特例を利用する場合には、それぞれの非課税枠を考慮します。
例えば、暦年贈与の場合、年間の贈与額が200万円であれば、基礎控除110万円を差し引いた90万円が課税対象となります。複数の特例が関係する場合には、適用要件や優先関係を整理することが重要です。
課税対象額を計算できたら、贈与税の税率表に基づいて税額を計算します。贈与税は累進課税制度のため、課税価格が高くなるほど税率も高くなります。
一般贈与財産か特例贈与財産かによって税率区分が異なるため、贈与者と受贈者の関係性も確認が必要です。
関連サイト国税庁「No.4408贈与税の計算と税率(暦年課税)」
非課税枠を利用して生前贈与を行う場合、贈与が否認されないように注意しなければなりません。
ここでは、生前贈与をする際の注意点について解説します。
生前贈与を行う際に最も多いトラブルのひとつが「名義預金」と判断されてしまうケースです。
名義預金とは、通帳や口座名義は子や孫であっても、実際には贈与者が管理・支配していると評価される預金をいいます。
この場合、贈与が成立していないと判断され、相続時に相続財産として課税対象に含まれる可能性があります。
例えば、子供名義の口座を親が作成し、通帳や印鑑を親が管理している場合や、子供が口座の存在を知らない場合などは、名義預金と認定されやすくなるのでご注意ください。
贈与として認められるためには、受贈者が通帳や印鑑を管理し、自由に引き出しができる状態にしておくことが重要です。
暦年贈与を長期間続ける場合には、「定期贈与」と判断されないよう注意が必要です。
定期贈与とは、あらかじめ一定期間・一定金額を贈与する契約をしていると認定されるケースを指し、全体の贈与額を一括で課税される可能性があります。
例えば、「毎年100万円を10年間贈与する」といった合意がある場合、初年度に1,000万円の贈与があったとみなされるリスクがあります。
実務では、毎年その都度贈与契約を締結したり、金額や時期を固定しすぎないなどの工夫が有効です。
自己判断で贈与をすると、定期贈与とみなされる恐れがあるので、税理士に相談しながら行うことも大切です。
家族間の資金移動では、口約束だけで済ませてしまうケースも少なくありませんが、税務上は贈与契約書を作成しておくことをおすすめします。
贈与契約書は、贈与の意思と内容を客観的に証明する重要な資料となり、後日の税務調査や相続手続きにおいて重要となるからです。
契約書には、贈与日や贈与者と受贈者の氏名、贈与財産の内容や金額などを記載し、双方が署名押印しましょう。
必ずしも公正証書にする必要はありませんが、毎年作成して保管しておくことで、贈与の実態を明確にできます。
生前贈与をする際には、贈与税や将来の相続対策など考慮しなければならないことがいくつかあります。
自己判断で贈与してしまうと、後から贈与の事実を税務署に否認されたり、相続トラブルが起きたりする恐れもあるので注意しましょう。
将来の相続対策のために生前贈与をしたいのであれば、相続に強い税理士や専門家が多数在籍し、実績豊富な「杉並・中野相続サポートセンター」までご相談ください。
杉並・中野相続サポートセンターは西荻窪駅・徒歩1分に事務所を構え、下記エリアを中心とした地域密着の相続相談を承っています。ぜひご相談ください。
生前贈与には法律上の上限はありませんが、贈与税の基礎控除や各種非課税制度を理解して活用することが重要です。
暦年贈与の110万円控除だけでなく、相続時精算課税制度や配偶者控除などを適切に選択すれば、税負担を抑えながら財産を移転できます。
一方で、名義預金や定期贈与と判断されるリスクもあるので、自己判断せず専門家に相談しながら生前贈与をすることが大切です。