海外在住の相続人がいた場合、遺産分割協議書の作成や遺産の名義変更手続きなどが複雑になる場合があります。海外在住の相続人は日本で印鑑証明書や住民票を用意できない可能性が高いからです。
海外在住の相続人がいても、相続税の申告期限を延長することはできないため、スムーズに相続手続きを行うことが求められます。
本記事では、海外に住んでいる相続人がいる場合の相続手続きの進め方を解説します。
目次
海外に住んでいる人物が相続人になっても、日本にある遺産を受け継ぐことは可能です。被相続人が生前、遺言書を用意していなかった場合には海外在住の相続人を含む全員で遺産分割協議を行わなければなりません。
海外に住んでいる相続人がいると必要書類の収集や遺産分割協議書の作成に時間がかかることが予想されるため、早めに手続きの準備を行うことが大切です。
関連サイト国税庁「No.4138相続人が外国に居住しているとき」
海外に住んでいる相続人は、相続手続きを行うためだけに帰国、来日する必要はありません。
遺産分割協議は相続人全員で行うとされていますが、一堂に会する必要はなくメールや電話、LINEなどによる話し合いも認められているからです。
ただし、海外に住む相続人がいることで相続手続きを進めるにあたり、下記の理由により手続きが複雑になる可能性は高いです。
上記のリスクやデメリットがあるため、他の用事で一時帰国した際にまとめて相続手続きを行ってしまうことも検討しておきましょう。
海外に住んでいる日本人だけでなく、外国籍を持っている人物も相続人であれば遺産を受け継げます。
日本では「相続統一主義」や「本国法主義」が採用されており、被相続人が日本国籍であれば日本の法律によって相続を行うと決められているからです。
したがって、遺言書で外国籍の人に財産を遺すこともできますし、相続人が外国籍の場合でも問題なく財産を受け継げます。
海外に住んでいる相続人がいる場合、海外在住者の住民票や印鑑証明書を取得できない問題が発生する可能性があります。海外在住者の住民票および印鑑証明書を取得できないときの対処法を紹介します。
海外に住んでいて日本に住民票登録をしていない人は、日本の住民票や印鑑証明書を取得することができません。
関連サイト法務省「外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の取扱いについて」
相続手続きの際に提出する住民票や印鑑証明書のかわりとして、サイン証明や在留証明を活用可能です。
サイン証明とは、日本に住民登録がない人が印鑑証明書の代わりとして使用できる書類であり、現地の在外公館で申請、取得できます。
具体的には、遺産分割協議書などの書類を在外公館に持参し、係官の前でサインし、証明書を綴じてもらうことで証明します。
在留証明は日本に住民登録のない人が住民票の代わりに使用でき、在外公館で発行可能です。発行時には、下記の要件を満たす必要があります。
相続人が外国籍のケースや海外在住歴が長く日本語がおぼつかない場合も、中にはあるでしょう。
その場合には、国際相続について精通した専門家に相談し、通訳や翻訳をしてもらうことをおすすめします。
国際相続に詳しい専門家であれば、通訳や翻訳だけでなく、必要書類の収集や相続手続きのサポートも可能です。
海外に住んでいる相続人がいる場合、通常よりも相続手続きに時間がかかることが予想されるため、効率よく連絡を取り手続きを進めていかなければなりません。
海外在住の相続人との手続きの進め方を詳しく解説していきます。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、メールや手紙、LINEなどで行っても問題ありません。
そのため、海外に住んでいて直接話しにくい相続人とは、メールやLINEなどのテキストメッセージで連絡を取り合うのも良いでしょう。
顔を合わせて話をしたい場合は、Google meetやzoomなどのサービスを使うのも選択肢のひとつです。
被相続人が遺言書を用意していない場合、相続人全員で遺産分割協議を行います。そして、遺産分割協議で話し合った内容をもとに、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書には相続人全員の署名や押印が必要なので、海外に住んでいる相続人のもとに郵送してサインをしてもらいましょう。
海外在住者で印鑑証明書や住民票を用意できない場合は、先ほど解説したサイン証明や在留証明の発行が必要です。
遺産分割協議書が完成したら、それぞれの財産の名義変更手続きを行います。
現預金の場合、海外に住んでいる相続人が日本国内に保有している銀行口座に送金することも可能です。また、海外口座への送金も可能ですが、手数料や手間がかかってしまいます。
送金以外の方法に、日本に住む相続人の家族に受領してもらう代理受領があります。ただし、後々のトラブルを防ぐために代理受領について書面で証拠を残しておきましょう。
海外に住んでいる相続人がいる場合、相続手続きが複雑になる以外にも相続税申告が必要な点や相続トラブルが起きやすくなる点に注意しなければなりません。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
海外に住んでいる相続人であっても、遺産を受け取った場合は、国内・国外いずれの財産についても日本の相続税申告が必要です。
ただし、被相続人と相続人の両方が10年以上海外に住んでいる場合は、被相続人が遺した海外資産については相続税の課税対象から外れます。
国際相続の相続税申告は相続税の課税対象範囲の判断も必要なため、専門的な知識が要求されます。自分で行うのは難しいため、相続に強い税理士に相談するのがおすすめです。
海外に住んでいる相続人がいると、相続トラブルが発生するリスクがある点にも注意しましょう。
というのも、日本を離れている期間が長かった場合「相続になったら顔を見せるのか」「ろくに親の面倒も見てこなかったくせに」など、他の相続人に言われる場合もあるからです。
結果として、遺産分割内容で揉めてしまう、海外在住の相続人が遺産の取り分を主張しにくいなどの恐れもあります。
相続人全員が納得できる遺産分割を行うためにも、当人同士による話し合いが難しい場合は、相続に詳しい司法書士や弁護士への相談も検討しましょう。
本記事で解説したように、海外に住んでいる相続人がいる場合、相続手続きは複雑になり時間もかかります。
しかし、相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内と決められているため、相続手続きを効率よく行わなければなりません。
相続発生時に相続人が海外に住んでいる場合は、相続手続きを専門家に依頼することをおすすめします。
相続発生時に相談できる専門家は複数いますが、中でも税理士は相続税申告や相続税対策に強みを持っています。
海外に住んでいる相続人や外国籍の相続人であっても、遺産を受け取った場合は日本で相続税申告をしなければなりません。
国際相続に強みを持った税理士であれば、海外在住者の相続税申告にも対応可能です。
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相続税の申告をミスなく行いたい、相続税を節税したい人は、税理士に相談するのが良いでしょう。
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海外に住んでいる相続人も日本にいる相続人と同様に財産を受け継げます。ただし、海外に住んでいる相続人がいる場合、相続手続きが複雑になるので効率よく手続きを進めることが重要です。
また、海外在住者であっても遺産を受け継いだら、日本で相続税申告が必要な点にもご注意ください。
自分で相続手続きや相続税申告を行うのが難しい場合は、必要に応じて国際相続に強い専門家に相談することをおすすめします。