相続税や贈与税の申告をする際、不動産などの財産は相続税評価額を計算しなければなりません。そして、不動産の相続税評価額を計算するために必要な路線価や倍率が記載されているのが「財産評価基準書」です。
本記事では、財産評価基準書とは何か、確認方法、土地の相続税評価額を計算する方法について解説します。
目次
「財産評価基準書」とは、相続税や贈与税などの申告時に用いられる財産の相続税評価額を計算するための資料です。
不動産など、市場価格がはっきりしない財産については、税務上どのような評価方法でいくらと評価したのかを明らかにする必要があります。
不動産の相続税評価額を計算するにあたり、必要となる路線価や倍率などの情報をまとめたものが「財産評価基準書」です。
関連サイト国税庁「財産評価基準書」
「財産評価基本通達」は国税庁が財産の評価方法を統一的に定めた指針です。財産評価基本通達は相続税や贈与税の課税対象となる財産を評価する際のルールブックであり、土地や建物などの資産について、どのように金額を算出するかが細かく定められています。
関連サイト国税庁「財産評価」
一方、「財産評価基準書」は、全国各地の不動産について路線価や倍率などの情報をまとめた文書です。
つまり、財産評価基本通達が「評価のルールブック」であるのに対し、財産評価基準書は「そのルールに従って出した結果と根拠を示す帳票」ともいえるでしょう。
財産評価基準書は、下記などのシーンで使用します。
それぞれ詳しく解説していきます。
相続税や贈与税の申告では、被相続人または贈与者が保有していた財産の「相続税評価額」を算出し、それに基づいて課税額を計算する必要があります。
土地や建物などは、市場での価格が明確でないため、「財産評価基本通達」に基づく評価方法で算出することが原則です。
本記事後半で、土地の相続税評価額を計算する方法について、詳しく解説します。
被相続人が健在なうちから相続税対策を講じる場面でも、財産評価基準書は役立ちます。特に、不動産を複数所有している場合や、収益物件を子供に相続させる予定がある場合には、現時点での相続税評価額を正確に把握しておくと相続税対策をしやすくなるでしょう。
相続税申告や贈与税申告をした後に税務調査が行われた場合、提出した評価額の妥当性について詳細な説明を求められることがあります。
特に、不動産などの評価は、税務署と納税者側で認識の差が生じやすい分野なので注意しなければなりません。このように税務調査が行われたときの根拠としても、財産評価基準書は役立ちます。
財産評価基準書は、相続税や贈与税などの申告時に用いられる不動産の路線価や倍率などを明示した書類です。
国税庁が発表している財産評価基準書を確認すると、表示された地図をもとに路線価図や評価倍率表を確認できます。相続税評価額を調べたい土地の情報を把握しておくと、スムーズに財産評価基準書を確認できるでしょう。
次の章では、土地の相続税評価額を計算する方法を解説していきます。
土地の相続税評価額を計算する方法には、(1)路線価方式と(2)倍率方式の2種類があります。それぞれの計算方法を詳しく見ていきましょう。
路線価方式は、市街地などの一定の地域において、国税庁が毎年公表している「路線価」に基づいて評価額を算出する方法です。
関連サイト国税庁「No.4604路線価方式による宅地の評価」
路線価とは、その道路に面する標準的な宅地1㎡あたりの評価額であり、路線価図では1,000円単位で表示されています。
例えば、路線価図に「340D」と表示されている場合は、1㎡あたり34万円と計算できます。
この路線価に、対象地の地積(㎡数)を掛けることで基礎的な相続税評価額を計算可能です。ただし、土地の広さや形状によっては、下記の補正を適用し、評価額を引き下げられる場合があります。
形状や広さが一般的な自用地であれば、路線価図を活用して自分で相続税評価額を計算することもできるでしょう。
しかし、補正を適用して正確な相続税評価額を計算したい場合には、相続に精通した税理士に相談することをおすすめします。
倍率方式は、主に市街地以外の地域、路線価が設定されていない地域において使用される評価方法です。倍率方式では、市町村が公表する「固定資産税評価額」に、国税庁が定める「評価倍率表」に記載された倍率をかけて評価額を算出します。
関連サイト国税庁「評価倍率表(一般の土地等用)の説明」
例えば、固定資産税評価額が1,000万円で、その地域の宅地の倍率が1.1である場合、相続税評価額は「1,000万円×1.1=1,100万円」と相続税評価額を計算可能です。
関連サイト国税庁「No.4606倍率方式による土地の評価」
このように、路線価方式と倍率方式は評価額の計算方法が大きく異なります。財産評価基準書を確認する際には、調べたい土地では、どちらの方式が用いられているかをまず確認するようにしましょう。
財産評価基準書は、相続税や贈与税の申告にあたって、不動産の相続税評価額を計算するための重要な資料です。
財産評価基準書を確認する際には、下記などに注意しましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
財産の評価額は、原則として「課税時期(相続発生日または贈与日)」時点の評価額をもとに計算されます。
そのため、財産評価基準書を確認する際には、必ずその年度に対応した評価基準が用いられているかをチェックしなければなりません。例えば、2023年の年末に被相続人が亡くなった場合、使用すべきは2023年分の財産評価基準書です。
しかし、相続税申告の期限は相続から10ヶ月以内のため、場合によっては2024年になってから相続税を申告することもあるでしょう。
財産評価基準書は、毎年7月初旬に発表されるので、誤って2024年のものを確認しないように注意しなければなりません。
財産評価基準書に記載されている土地の評価額は、単に路線価や倍率をかけただけのものではありません。
その土地の形状や利用状況、接道条件などに応じて、下記などの補正が加えられる場合があります。
被相続人が所有していた土地が、第三者に有償で貸されていた場合、その土地は「貸宅地」として評価され、相続税評価額が軽減されます。
貸宅地は、借地人が使用していることにより、所有者が自由に利用・処分できないため、土地の価値が下がると考えられているからです。
ただし、個人に対して無償で土地を貸している場合、貸宅地として相続税評価額を計算することはできないのでご注意ください。
土地の相続税評価額を計算するには、専門的な知識や経験が必要な場合もあるので、税理士に相談することも検討しましょう。
財産評価基準書は土地の相続税評価額を計算する際に使用する資料です。しかし、土地の相続税評価額を計算する際には、補正を加える必要があるなど専門的な知識や経験が必要となります。
そのため、自分で計算や申告手続きを行うのではなく、相続に精通した税理士に相談することを検討しましょう。
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財産評価基準書は、土地の相続税評価額を計算するときに使用する路線価や倍率などをまとめた文書です。土地の相続税評価額を計算する際には、路線価方式や倍率方式といった評価方法を適切に用い、補正などを加味しなければなりません。
土地の形状や広さ、使用状況によっては、計算方法が複雑になるので、相続に精通した税理士に相談することもご検討ください。