2024年からスタートした新NISA(少額投資非課税制度)は、従来の制度よりも非課税枠が拡充され、長期的な資産形成に適した制度として注目されています。
投資初心者の方はもちろん、将来の相続や資産承継を見据える高齢世代にとっても、新NISAは検討価値のある制度といえるでしょう。
本記事では、新NISAの制度概要を整理したうえで、相続税対策として活用する際のメリット・デメリット、注意点について税理士の視点から解説します。
目次
2024年からスタートした「新NISA(少額投資非課税制度)」は、個人の資産形成を後押しする目的で、従来のNISA制度を大幅に見直した制度です。最大の特徴は、非課税保有限度額の拡充と制度の恒久化にあります。
関連サイトNISA特設ウェブサイト「NISAを知る」
旧制度では制度ごとに利用期限が設けられていましたが、新NISAでは恒久制度として位置づけられ、長期的な視点での資産形成が可能となりました。
新NISAの非課税保有限度額は、生涯合計で1,800万円とされており、この枠内であれば売却によって空いた枠を再利用することもできます。
新NISAと旧NISA(一般NISA・つみたてNISA)には、以下のような違いがあります。
旧NISA制度では各制度に有効期限が設けられていましたが、新NISAでは制度が恒久化され、継続的な利用が可能となりました。
また、新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用でき、年間360万円、非課税保有限度額1,800万円まで投資可能です。保有資産を売却した後は、この枠を再利用できる点も旧制度との大きな違いです。
関連サイト国税庁「No.1535NISA制度」
新NISA口座を開設できるのは、口座開設年の1月1日時点で18歳以上の日本居住者です。現行制度では未成年者は新NISA口座を開設することができません。
なお、2026年度税制改正大綱において、未成年者向けの非課税投資制度(いわゆる「こどもNISA(仮称)」)の創設が検討事項として明記されていますが、導入時期や制度内容は現時点では確定していません。
新NISA口座は証券会社のほか、銀行等でも開設可能です。相続が発生した場合、基本的な手続きの流れは同じですが、提出書類や手続き期間は異なる場合があります。
各金融機関のウェブサイトで「相続手続き」や「被相続人口座の手続き」をご確認いただくか、直接問い合わせることをお勧めします。積立NISAと新NISAでも手続きが異なる場合があるため、事前確認が重要です。
被相続人(亡くなった方)が新NISA口座に保有していた金融商品は、相続開始日(死亡日)の時価で相続税評価額が決定されます。新NISA制度の非課税措置は相続発生と同時に終了し、口座は閉鎖扱いとなります。
相続人は、払い出された資産を相続税の課税対象として申告する必要があります。
通常は、金融機関(証券会社など)が相続開始日時点の時価を証明する書類を発行します。上場株式の場合は、相続開始日の終値を用いるのが一般的です。投資信託の場合は、相続開始日の基準価額が使用されます。相続税申告に用いるため、必ず金融機関から正式な資料を取得しましょう。
新NISA口座は名義変更できません。相続人は、原則として被相続人と同じ金融機関に「特定口座(または一般口座)」を開設し、そこへ資産を移管する手続きを行います。この時、他社の口座へ直接移すことはできないため注意しましょう。
相続開始後の一般的な流れは次のとおりです。
金融機関ごとに必要書類が異なるため、事前に確認しておきましょう。
相続開始時点の正確な時価確認、口座別管理、申告漏れ防止が重要です。申告ミスを防ぐため、税理士への依頼を強くお勧めします。
新NISA口座内の資産は、原則として遺産分割協議によって分割方法を決定します。協議内容に基づき、金融機関の指示に従って各相続人の課税口座へ払い出されます。
遺産分割協議がまとまらない場合には、法定相続分に基づいて分配されることもあります。具体的な対応については、金融機関へ事前に相談することをおすすめします。
どちらの枠であっても相続手続きの基本的な流れに違いはありません。ただし、投資信託と株式(含むETF)等では、相続開始時点の時価の算定方法が異なるため、評価額の計算方法に若干の違いがあります。そのため、正確な評価額については、金融機関と連携して確認するのがよいでしょう。
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原則として、被相続人が当該金融商品を取得した際の取得価額を引き継ぎます。相続開始時の時価が新たな取得価額になるわけではありません。
そのため、被相続人の保有期間中に発生していた含み益は、相続人が売却した際に譲渡所得として課税される可能性があります。
