遺産分割協議とは相続人全員で遺産の分割方法や取り分について話し合うことです。遺産分割協議をしないと、遺産の名義変更手続きを行えず共有状態のままになってしまいます。
そのままでいると、遺産の活用や売却も難しくなりますし、新たな相続が発生するとさらに権利関係が複雑になる点に注意しましょう。
結論から言うと、遺産分割協議そのものに期限はありませんが、相続税申告の期限である相続開始から10ヶ月以内に行うのがおすすめです。
本記事では、遺産分割協議をしないとどうなるのか、遺産分割協議を行う流れを解説します。
目次
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合い決定する手続きです。
遺産分割協議を行えば、民法によって決められた法定相続分に従う必要はなく、相続人同士の合意によって自由に遺産分割方法や割合を決められます。
ただし、遺言書がある場合は、原則として遺言書に記載された内容に従う必要があります。
遺産分割協議をしないでいると、遺産の名義変更などの相続手続きを行えず、遺産が全相続人の共有状態のままになってしまいます。
遺産分割協議をしないでいるデメリットは、下記の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
遺産分割協議をしないでいると、遺産の名義変更ができないので手続きが滞ってしまいます。例えば、不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどの手続きを進められません。
これらの手続きは、相続人全員の合意が必要であり、合意の証拠として遺産分割協議書の提出が求められるからです。
結果として、遺産の管理や活用が困難になり相続人全員に不利益が生じる可能性があります。遺産から相続税を払うこともできなくなる恐れがあるのでご注意ください。
遺産分割協議が行われない場合、相続財産は相続人全員の共有状態となります。
遺産が共有状態になってしまうと、活用や売却をする際に相続人全員の同意が必要になり、場合によっては難しいこともあります。
例えば、一部の相続人が共有状態の不動産を売却しようとしても、反対している相続人がいる場合、いざという時に売却できない恐れもあるのでご注意ください。
遺産分割協議を先延ばしにしていると、その間に相続人が認知症になってしまうリスクがあります。
相続人が認知症なって判断能力が低下すると、その方の意思確認が困難になるほか遺産分割協議に参加してもその内容が無効とされる可能性もあります。
認知症の相続人がいる場合、相続人の代理人として成年後見人を選任して遺産分割協議や相続手続きを進めなければなりません。
成年後見人の選任申立てには数ヶ月から半年近くかかる場合もあるので、相続手続きが完了するまでに時間がかかってしまいます。
遺産分割協議を行わないまま時間が経過すると、相続人が認知症になるだけではなく相続人の1人が亡くなり、新たな相続が発生する可能性があります。
相続手続きが完了しないうちに相続人の1人が亡くなってしまうと、権利関係者が増えてしまい手続きを進めるのが非常に難しくなってしまいます。
場合によっては、関係性の薄い人物同士が相続人になってしまい、遺産分割協議が難航する恐れもあるのでご注意ください。
遺産が共有状態にある場合、各相続人は自分の持分のみを売却しトラブルに発展する恐れがあります。
遺産分割協議が完了しないまま自分の共有持分のみを売却することは可能ですが、一般に売却先は見つかりにくいことに加え、悪質な共有持分買い取り業者に売却してしまったような場合、いざ売却というタイミングで高値の買戻しを迫られるなどのリスクがあります。
このように、遺産分割協議をしないままでいると、様々なリスクやデメリットがあります。
一方、遺産分割協議はすべての相続で必要なわけではありません。次の章では、遺産分割協議が必要ないケースについて詳しく解説していきます。
遺産分割協議はすべての相続で必要なわけではなく、相続人が1人しかいない場合や被相続人が遺言書を作成していた場合は、遺産分割協議が必要ありません。
遺産分割協議をしなくて良いケースは、主に下記の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
相続人が1人だけの場合、遺産分割協議を行う必要はありません。この場合、相続人が単独で遺産のすべてを相続することになるからです。
