親が借金を遺して亡くなった場合は、相続放棄しなければ借金の返済義務を相続してしまいます。
一方で、相続放棄は申立てが必要であり、期限を過ぎてしまう、遺産を使用してしまうと相続放棄が認められなくなってしまいます。
親に借金があり相続放棄を考えているのであれば、期限までに申立てを行う、相続放棄について専門家に相談することも検討しましょう。
本記事では、親の借金を相続放棄できないケースや受け継がずにすむ方法を詳しく解説していきます。
目次
相続放棄すれば、親が遺した借金を受け継がずにすみます。相続放棄とは、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続しなくなる手続きです。
相続放棄は希望するだけで手続きが完了するわけではなく、期限内に家庭裁判所への申立てをしなければなりません。
また、相続人の行動によっては相続放棄の申立てをしても認められない恐れがあるので注意しなければなりません。
次の章では、相続放棄できないケースについて詳しく見ていきましょう。
遺産を使用、処分してしまうと相続する意思があるとされ、相続放棄が認められなくなってしまいます。親の借金を相続放棄できないケースは、主に下記の4つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続人が相続財産の一部を処分した場合や相続財産を隠匿した、私的に利用した場合、相続放棄が認められなくなってしまいます。遺産の使用、処分は相続する意思があると判断されてしまうからです。
遺産の使用、処分の判断は専門的な知識が必要な場合もあるので、相続放棄する場合は自己判断で遺産の処分をしないようにしましょう。
例えば、実家の片付けや車の処分、被相続人のスマホの処分なども法定単純承認にあたる可能性があります。
相続放棄をする場合は、手続きだけでなく遺産の取り扱いについても専門家に相談しながら行うのがおすすめです。
相続放棄の熟慮期間が経過していると、相続放棄できなくなってしまいます。相続放棄には、自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内に申立てをしなければならないと期限が設定されているからです。
相続放棄するかを判断するためには、相続財産調査を行い親の借金の金額や他の遺産について調べる必要があります。
相続放棄の期限に間に合うようにするためにも、親が亡くなったら速やかに相続財産調査を始めましょう。
相続放棄を行うためには、家庭裁判所に提出する書類が必要です。
例えば、相続放棄申述書、被相続人の戸籍謄本、相続人の戸籍抄本などが必要なほか、相続放棄手続きが孫や親、兄弟姉妹に及ぶ場合は追加の提出書類も必要になります。
これらの書類が揃っていない場合、相続放棄の申立ては受理されることはありません。申立て後に書類の不備があると、家庭裁判所から連絡が来ます。
ただし、連絡を放置していると最終的には相続放棄が却下され申立てが認められなくなってしまいます。
関連サイト「相続放棄の申述に必要な書類」
相続放棄は、相続が発生した後に行う手続きであり、被相続人が亡くなる前に行うことはできません。
相続が発生していない状況では、そもそも相続人としての権利や義務が存在しないため、相続開始前に相続放棄を宣言してもそれは無効ですし、相続放棄の手続き自体も無意味となるからです。
先ほど紹介した相続放棄できない状態を回避するには、親の遺産を勝手に使用、処分しないなどの対策が必要となります。
具体的には、下記を意識しましょう。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続が発生した後、被相続人(親)の遺産を勝手に使用したり、処分したりしないようにしましょう。相続財産の一部でも使用、処分した場合、「法定単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなるからです。
「法定単純承認」とみなされる行為には、故人の不動産・現預金といったプラスの相続財産の処分以外にも、相続財産から故人の債務を返済する行為なども含まれる可能性があります。
相続放棄を検討している場合は、被相続人の遺産の取り扱いに細心の注意を払いましょう。
相続放棄を考えている場合は、できるだけ早く相続人と相続財産調査を行いましょう。
相続人調査は、誰が相続人であるかを確定する作業です。相続財産調査は、被相続人が所有していた財産や負債の全貌を把握するための作業です。
相続人調査を行うことにより、誰が相続放棄の手続きをしなければならないかがはっきりしますし、相続財産調査を行えば相続放棄すべきかの判断もできるからです。