ただし、相続開始から3年以内に売却した場合は、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」が適用できるケースもあります。
関連サイト国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
新NISAは、単なる資産形成制度にとどまらず、生前贈与と組み合わせた相続税対策の一環としても注目されています。主なメリットは以下のとおりです。
新NISA口座内で得られる売却益や配当金は非課税となるため、課税口座に比べて効率的に資産を増やせる可能性があります。
また、子や孫が新NISA口座を開設し、親や祖父母が資金を贈与することで、贈与された資金による運用益を次世代に移転することも可能です。
ただし、贈与税の非課税枠や、死亡前7年以内の贈与が相続財産に持ち戻される点などには十分な注意が必要です。
新NISAは所得税・住民税に対する売買益等の非課税措置です。相続対策を検討する際、一般的には優先順位は高くありません。納税資金確保や評価額圧縮の手法と併用することが重要です。
相続税の評価額はどちらの口座でも相続開始時点の時価で決まるため、直接的な相続税対策にはなりません。新NISAは運用益非課税、特定口座は流動性確保といったような役割分担で考えるのが現実的です。
一方で、新NISAを相続税対策として活用する際には、次のようなデメリットも存在します。
新NISA口座内の金融資産は、口座名義人が死亡した時点で非課税扱いが終了し、相続人の課税口座へ払い出されます。相続後も非課税で引き継ぐことはできません。
なお、相続後に売却した場合の取得価額は、原則として被相続人が取得した際の価額を引き継ぎます。そのため、被相続人の保有期間中に発生していた含み益は、相続人が売却した際に譲渡所得として課税される可能性があります。
関連サイト国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
また、新NISA口座内の資産も相続税の課税対象であり、相続開始時点の時価で評価されます。資産状況によっては、相続税負担が重くなる場合もあります。
新NISAは使い方次第で、間接的に相続対策に役立てることができます。詳しくご紹介していきます。
非課税で運用益を積み上げることで、課税口座よりも効率的な資産形成が期待できます。たとえば、つみたて投資枠を利用してクレジットカードの自動引落による長期運用を行えば、手間をかけずに資産を増やせる可能性があります。
親や祖父母が子や孫へ資金を贈与し、新NISA口座で運用する方法です。贈与税の基礎控除(年間110万円)を活用すれば、税負担を抑えながら資産移転を進めることができます。
他の相続財産と合算して基礎控除内かどうかを判断します。新NISAだけで判断しないようにしましょう。
新NISAで相続税対策をする場合、以下のような点に注意しましょう。
新NISAで資産運用するための資金を生前贈与する場合、金額によっては贈与税がかかるのでご注意ください。贈与税には年間110万円の基礎控除が用意されており、贈与財産が基礎控除を上回ると贈与税がかかります。
例えば、新NISAの年間投資の上限額である360万円を生前贈与すると、贈与税がかかります。なお、配偶者には贈与税の配偶者控除が用意されていますが、こちらの制度は居住用不動産もしくは居住用不動産の取得費用を贈与した場合のみ適用できるものです。
原則として、年間110万円を超える資金移動は贈与税の対象となります。贈与税の「配偶者控除(いわゆるおしどり贈与)」は居住用不動産またはその取得資金に限られるため、新NISAの投資資金には適用されません。
一方、相続により配偶者が新NISA資産を取得する場合は、「配偶者の税額軽減」によって、実質的に相続税がかからないケースが多くあります。
贈与税の基礎控除は年間110万円です。この範囲内であれば贈与税はかかりませんが、毎年贈与する場合でも、贈与契約の成立と資金移動の記録を残すことが重要です。また、相続開始前7年以内の贈与は、相続税申告時に相続財産へ持ち戻される可能性がある点にも注意が必要です。
贈与税の申告漏れが発覚する可能性は十分にあります。特に、
といったケースが代表例です。無申告の場合でも、相続開始前7年以内の贈与は相続税の計算に持ち戻される可能性があり、加算税や延滞税が課されることもあります。
現在の新NISA制度では、18歳以上でなければ口座開設ができません。なお、2026年度税制改正大綱において、未成年者向けの「こどもNISA(仮称)」の創設が検討事項として明記されています。ただし、制度の導入時期や具体的な内容は現時点では確定していません。
そのため、未成年の子や孫への資産移転については、現行制度では預貯金による贈与など、他の手法を併用する必要があります。
なお、旧制度における未成年者向けの「ジュニアNISA」は2023年で新規受付を終了しており、現在は新たに開設できません。
