養子縁組をすると、養親と養子の間に親子関係が生じます。そして、普通養子縁組を選択した場合、生みの親と実子の親子関係も解消されず残り続けます。
したがって、普通養子縁組の場合、養子は養親と生みの親両方の遺産を相続可能です。
本記事では、養子は生みの親の遺産を相続できるのか、手続きをする際の注意点を詳しく解説していきます。
目次
本記事の冒頭で解説したように、普通養子縁組によって養子になった子供は生みの親の遺産も相続できます。また、離婚により解消されるのは夫婦関係のみであり、親子関係が失われることはありません。
したがって、離婚後に生みの親と疎遠になった場合も、母親もしくは父親が亡くなったときには遺産を相続可能です。
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
普通養子縁組によって養子になった子供は、生みの親と養親両方の相続人となります。普通養子縁組では、生みの親と実子の間の親子関係は解消されずに残り続けるからです。
一方、特別養子縁組の場合、生みの親と実子の親子関係は解消されます。したがって、特別養子縁組で養子になった子は、生みの親の遺産を受け継ぐことはできません。
離婚によって片方の親に引き取られ、その後は父親もしくは母親と疎遠になった場合でも、生みの親の遺産を受け継げます。離婚によって解消されるのは、夫婦関係のみであり、親子関係は継続するからです。
そのため、離婚後疎遠になった親が死亡した場合は、自分と後妻、後妻の子などと相続手続きを進めなければならない場合もあります。
関連サイト国税庁「No.4170 相続人の中に養子がいるとき」
養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類の手続きがあります。普通養子縁組は相続対策などで用いられるのに対し、特別養子縁組は子供の福祉のために行われます。
普通養子縁組と特別養子縁組について、詳しく見ていきましょう。
普通養子縁組とは、養子と養親の親子関係を生じさせる一方で、実子と生みの親の親子関係も解消せず継続し続ける制度です。
普通養子縁組は、主に相続対策や事業承継目的などで行われることが多いです。
特別養子縁組とは、子供の福祉のために用いられる養子縁組であり、養子と養親の親子関係が生じると共に実子と生みの親の関係は消滅します。
例えば、特別養子縁組は生みの親が死亡しており施設に預けられている子供や生みの親が養育困難な事情を抱えているときに用いられることが多いです。
関連サイト法務省「普通養子縁組と特別養子縁組について」
普通養子縁組は養子が未成年者の場合は、家庭裁判所にて養子縁組許可の申立てを行う必要があります。
手続きの流れは、下記の通りです。
なお、養子になる人物が成人している場合は、家庭裁判所への申立ては不要となります。普通養子縁組の際に行う戸籍の届け出の際に必要な書類は、主に下記の通りです。
特別養子縁組は実子と生みの親の親子関係を解消する手続きであり、非常に効力が大きいものです。したがって、慎重を期すために手続きも複雑であり、下記のように段階を踏む必要があります。
上記のように、特別養子縁組を希望する場合、児童相談所や民間あっせん機関に相談し、あらかじめ待機登録をすませる必要があります。
関連サイトこども家庭庁「特別養子縁組制度について」
待機登録完了後は、養子受け入れに適した状態を築いておかなければなりません。
このように、養子縁組といっても種類によって手続き方法は大きく異なります。ただし、相続対策で用いられる養子縁組は普通養子縁組がほとんどであることを理解しておきましょう。
養子が遺産を相続する際には、養子縁組の種類によって誰の遺産を受け継げるか変わる点に注意しておきましょう。
他に、養子が遺産を相続する際には、下記の点に注意が必要です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
養子縁組や親の離婚の後に生みの親と疎遠になっていた場合は、生みの親が死亡した後の相続財産調査が難航する恐れがあります。
相続財産調査とは、被相続人が所有していた財産の内容や金額を調査することです。
相続財産調査を行わなければ、被相続人の遺産を相続すべきかの判断もできませんし、その後の遺産分割協議や相続税申告も行えません。
相続手続きを自分で進めるのが難しい、他の相続人と関わりたくない場合は、相続に詳しい専門家に相続財産調査を依頼するのも良いでしょう。
養子と実子は同様の相続権が与えられるため、法定相続分も同じとされています。したがって、養子も実子も法律上は同じ割合の遺産を相続可能です。
関連サイト国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
養子は実子同様に遺留分も認められています。遺留分とは、被相続人の子供や配偶者などに認められている遺産を最低限度受け取れる権利です。
養子も遺留分が認められるため、被相続人が偏った内容の遺言書を用意していた場合は、遺留分侵害額請求権を行使できます。
養子は実子同様の相続権が与えられていますが、代襲相続については一部取り扱いが異なるので注意しておきましょう。
養子縁組に代襲相続が発生するのは、養子の子(被相続人から見た孫)が養子縁組より後に生まれているケースのみです。
養子縁組によって生じるのは養子と養親の親子関係のみであり、養子の子が養子縁組より前に生まれた場合は養親と養子の子に法的な関係は生まれないからです。
仮に、被相続人より先に養子が亡くなってしまい、養子の子に財産を遺したい場合は代襲相続が発生するかどうか確認しておくと良いでしょう。
孫を養子にして相続人にした場合、相続権は実子と同様のものが与えられますが、例外的に相続税は2割加算となるのでご注意ください。
これは、孫を養子にすることにより相続税の発生を一世代飛ばして節税することを防止するために設定されています。
相続税の節税のみを目的とした養子縁組は、税務署に否認される恐れがあるのでご注意ください。
極端な話ですが、相続税対策として養子縁組したものの税務署に否認されてしまっては、節税効果がなくなってしまい本来の目的を果たせません。
このような事態を防ぐためにも、養子縁組や相続税対策をする際には、相続について詳しい税理士に相談した上で行うのが良いでしょう。
養子は実子同様に法定相続人になりますが、相続税の基礎控除や生命保険金の非課税枠で算入できる法定相続人の数には上限があるのでご注意ください。
養子を法定相続人の数に含めることができるのは、下記の人数までと決められています。
被相続人に実子がいない場合 | 2人まで |
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被相続人に実子がいる場合 | 1人まで |
これは、養子縁組により相続税の基礎控除や生命保険金の非課税枠を無制限に増やせないように設定されています。
ただし、特別養子縁組により養子になった子や配偶者の連れ子と養子縁組したケースなどでは、上記の上限を超えても法定相続人として計算可能です。
普通養子縁組によって養子になった子供は、生みの親との親子関係も継続しているため、生みの親の遺産を受け継げます。
また、両親の離婚後に生みの親と疎遠になっていた子供に関しても、生みの親の遺産を相続可能です。
養子の相続や長年疎遠だった生みの親の相続は、相続人調査や相続財産調査などの手続きを進めるのが難しい場合もあります。
漏れなく相続財産を調査し正しく相続税申告するためにも、相続に詳しい税理士に相談するのがおすすめです。
生みの親の遺産相続が発生し、お悩みの方は、「杉並・中野相続サポートセンター」までご相談ください。
当サポートセンターでは開業して30年以来、2,500件を超える相続の相談をお受けしてきました。弁護士・司法書士などの専門家と協力体制を取りながら、ご相談者様の相続手続きをワンストップでサポート可能です。
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普通養子縁組は生みの親との親子関係も継続するため、養親と生みの親の両方の相続人となれます。他にも、離婚後に疎遠になっていた生みの親が亡くなった際にも、遺産を受け継げます。
生みの親の遺産を自分が受け継ぐのかわからない、どのように手続きを進めればよいかわからない場合は、相続に詳しい税理士や専門家に相談することもご検討ください。