相続手続きの中でも重要なステップのひとつが、相続税申告を行う前段階である「相続財産の把握・確定」です。相続財産の内容を正確に洗い出すことが、適正な相続税申告の前提となります。
相続税を少なくするために意図的に財産を申告しなかった場合は論外ですが、実務上問題となるのは、悪意のない“うっかりした把握漏れ”です。近年の税務調査では、このような悪意のない把握漏れであっても非違(申告内容の誤り)と判断され、延滞税や加算税、場合によっては重加算税などのペナルティが課されるケースも見受けられます。
本記事では、相続に強い税理士が多数在籍する杉並・中野相続サポートセンターが、国税庁が公表している最新の「相続税の調査等の状況」を踏まえ、税務調査の現状と、相続財産の計算において特に申告漏れが生じやすい財産について分かりやすく解説します。
目次
相続税の実地調査は、資料情報等に基づき、申告額が過少であると想定される事案や、本来申告義務があるにもかかわらず無申告となっている事案などを対象に行われます。
国税庁が公表した令和6事務年度の調査結果によると、相続税に関する実地調査件数は令和5年度比111.2%とコロナ禍以降の増加基調が続いており、これに加えて電話や文書による「簡易な接触」も117.0%と大きく増加しています。その結果、相続税申告後に何らかの形で税務署から確認を受ける可能性は以前にも増して高まっています。
相続税の申告が行われた案件のうち、一定割合で申告内容の非違(誤り)が指摘され、修正申告や追徴課税につながっている状況は現在も変わっていません。令和6事務年度においても、実地調査1件当たりの申告漏れ課税価格や追徴税額は高水準で推移しており、重加算税課税の対象となった額は444億円と令和5年度比118.4%となり、金額ベースでの影響は決して小さくありません。
一方で、対面による実地調査だけでなく、簡易な接触を通じて申告内容の見直しが求められるケースが増えている点は、近年の大きな特徴です。簡易な接触であっても、申告漏れ等の非違が認められれば、修正申告や追加納税が必要となるため注意が必要です。
関連サイト国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」
最新の調査結果においても、申告漏れが多い財産の上位は「現金・預貯金等」「土地」「有価証券」といった従来型の資産が中心です。特に現金・預貯金については、複数口座の把握漏れや名義預金の問題などが指摘されやすい傾向にあります。
また、相続財産は国内に限られません。国税庁は近年、国外財産に対する把握体制を強化しており、調査結果からも海外資産に係る申告漏れについても重点的に調査が行われていることが読み取れます。そのため、海外財産の相続については引き続き注意が必要であることが分かります。
ネット専業の銀行や証券会社、電子マネー、QRコード決済サービスは、利便性の高さから幅広い世代に普及しています。近年では高齢者の利用も進んでおり、相続発生時点で複数のネット完結型サービスを利用しているケースも珍しくありません。
これらの口座やサービスは、通帳や取引報告書がないことも多く、取引の大半がオンライン上で完結するため、本人が情報を共有していない場合、家族が存在に気付かないまま相続が発生してしまうおそれがあります。その結果、相続財産から漏れてしまうケースが多く見受けられます。
また、一定期間利用がないからといって金融機関側から連絡があるとは限らず、被相続人の死亡後も口座がそのまま残り、後日の税務調査で初めて把握されることもあります。
また、Suicaや楽天Edyなどの電子マネー、PayPayやLINE Payといった決済サービスの残高についても、金額の多少にかかわらず相続財産として申告が必要です。
タンス預金や家族の名義預金同様、これらのデジタル資産についても目配りしておいた方がよいでしょう。
デジタル資産の中でも、特に注意が必要なのが暗号資産やFX(外国為替証拠金)取引です。これらは価格変動が大きく、レバレッジをかけた取引も多いため、取引履歴や評価額の算定が複雑になりがちな点が特徴です。
