相続した空き家を売却する際、一定の要件を満たせば「相続空き家の3,000万円特別控除」を受けられる可能性があります。
ただし、この特例を適用するには、確定申告時に「被相続人居住用家屋等確認書」の添付が必要です。
被相続人居住用家屋等確認書は、売却した家屋や敷地の所在地を管轄する市区町村へ申請して取得します。
本記事では、被相続人居住用家屋等確認書の概要や取得方法、必要書類、申請から交付までの流れを解説します。
目次
被相続人居住用家屋等確認書とは、相続した空き家を売却する際に「相続空き家の3,000万円特別控除」の適用を受けるため、市区町村から交付を受ける書類です。
被相続人居住用家屋等確認書の交付にあたって、市区町村は以下のような事項を確認します。
ただし、被相続人居住用家屋等確認書が交付されたからといって、必ず相続空き家の3,000万円特別控除が適用されるわけではありません。
最終的に特例の適用可否を判断するのは税務署であることを理解しておきましょう。
相続空き家の3,000万円特別控除とは、相続または遺贈により取得した被相続人の居住用家屋やその敷地を売却した場合に、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。
関連サイト国税庁「相続空き家の3,000万円の特別控除」
主な適用要件は以下の通りです。
令和6年1月1日以降の譲渡では、相続人が3人以上いる場合、控除額は1人あたり最高2,000万円となります。
はい、一定の要件を満たせば適用できます。当サポートセンターでも、被相続人が相続開始直前に老人ホーム等に入所していたケースのご相談をよくいただきます。この場合、1.被相続人が介護保険法上の要介護認定等を受けていたこと、2.入所前まで実際にその家屋に居住していたこと、3.入所後から相続開始まで他の人が居住しておらず事業・貸付にも使われていなかったこと、の3点が確認できれば、対象家屋として認められます。
一方、認められないケースの典型例としては、1の要件に関して要介護認定等を受けておらず自己都合で施設に入居していた場合や、3の要件に関して被相続人の入所後に相続人が実家に移り住んでいた場合、あるいは入所後に家屋を賃貸に出していた場合などが挙げられます。当サポートセンターでも、入所の経緯や施設入所後の家屋の利用状況を丁寧に確認したうえで適用可否をご判断いただくようご案内しています。要件の充足が微妙なケースもありますので、早めにご相談ください。
令和6年1月1日以降の譲渡の場合、相続人が3人以上のときは、1人あたりの控除額の上限が2,000万円に引き下げられます。各相続人がそれぞれ確定申告で控除を受けることはできますが、1人2,000万円が上限になる点にご注意ください。なお、相続人が2人以下の場合は従来通り1人最高3,000万円です。
どちらが有利かは、取得費・売却価格・相続税額などによって異なります。当サポートセンターでは、両特例の適用要件と試算を比較したうえでご提案しています。なお、これら2つの特例は同一の譲渡資産について重複して適用することができませんので、必ずどちらか一方を選択することになります。特に取得費加算の特例には売却期限があり(相続開始日の翌日から相続税の申告期限後3年以内)、期限を過ぎると選択肢がなくなってしまうため、売却のタイミングも含めて早めにご相談いただくことをお勧めしています。
被相続人居住用家屋等確認書は、売却した空き家や敷地が所在する市区町村で取得します。相続人の住所地や、申告を行う税務署ではない点に注意が必要です。取得方法は、以下の通りです。
| 申請者 | 相続空き家の特例の適用を受けたい相続人 |
|---|---|
| 申請先 | 売却した家屋・敷地の所在地を管轄する市区町村 |
市区町村によって、窓口、郵送、電子申請など対応方法が異なります。
また、必要書類の細部も自治体ごとに異なる場合があるため、申請前に該当市区町村のホームページや窓口で確認しておくと安心です。
被相続人居住用家屋等確認書を申請する際には、被相続人が空き家に住んでいたことを証明する書類や、不動産に関する書類などが必要となります。
被相続人居住用家屋等確認書を申請する際は、主に次のような書類を準備します。
このほか、電気・水道・ガスの使用中止日が分かる書類、空き家であったことを確認できる書類や、老人ホーム等に入所していた場合の関係書類などを求められることがあります。
関連サイト法務省・法務局「登記事項証明書(土地・建物),地図・図面証明書を取得したい方」
被相続人居住用家屋等確認申請書には、売却方法に応じて複数の様式があります。どの様式を使うかを誤ると、再提出が必要になることもあるため注意しましょう。
| 様式 | 使用シーン |
|---|---|
| 様式1-1 | 相続した家屋を耐震改修したうえで、家屋または家屋と敷地を売却する場合 |
| 様式1-2 | 相続した家屋を取り壊し、敷地のみを売却する場合 |
| 様式1-3 | 令和6年1月1日以降の譲渡について、売却後に買主側が譲渡日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行う場合 |
