準確定申告は、被相続人が亡くなった年の所得について、相続人が代わりに行う確定申告です。
相続人が複数いる場合、「誰が申告するのか」「代表者は必要なのか」「還付金や納税額はどう扱うのか」など、通常の確定申告とは異なる悩みが生じやすくなるでしょう。
加えて、準確定申告の申告期限は相続開始から4ヶ月以内と短く、相続発生後すぐに準備を進めていく必要があります。
本記事では、相続人が複数いる場合の準確定申告について具体的な流れや注意点を解説します。
目次
準確定申告とは、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡日までに得た所得について行う確定申告です。
通常の確定申告は本人が行いますが、準確定申告は本人が申告できないため、相続人が代わりに行う点が大きな特徴です。
関連サイト国税庁「No.2022納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
準確定申告が必要となる代表的なケースは、主に以下の通りです。
一方、所得が基礎控除以下であるなど、そもそも確定申告義務がないケースでは、準確定申告も不要となります。
関連サイト国税庁「No.1199基礎控除」
相続人が複数いる場合、「準確定申告は特定の誰か1人だけが行えばよい」というものではなく、準確定申告の義務は相続人全員にあります。
実務上は、相続人のうち代表者1人が申告書を作成・提出するケースがほとんどですが、その場合でも、申告書には相続人全員の氏名を連記し、各相続人の署名または記名押印が必要になります。
また、納付すべき税額がある場合、相続人は法定相続分に応じて連帯して納税義務を負うことになります。
関連サイト国税庁「No.4132相続人の範囲と法定相続分」
実際の納付方法としては、代表者が一旦全額を納付し、後日相続分に応じて精算することも可能ですが、あらかじめ相続人間で負担割合を話し合っておきましょう。
一方で、相続放棄をした人は最初から相続人ではなかったものとみなされるため、準確定申告の義務もありません。
相続人が多い場合や、疎遠な相続人がいる場合には、署名・押印の取得や連絡調整に時間を要することも少なくありません。
申告期限の4ヶ月は想像以上に短いため、相続開始後は早い段階で相続人調査を行い、必要に応じて税理士へ相談することも検討しましょう。
相続人が複数いる場合、準確定申告は代表者を決めて準備を進めていくのが一般的です。具体的には、以下のような流れで行うことをおすすめします。
それぞれ詳しく解説していきます。
相続人が複数いる場合、まず行うべきことは相続人代表の決定です。準確定申告は相続人全員の連名で行う必要がありますが、全員が個別に作業するのは現実的ではありません。
そのため、申告書の作成や税務署とのやり取りを担う「代表者」を決めるのが一般的です。
代表者には、相続人の中で被相続人の財産状況を把握している人や、他の相続人と連絡を取りやすい人が適しています。
ただし、代表者を決めたからといって、その人だけが責任を負うわけではなく、準確定申告の義務自体は相続人全員にある点は変わりません。あくまで実務上の窓口を一本化するための役割分担と理解しておきましょう。
次に、準確定申告に必要な書類を収集します。被相続人の収入や控除内容によって必要書類は異なりますが、代表的なものは以下の通りです。
特に注意したいのが、被相続人宛てに届く書類は、死亡後も一定期間は故人の自宅に郵送される点です。
重要書類の見落としがあると申告漏れにつながるため、郵便物は代表者がまとめて確認できる体制を整えましょう。
必要書類が揃ったら、準確定申告書を作成します。使用する様式は通常の確定申告書と同じですが、申告書の氏名欄には被相続人の氏名を記載し、その下に「準確定」と明記します。
また、申告書には相続人全員の氏名と住所を記載し、原則として全員の署名または記名押印が必要です。
還付が見込まれる場合には、還付金の受取方法についても記載しておきましょう。代表者の口座で受け取り、相続分に応じて分配する形が一般的です。