関連サイト財務省「ジュニアNISA制度の概要」
新NISAで保有している株式や投資信託は、非課税運用が可能ですが、相続が発生した場合は原則として時価評価で相続税の課税対象になります。新NISAの非課税措置はあくまで所得税や住民税に関するものであり、相続税についてではないのでご注意ください。
はい、相続税の対象になります。相続税は相続開始時点の時価で評価されるため、含み益を含めた金額全体が相続税評価額となります。
はい。含み損がある場合は、時価で評価されるため、その分相続税評価額が低くなります。結果として、相続税負担が軽減される可能性があります。
相続税の追加課税はありません。ただし売却時には譲渡所得税が課税される可能性があります。
取得価額は「被相続人の取得価額を引き継ぐ」点に注意が必要です。
新NISA口座は、個人ごとに開設される非課税口座であり、相続が発生するとその口座は閉鎖扱いとなります。被相続人の新NISA口座に残っていた資産を、相続人の新NISA口座にそのまま移すことはできません。
新NISAは相続税対策のひとつとして活用できますが、相続税の節税対策には以下のように様々な方法があります。
自分に合った相続税対策をしたいのであれば、相続や生前贈与に精通した税理士に相談することもご検討ください。
新NISAと相続税に関してよくある質問をまとめました。(本内容は、2024年税制改正および2026年度税制改正大綱の内容を踏まえた現時点の制度・取扱いに基づいています。)
ありません。新NISAはあくまで所得税・住民税の非課税制度であり、相続税には適用されません。新NISA口座で保有する資産は相続開始時点の時価で必ず相続税評価されます。
名義預金認定、申告漏れ、評価誤りなどが代表例です。トラブルや失敗を防ぐためには、専門家の関与が効果的です。たとえば、私たちのような相続に詳しい税理士に相談すれば、新NISA以外の相続手続きや控除・特例の利用のご提案など、総合的なアドバイスをご提供できます。
資金の出所管理、記録保存、長期的な計画立案、専門家相談が重要です。利用する新NISA口座に紐づく情報を整理し、何か起きても親族があわてない体制を整えておきましょう。また、税理士の無料相談を利用し、今後発生する相続に対して備えるべき対策について、アドバイスを求めることは有効です。
相続税・贈与税に実務経験のある税理士が最適です。この時、注意したい点はすべての税理士が相続や贈与の手続きについて、十分な知識を備えているとは限らない点です。税理士にも得意・不得意な分野があるため、各税理士のWebサイトなどを参考に、どのような業務に力を注いでいるかを確認し、相談しましょう。また、相談先の税理士は必要に応じて他士業と連携できる体制が望まれます。トータルサポートを提供している税理士事務所を選ぶのが安心です。
部分的には有効ですが、限定的です。新NISAは長期運用を前提とした制度であるため、運用期間が短い場合は非課税メリットを十分に活かせない可能性があります。相続税対策としては、不動産や生命保険など、他の手法との組み合わせを検討することが重要です。
一概にどちらが有利とは言えず、状況によって異なります。生前贈与の場合、原則として贈与税が課税されますが、早い段階で資産を移転できる点がメリットです。一方、相続で受け取る場合は相続税の対象となりますが、基礎控除や配偶者の税額軽減などの各種特例を活用できる可能性があります。相続財産の総額、家族構成、贈与の時期によって税負担は大きく変わるため、個別に専門家へ相談することが重要です。
新NISAは資産形成に有効な制度ですが、相続税の節税を目的とする場合には万能ではありません。制度のメリット・限界を正しく理解したうえで、他の相続対策と組み合わせることが重要です。
相続税対策についてお悩みの方は、相続・贈与に精通した税理士が在籍する「杉並・中野相続サポートセンター」までご相談ください。
当サポートセンターでは開業して30年以来、2,500件を超える相続の相談をお受けしてきました。弁護士・司法書士などの専門家と協力体制を取りながら、ご相談者様の相続税対策をワンストップでサポート可能です。
杉並・中野相続サポートセンターは西荻窪駅・徒歩1分に事務所を構え、下記エリアを中心とした地域密着の相続相談を承っています。ぜひご相談ください。
新NISAは、非課税で資産を運用しながら、将来的な資産移転にも活用できる制度です。生前贈与との組み合わせや長期運用により、相続税対策を行うこともできますが、一方で贈与税の課税リスクや相続時の取り扱いなどに注意しなければなりません。
特に、高齢の方が新NISAを活用する場合には、万が一に備え、相続税対策や資産の承継方法についても考えておくことが大切です。
相続税対策は自分に合った方法で行うことが大切なので、必要に応じて専門家に相談するのも良いでしょう。