はい、この場合は様式1-2を使用し、家屋の取壊し・除却を証する書類(滅失登記の登記事項証明書や取壊し業者の証明書など)が必要になります。当サポートセンターでサポートした案件でも、更地売却のケースでは取壊し完了後すみやかに必要書類を整えて申請の準備を進めるよう案内しています。確定申告の期限を逆算しながら、取壊しと売却のスケジュールを事前に整理しておくとスムーズです。
被相続人居住用家屋等確認書は、確定申告の直前に慌てて取得しようとすると、書類不足や審査期間の関係で申告期限に間に合わない恐れがあります。
申請から交付までの大まかな流れは、次の通りです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
まずは、申請に必要となる以下のような書類を集めましょう。
他にも、相続開始後から売却までの間に、その家屋が事業用・貸付用・居住用として使われていなかったことを確認するため、電気・ガス・水道の使用中止が分かる書類などが必要になることもあります。
必要書類がそろったら、売却した家屋または敷地の所在地を管轄する市区町村へ申請します。申請先は、相続人の住所地ではないのでご注意ください。
申請方法は、窓口への持参が基本ですが、自治体によっては郵送や電子申請に対応している場合もあります。
申請後、市区町村によって提出書類の内容が審査されます。審査では、以下のようなことが確認されます。
書類に不足や不備がある場合は、追加資料の提出や訂正を求められるので対応しましょう。
審査の結果、要件を確認できた場合、市区町村から被相続人居住用家屋等確認書が交付されます。
交付された確認書は、相続空き家の3,000万円特別控除を受けるための確定申告書に添付して、所轄税務署へ提出します。
関連サイト国税庁「所得税の確定申告」
自治体や書類の状況によって異なりますが、当サポートセンターでお手伝いした案件では、書類が揃った状態で申請してから交付まで2〜4週間程度かかるケースが多い印象です。書類に不備があると補正(追加資料の提出や訂正)を求められ、さらに時間がかかることもあります。確定申告の期限(原則として譲渡した年の翌年3月15日)に間に合わせるためにも、売買契約締結後はできるだけ早めに動き出すことをお勧めしています。
被相続人居住用家屋等確認書は、相続空き家の3,000万円特別控除を受ける際に必要となる書類ですが、申請時期や手数料、確定申告での提出方法について迷う方も少なくありません。
ここでは、実務上よくある質問について解説します。
被相続人居住用家屋等確認書の発行手数料は、多くの市区町村で無料とされています。
ただし、手数料の有無は自治体によって異なる可能性があるため、申請前に家屋所在地を管轄する市区町村へ確認しておくと安心です。
被相続人居住用家屋等確認書は、原則として売買契約の締結後、または譲渡後に申請します。
売却前の段階では、譲渡日や売却先、売却対象となる家屋・敷地の内容が確定していないため、事前申請はできません。
被相続人居住用家屋等確認書には、法律上、明確な有効期限が定められているわけではありません。
ただし、実務上は、交付を受けた確認書をその譲渡に係る確定申告で使用することが前提となっています。
令和6年1月1日以降の譲渡については、マンションなどの区分所有建物は、相続空き家の3,000万円特別控除の対象外です。
相続空き家の3,000万円特別控除は、もともと老朽化した一戸建ての空き家の発生を抑制する趣旨の制度であり、区分所有建物は対象から除かれています。
確定申告で被相続人居住用家屋等確認書を提出する場合、原則として市区町村から交付された確認書を添付する必要があります。
紙で申告する場合に原本の提出が必要か、コピーで足りるかは、申告方法や税務署の確認状況によって扱いが異なる可能性があるので事前に確認しておくとよいでしょう。
相続空き家の3,000万円特別控除は適用要件が複雑であり、自分で適用可否を判断することが難しい場合もあるでしょう。
そのようなケースでは、不動産の相続に詳しい専門家に相談するのがおすすめです。
相続空き家の3,000万円特別控除の適用可否を確認したい場合や、確定申告を依頼したい方は、相続に強い税理士や専門家が多数在籍し、実績豊富な「杉並・中野相続サポートセンター」までご相談ください。
杉並・中野相続サポートセンターは西荻窪駅・徒歩1分に事務所を構え、下記エリアを中心とした地域密着の相続相談を承っています。ぜひご相談ください。
被相続人居住用家屋等確認書は、相続した空き家について3,000万円特別控除を受けるために必要となる重要な書類です。
申請先は相続人の住所地ではなく、売却した家屋や敷地が所在する市区町村です。
申請時は審査が行われ、時間がかかることもありますし、詳しい状況を確認するため追加の書類提出を求められることもあります。
確定申告の期限に間に合わせるためにも、早めに被相続人居住用家屋等確認書を申請することをおすすめします。
この記事の監修者
監修者
廣瀬 一俊