相続手続きの際には、遺産分割協議書を作成し相続人全員で署名・押印します。押印時には実印を使用することが多いため、相続手続きでは印鑑証明書の提出を求められることも多くあります。
印鑑証明書の提出先によっては有効期限が設定されていることもあるので、ご注意ください。
また、印鑑証明書を発行するには実印登録をすませておく必要があるので、まだの人は自治体役場にて手続きをすませておきましょう。
本記事では、相続手続きで印鑑証明書の用意が必要になるケースや有効期限、注意点について解説します。
目次
相続が発生すると、相続人全員で遺産分割協議書を作成、署名・押印をします。
実印で押印することが多いため、相続手続きの際には遺産分割協議書だけでなく印鑑証明書の提出を求められることも多くあります。
相続手続き時に印鑑証明書が必要になるケースは、主に下記の通りです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
被相続人の口座にある預貯金を払い戻す際にも、印鑑証明書が必要です。金融機関は、相続人の身分や意思を確認するために遺産分割協議書の提出を求めるからです。
そして、遺産分割協議書には相続人が実印で押印するため、印鑑証明書も併せて必要となります。
被相続人が保有していた株式や投資信託を相続人の名義に変更する場合、証券会社が印鑑証明書を求める場合があります。
こちらも預貯金の払い戻し手続きと同様に、遺産分割協議書に押印された実印が本当に本人のものか確認するためです。
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不動産の名義を被相続人から相続人に変更する相続登記でも、印鑑証明書を提出しなければなりません。
ただし、相続人が1人の場合は遺産分割協議書の作成自体が不要なため、印鑑証明書の提出も必要ありません。
相続税の申告書を提出する際にも、印鑑証明書が求められる場合があります。相続人が複数人いて遺産分割協議書を提出する際には、印鑑証明書も用意しておきましょう。
なお、相続税申告では原則として原本還付してもらえないため、他の相続手続きで使用するものとは別に印鑑証明書を用意しておいた方がよいでしょう。
被相続人が契約者もしくは被保険者となっている生命保険の保険金を受け取る際にも、印鑑証明書の提出を求められる場合があります。
特に、受取人が複数人指定されている場合はもちろん、死亡保険金受取人が単に「法定相続人」とだけ指定されている場合は「代表受取人選任届」が必要となり、受取人個々の本人確認を行う必要があるため印鑑証明書を提出しなければなりません。
相続人が自分の相続分を他の相続人に譲渡する場合や放棄する場合も、印鑑証明書を用意しなければなりません。
家庭裁判所で行う法的な相続放棄(民法938条)と異なり、相続分の譲渡や相続分の放棄は遺産分割協議書にて記載する必要があるからです。
そして、遺産分割協議書には実印で押印する必要があるため、印鑑証明書も併せて必要となります。
印鑑証明書そのものには、法律上の有効期限はありませんが、提出先によっては発行から3ヶ月以内のものなど有効期限を設定している場合もあります。
手続きごとの印鑑証明書の有効期限は、主に下記の通りです。
提出先 | 有効期限 |
---|---|
預貯金の払い戻し手続き | 3ヶ月以内(金融機関によって異なる場合がある) |
株式・投資信託の名義変更 | 3ヶ月以内(証券会社によって異なる場合がある) |
相続登記 | 有効期限はない |
相続税申告 | 有効期限はない |
生命保険金の受け取り | 3ヶ月以内(生命保険会社によって異なる場合がある) |
手続き先によって、独自に有効期限を設定している場合もあるので、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
印鑑証明書は、自治体役場にて取得できます。取得方法および必要書類は、下記の通りです。
取得できる人 | 誰でも可能(印鑑登録証があれば代理人でも取得できる) |
---|---|
取得先 | 本人の住所地を管轄する自治体役場 |
取得費用 | 1通300円程度(市役所窓口の場合) |
必要書類 |
|
関連サイト杉並区「印鑑証明書の窓口申請」
なお、本人であればマイナンバーカードを使用してコンビニにて印鑑証明書を取得できる場合もあります。(一部地域では対応していないので、ご注意ください)
関連サイト杉並区「印鑑登録証明書をコンビニ交付サービスで取得するとき」
相続人が海外に住んでいる場合や未成年者が相続人になった場合は、印鑑証明書を用意できないのでご注意ください。
印鑑証明書を用意できないケースは、主に下記の通りです。
それぞれ対処法とともに詳しく解説していきます。
海外在住の相続人は日本国内の役所で印鑑証明書を取得できないため、在外公館でのサイン証明を行う必要があります。
関連サイト法務省「外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の取扱いについて 」
サイン証明とは在外公館が「この署名は本人のものである」と証明する書類で、現地の日本大使館や領事館で手続きする必要があります。
相続人が未成年者の場合、実印登録自体を行えないので印鑑証明書も取得できません。相続人が未成年者の場合、親権者または法定代理人の印鑑証明書を代わりに使用します。
また、親権者も相続人となっているケースで特別代理人を選任した場合は、特別代理人の印鑑証明書を使用して相続手続きを進めます。
刑務所に収監・服役している相続人は新規に印鑑証明書を登録できないので、下記の流れで印鑑証明書の代わりになるものを取得します。
相続人の一部が遺産分割協議書に実印を押すことや印鑑証明書の提出を拒む場合、手続きを進められなくなってしまいます。
この場合は、下記の方法で対処しましょう。
印鑑証明書の提出を拒む相続人が不信感を持っている場合、話し合いで解決できる可能性があります。
当事者同士で解決が難しいときには、専門家に依頼しても良いでしょう。それでも話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所にて遺産分割調停を行う必要があります。
相続手続きで印鑑証明書を用意する際には、事前に実印登録をすませておく必要があります。他にも、実印を紛失してしまった場合は、廃止手続きと再登録の手続きをしなければなりません。それぞれ詳しく解説していきます。
印鑑証明書を取得するためには、実印として登録された印鑑が必要です。
実印登録がされていない場合、まず自治体役場にて印鑑登録を行う必要があります。登録の際には、実印そのものに加え、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を持参しましょう。
関連記事杉並区「印鑑登録について」
実印を紛失してしまった場合、速やかに役所で印鑑登録の廃止手続きを行う必要があります。紛失した実印が悪用されるリスクを防ぐため、実印を押す機会が当面ないとしてもできるだけ早く手続きしておきましょう。
廃止手続き後、新しい実印を用意し、再登録を行います。この際も、実印そのものと本人確認書類を用意しなければなりません。
また、再登録の手続きには通常数日かかるため、早めに手続きしておきましょう。
関連サイト杉並区「印鑑登録証、印鑑登録の印を紛失したとき」
相続が発生すると、印鑑証明書など様々な書類を収集しなければなりませんし、相続税の申告書も作成しなければなりません。
加えて、相続手続きの中には相続税申告のように、期限が設定されているものもあります。
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相続人が複数人いて遺産分割協議書を作成した場合、相続手続き時には印鑑証明書の提出も求められます。遺産分割協議書に押されている実印が本当に本人のものか確認する必要があるからです。
金融機関や証券会社、生命保険会社に印鑑証明書を提出する場合、有効期限が設定されていることもあるのでご注意ください。
相続手続きの必要書類を収集するのが難しい場合や、どんな順番で手続きすれば良いかわからない場合は、相続の専門家に相談することもおすすめします。