完成した準確定申告書は、被相続人の住所地を管轄する税務署へ提出します。提出方法は、税務署窓口への持参や郵送、e-Taxの中から選べます。
提出期限は、相続開始の翌日から4ヶ月以内と厳格に定められているのでご注意ください。
相続人が複数いる場合、書類の回覧や署名取得に時間がかかりやすいため、期限ギリギリにならないよう余裕を持って進めることが大切です。納税が必要な場合も、同期限までに完了させる必要があります。
準確定申告の申告方法は、基本的に通常の確定申告と同様です。申告書の様式も共通であり、確定申告書を使用し、被相続人の死亡日までの所得を計算します。
作成した申告書には「準確定」と明記し、相続人全員の連名で提出しましょう。申告方法は主に以下の3つです。
近年はe-Taxの利用も増えていますが、相続人が複数いる場合には、電子署名や代理送信の設定が煩雑になることもあり、実務上は郵送や窓口提出が選ばれるケースも少なくありません。
準確定申告の申告期限は、相続開始(死亡日)の翌日から4ヶ月以内と定められています。例えば、被相続人が6月10日に亡くなった場合、申告期限は10月10日となります。通常の確定申告のように翌年3月15日までではないのでご注意ください。
準確定申告をする際には、以下のようなことに気をつけましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
そもそも、被相続人に一定以上の所得がなければ、準確定申告が不要なケースもあります。例えば、収入が一定額以下の年金のみの方、給与所得のみであり年末調整が完了している場合などです。
ただし、準確定申告が不要な方でも医療費控除などを適用することで還付を受けられる可能性があるケースもあるため、申告義務の有無とあわせて申告した方が有利かどうかも含めて判断することが重要です。
準確定申告では、被相続人が死亡日までに支払った医療費について医療費控除を適用可能です。
入院費や通院費、薬代などはもちろん、亡くなる直前の医療費が高額になるケースも多いため、控除の適用可否は必ず確認しておきましょう。
関連サイト確定申告特集「医療費控除を受ける方へ」
そのほか、社会保険料控除や生命保険料控除、配偶者控除なども、要件を満たせば適用できます。相続人が把握していない支出や控除証明書が後から見つかることもあるため、書類の整理は丁寧に行いましょう。
準確定申告によって所得税の還付金が発生した場合、その還付金は相続財産に含まれる点に注意しなければなりません。
加えて、還付金は被相続人が本来受け取るはずだった財産と考えられるため、相続税の課税対象となります。
関連サイト国税庁「No.2030還付申告」
実務上は相続人代表の口座で還付金を受け取り、法定相続分や遺産分割協議の内容に従って分配するケースが一般的です。
ただし、分配方法について相続人間で認識にズレがあるとトラブルになりやすいため、あらかじめ情報を共有しておきましょう。
準確定申告の申告義務は相続人全員にあります。「誰か1人に任せれば良い」と考えるのではなく、相続人同士で協力していく意識が大切です。
代表者を決めて、申告手続きを進めていくとしても資料の収集や署名などは協力していくと良いでしょう。
とはいえ、準確定申告の期限は短いため、自分たちで行うことが難しい場合もあります。そのようなケースでは、準確定申告に強い税理士が多数在籍する「杉並・中野相続サポートセンター」までご相談ください。
杉並・中野相続サポートセンターは西荻窪駅・徒歩1分に事務所を構え、下記エリアを中心とした地域密着の相続相談を承っています。ぜひご相談ください。
相続人が複数いる場合の準確定申告は、相続人全員に申告義務がある点が大きな特徴です。
実務上は代表者を決めて手続きを進めることが一般的ですが、署名や納税、還付金の扱いなどでは相続人全員の協力が必要となるのでご注意ください。
また、すべての相続で準確定申告が必要になるわけではなく、不要なケースも多々あります。
準確定申告が必要か判断がつかないときや、手続きに不安を感じる場合は、必要に応じて税理士へ相談することもご検討ください。