相続放棄できない状況を回避したいのであれば、手続きを司法書士や弁護士などの専門家に依頼しましょう。
相続放棄は申立てに必要な書類の数や種類も多いですし、本記事で解説してきたように遺産の取り扱いも慎重にしなければならないからです。
自己判断で相続放棄の手続きを進めてしまい、後から受理されない状況になったときのデメリットは非常に大きいです。
亡くなった親に借金があり戸惑う気持ちもあるかもしれませんが、専門家への依頼費用がかかってでも相続放棄の手続きを依頼することをご検討ください。
また、専門家に相談することで相続放棄以外の選択肢が見つかる可能性もあります。
相続放棄を行うためには、被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に手続きを完了する必要があります。
しかし、相続財産調査が完了しないなどの理由で熟慮期間内に相続放棄の判断が難しい場合もあるでしょう。
そのような場合には、家庭裁判所に対して熟慮期間の伸長を申立てることが可能です。伸長申立てが認められれば、追加の期間が与えられ、相続財産の調査や相続放棄の手続きを進められます。
熟慮期間の伸長申立て方法および必要書類は、下記の通りです。
手続きする人 | 相続放棄の期限を延ばしたい人 |
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手続き先 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
費用 |
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必要書類 |
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関連サイト裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」
万が一、相続放棄の申立てが認められず親の借金を相続してしまった場合は、相続放棄に精通した専門家に相談してみることを強くおすすめします。
相続放棄の熟慮期間や遺産の取り扱いについて正しかったか、確認してもらえるからです。
また、親の借金を相続してしまった場合、返済が難しければ債務整理も検討しましょう。それぞれ詳しく解説していきます。
まずは、相続放棄や相続問題に詳しい専門家に相談しましょう。弁護士や司法書士に相談すれば、下記を確認してもらえます。
例えば、熟慮期間は「自分が相続人であることを知ったときから3ヶ月以内」であり、何らかの理由で相続発生を知るのが遅れた場合は、熟慮期間の起算点もずれます。
このように個々の事情によっては、一見相続放棄が認められないようなケースでも相続放棄が受理される可能性が残されている場合もあります。
相続放棄が認められず親の借金を相続してしまった場合、自力返済が可能な金額であれば返済していくことも考えましょう。
債権者が貸し倒れを避けるために、返済スケジュールの調整に応じてくれる可能性もあります。
親の借金を相続放棄できずに受け継ぎ、自分で返済していくことも難しい場合は債務整理しなければならない可能性があります。
債務整理とは、借金の返済負担を軽減する手続きであり「任意整理」や「個人再生」「自己破産」などいくつかの種類に分けられます。
どの債務整理を選択できるかは、借金問題に精通した司法書士や弁護士であればアドバイスできるので、まずは専門家に相談してみましょう。
親の借金を相続しないようにするには、相続放棄の申立てをしなければなりません。ただし、相続放棄は原則として撤回できないので申立て前には相続財産調査をして、相続放棄をすべきか判断する必要があります。
相続財産調査に漏れがあると、親の借金を誤って相続してしまう、遺産があるのに相続放棄してしまう恐れがあるのでご注意ください。
相続財産調査などの各種手続きは「杉並・中野相続サポートセンター」までご相談ください。
当サポートセンターでは開業して30年以来、2,500件を超える相続の相談をお受けしてきました。弁護士・司法書士などの専門家と協力体制を取りながら、ご相談者様の相続手続きをワンストップでサポート可能です。
杉並・中野相続サポートセンターは西荻窪駅・徒歩1分に事務所を構え、下記エリアを中心とした地域密着の相続相談を承っています。ぜひご相談ください。
親の借金を相続放棄できないケースとしては、法定単純承認が成立している、熟慮期間が過ぎてしまったなどが考えられます。
相続放棄できないと亡くなった親の借金の返済義務を受け継いでしまうので、相続放棄の期限までに申立て手続きを行うようにしましょう。
万が一、相続放棄できなかった場合は、相続放棄や借金問題に精通した専門家に相談してみるのがおすすめです。