相続税申告後に取引の存在が判明した場合、含み損がある口座については、相続人が決済手続きを行ったうえで「マイナスの財産」として修正申告を行う必要があります。一方で、利益が出ている場合には、修正申告と追加納税が生じる可能性があります。
デジタル資産の申告漏れを防ぐためには、親世代・子世代の双方がネット完結型取引の有無や概要を共有しておくことが有効です。これらのサービスでは、通帳や印鑑に代わり、IDやパスワードが極めて重要な情報となります。
生前に利用状況を整理し、必要な情報の所在を家族に伝えておくとともに、セキュリティ面を考慮してIDとパスワードを分けて管理するなどの対策を講じておくとよいでしょう。
残高が少額、あるいは一時的に0円になっている口座だから問題ないと考えてしまう方も多いかもしれません。しかし、残高の多寡にかかわらず、解約されていない口座は相続財産として申告対象になります。
意図的でなくとも申告から漏れていた場合、税務調査により非違を指摘され、加算税等が課される可能性がある点には注意が必要です。
生前に本人が口座を解約する場合、通帳と届出印があれば比較的簡単に手続きを行うことができます。紛失している場合でも、本人確認のうえ再発行等の対応が可能です。
一方、相続発生後に相続人が口座解約を行う場合には、残高0円の口座であっても、戸籍謄本や相続関係書類、相続人全員の署名押印など、煩雑な手続きが必要となります。金融機関によっては遺産分割協議書の提出を求められることもあります。
クレジットカードの解約についても、死後に行う場合は銀行口座と同様に多くの手間がかかります。申告漏れ防止と将来の手続負担軽減の観点から、利用していない口座やクレジットカード類は生前に整理しておくことが望ましいでしょう。
国外財産調書制度や共通報告基準(CRS)に基づく金融口座情報の自動的情報交換制度の運用により、国税庁は納税者の海外資産について把握を進めてきました。これらの制度は現在も継続的に活用されており、海外資産を取り巻く調査環境は年々厳しさを増しています。
令和6事務年度の調査結果でも、海外資産に関する実地調査件数は過去最高(1359件 令和5年度比143.5%)となったことはもちろん、海外資産に係る申告漏れ等の非違件数も過去最高(209件 同124.4%)となり、国税庁がこの海外資産に注目していることがうかがえます。
関連サイト国税庁「共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CRSコーナー」)」
海外赴任や留学などをきっかけに海外の銀行口座を開設し、そのまま保有している方も少なくありません。残高が少額であったとしても、こうした海外口座は相続財産として申告が必要です。
一方で、当サイトの「国際相続サポート」でも紹介しているように、相続発生後に海外口座を解約する場合、言語の問題や各国独自の手続きにより、国内口座と比べて多大な時間と労力を要します。
米国では口座をはじめとする相続人の財産に対し「プロベート(検認)」手続きが課され、裁判所の任命を受けた弁護士が代理人となり、遺言書有無の確認から相続人の特定、債務関連の処理を経たのち、海外での納税手続きに臨みます。
これら一連の手続きを経て納税まで完了するまでには1年から3年程度かかってしまうこともあります。遺された人の負担感を考えると、使わない海外口座は生前に処理しておくことが大事であることがお分かりいただけると思います。
近年の相続税調査では、実地調査に加えて電話等による簡易な接触も増加しており、調査件数全体としては高水準で推移しています。また、申告漏れ等の非違が指摘された場合の追徴税額も1件当たり867万円に上るなど高額化する傾向が続いています。
生前にできる相続対策のひとつとして、税理士などの専門家に相談し、相続財産の洗い出しや整理を行っておくことは、申告漏れ防止に非常に有効です。日頃から専門家と連携しておくことで、相続発生後の手続きも円滑に進めることができます。
杉並・中野相続サポートセンターでは、相続税申告をはじめ、生前対策、遺言書作成、遺産分割、国際相続まで、幅広い相続相談をお受けしています。
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