例えば、被相続人の配偶者がすでに他界しており子供が1人しかいない場合は、子供1人が相続人となるので遺産分割協議は必要ありません。
ただし、相続人が1人であっても遺産の名義変更手続きや相続税申告は必要な場合があるので、相続手続きに不安を抱えているのであれば相続に詳しい税理士などの専門家に相談するのをおすすめします。
被相続人が法的に有効な遺言書を残していた場合、原則として遺言書の内容に従って相続が行われます。
そのため、遺言書の内容がはっきりしており、相続人全員が遺言書の内容に同意している場合は遺産分割協議を行う必要がありません。
一方、遺言書が遺留分を侵害している場合や相続人全員が同意している場合は、改めて遺産分割協議を行っても問題ありません。
相続人全員が法定相続分に従って遺産を分割することに合意している場合、遺産分割協議を行う必要はありません。
この場合は、法定相続分で相続する旨を記載した「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員で署名・押印すれば遺産の名義変更手続きなどの手続きを進められます。
例えば、相続人が配偶者と子供の場合の法定相続分はそれぞれ2分の1ずつです。
遺産が1億円の預貯金のみであり、配偶者と子供がそれぞれ5,000万円ずつ受け継ぐ形で問題ないケースでは、遺産分割協議書のみの作成で事足ります。
遺産が預貯金や現金のみで、不動産などの資産がない場合、遺産分割協議の手続きを簡略化できる場合があります。
遺産が預貯金や現金しかなく相続人全員が合意しているケースでは、各金融機関に相続人全員の署名入りの「預貯金の払戻申請書」を提出すれば、法定相続分に応じた払い戻しを受けられる場合があります。
関連サイト「預貯金払戻し制度とは?相続時の注意点と手続きを解説」
ただし、預貯金の名義変更手続きに遺産分割協議書の提出が不要かどうかは、手続きする金融機関によって異なる点にご注意ください。
預貯金の名義変更手続きを行う際には、事前に金融機関に問い合わせて必要書類を確認しておきましょう。
先ほどの章で解説した遺産分割協議書をしなくて良いケース以外では、遺産分割協議を行い各相続人の相続分を決定しなければなりません。
遺産分割協議を行う流れは、下記の通りです。
相続人調査や相続財産調査を行うのが難しい場合は、相続に詳しい専門家に相談するのもおすすめです。
遺産分割協議は遺産の名義変更手続きや相続税申告の前に行っておく必要がありますが、万が一話し合いがまとまらない場合は遺産分割調停や審判などを行わなければなりません。
遺産分割協議を行うときの注意点を詳しく見ていきましょう。
相続人や遺産の状況によっては、遺産分割協議がまとまらない場合もあります。
万が一、相続人同士の話し合いでまとまらない場合は、遺産分割調停や審判を行い遺産分割の方法や割合を決定しなければなりません。
遺産分割調停とは、家庭裁判所が仲介役となり、遺産分割の方法や割合を決定する方法です。遺産分割審判とは、調停で合意できなかった場合に行う手続きで、裁判官が最終的に遺産分割内容を決定します。
遺産分割調停や遺産分割審判になってしまうと、解決まで数ヶ月から1年以上かかるケースも多いので、できる限り遺産分割協議で解決することを目指しましょう。
遺産分割協議が長引いた場合でも、相続税の申告・納付期限は原則として延長されません。相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内とされています。
相続税申告は遺産分割協議の内容にしたがって行う必要があるため、申告までに協議が完了していない場合は下記の手順で申告手続きを行わなければなりません。
遺産分割協議を行わないでいると、遺産が共有状態のままになってしまい、活用や売却、相続税申告に支障をきたします。
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遺産分割協議をしないでいると、遺産の名義変更手続きができず、共有状態のままになってしまいます。
そのため、遺産の活用や売却も難しくなりますし、相続人の1人が認知症になったり、亡くなってしまうことでさらに相続手続きが複雑になってしまう恐れもあります。
相続人同士で遺産分割協議を行うのが難しい場合は、相続に詳しい専門家に相談して遺産分割の内容についてアドバイスをもらうこともご検討ください。