遺産分割方法のひとつに換価分割があります。換価分割とは、財産の一部もしくは全てを売却してから売却代金を分割する方法です。
換価分割は建物や不動産、株式など財産の分割が難しい場合に使われます。分割しにくい財産も相続人間で公平に分けられるメリットがある一方で、換価分割にはデメリットもあります。
本記事では相続専門の税理士が多数在籍する杉並・中野相続サポートセンターが換価分割とは何か、メリット・デメリットや注意点をわかりやすく解説していきます。
目次
換価分割とは、相続財産を一部もしくは全部売却して現金化した後に、遺産分割を行う方法です。換価分割は分割しにくい以下の種類の相続財産で行われるケースが多いです。
逆に現金や預貯金のように相続人間で分けられる財産に関しては、換価分割を行う必要はありません。例えば被相続人が生前住んでいた家を相続したものの誰もその土地や建物に住まない場合を考えてみましょう。
相続財産を空き家として残しておくよりも、売却して現金化し、それぞれの相続人で分けた方が遺産分割手続きもスムーズになります。
換価分割にはそれぞれメリットとデメリットがあります。それぞれ確認していきましょう。
換価分割の主なメリット5つを解説していきます。
換価分割では、売却して得た現金を法定相続分に応じて1円単位で分配するのが一般的です。
1円単位で財産を分けられるので、上記2つの方法よりも公平性が高いといえるでしょう。
上記のケースでは換価分割を検討するのもおすすめです。
換価分割では売却した現金を相続人間で分割します。相続人それぞれがまとまった金額の現金を手に入れられるので、相続税の納税資金としても役立てることが可能です。
相続税は原則として相続開始から10ヶ月以内に現金で一括納付しなければなりません。家や土地などの不動産、株式など現金以外の相続財産が多いと相続税の納税金を用意するのも大変です。
手元に現金が不足していて、納税資金の確保が難しい場合にも換価分割をご検討ください。
現金や預貯金よりも、家や土地などの不動産として財産を相続した方が相続税は節税できます。
家や土地などの不動産は売却時価ではなく、相続税評価額で相続税の計算を行うからです。相続税評価額は一般的に時価の約8割程度となっています。
そのため家や土地などの不動産として財産を相続し、相続後に売却して換価分割した方が納める税金を減らせる可能性が高いです。
換価分割は代償分割とは違い、手元にまとまった現金や預貯金がなくても遺産分割が可能です。
代償分割とは、家や土地など分割しにくい財産を1人で相続した方が残りの相続人に対して相続分相当の金銭を渡す遺産分割方法です。
代償分割は家や土地などを現金化しなくて良いメリットがありますが、不動産を相続する方に資産がないと選択できません。
換価分割では分割しにくい相続財産を現金化してから相続人間で分割するので、相続人にまとまった資産がない場合でも公平に遺産分割を行えます。
換価分割で家や土地などの不動産を現金化してしまえば、その後は不動産を管理する手間からも解放されます。
これらのコストや不動産の管理にかかる時間を全てカットできるので、誰も住む予定がない不動産を相続した際には、換価分割をぜひご検討ください。
換価分割には残念ながらデメリットもあります。主なデメリット5つを解説していきます。
換価分割をするには以下の手続きが必要です。
具体的には遺産分割協議書をまずは作成し、その後に相続した不動産や株式の売却を進める流れとなります。
非常に手間がかかるので、相続や不動産売却にあまり詳しくない相続人だけで手続きを全て行うのは難しいでしょう。
また相続税の申告・納付には期限があります。期限内に売却活動を完了させ、納税資金を確保しようとする場合、更に売却の手間やハードルは上がってしまいます。
換価分割をする際には、「納税資金を確保したい」や「早く相続手続きを完了させたい」などのように、売却活動を早く終えたがる方が多いです。
しかし残念ながら不動産の場合、急いで売却しようとすると相場よりも売却価額が低くなってしまうケースもあります。
不動産や株式の場合、相場の良し悪しや売れやすい時期にムラがあるので、相続人が売却したいタイミングと相場における売り時が合致しない可能性も考えられます。
不動産売却には以下の費用がかかります。
一般的には不動産売却にかかる諸費用は売却額の5%程度と言われています。
仲介手数料のように売却代金を受け取った後に支払えば良い費用もありますが、測量費用や境界確定費用などのように物件を売り出す前にかかる費用もあります。
そのため相続人全員が売却時の諸費用を用意できないとなると、換価分割をするのは難しくなってしまうでしょう.
不動産を売却して利益が出た場合、利益に対しては譲渡所得税がかかります。不動産を売却して発生した利益は売却額から以下の費用を除いた金額となります。
相続した不動産の場合、不動産の購入価額が正確に出せないケースが多く、売却時に所得税が発生してしまう可能性が高いです。
相続空き家の3,000万円特別控除など、不動産の譲渡所得税に関する特例を活用して、支払う所得税を減らす工夫を行うのが重要です。
換価分割をしようとして、相続後すぐに土地を売却してしまうと、小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性があります。
土地を相続した際に使える小規模宅地等の特例の適用要件のひとつに「相続税申告期限まで土地を所有し続けること」が含まれているからです。
小規模宅地等の特例は、相続した土地の評価額を大幅に下げることができる制度です。小規模宅地等の特例が使えない場合、相続税の金額が大きく上がる可能性もあるのでご注意ください。
続いて換価分割を行う際の流れを紹介していきます。
換価分割を行う際には、相続人全員が換価分割に合意しなければなりません。相続人全員が合意できたら、遺産分割協議書にその旨を明記しましょう。
遺産分割協議が完了したら、相続財産の売却手続きを進めていきましょう。原則として法定相続人全員が協力して、売却手続きを進めていく必要があります。
相続財産が不動産の場合、上記のように細かな手続きが必要になります。手間がかかるので相続人の代表者を決めておくとスムーズです。
なお相続人の代表者が一度、不動産を相続してから単独で売却活動を行う方法も認められています。
しかし売却後にトラブルに発展する可能性もゼロではないので、安易な選択はおすすめできません。
売却が完了したら、売却代金を受け取ります。相続人の代表者を選定し代表者が売却活動を進めていたとしても、代金の受取口座は代表者の個人口座にしないことをおすすめします。
上記を避けるためにも少し手間がかかりますが、売却代金を受け取る専用口座を作っておくのが良いでしょう。
売却代金を受け取った後は、経費を除いた利益を法定相続人で分配しましょう。分配時の割合は法定相続分が原則です。
ただしあくまでも原則なので、相続人全員が合意した分配であれば法定相続分に従わなくても問題ありません。
換価分割をする際にはいくつか注意すべきポイントがあります。それぞれ確認していきましょう。
換価分割を行う際には必ず遺産分割協議書を作成しておきましょう。遺産分割協議書を作成せず以下の手順で換価分割を行った場合、贈与税が課される可能性があります。
不動産を売却したときに使える譲渡所得の控除や特例は相続人ごとに異なります。
例えば被相続人と同居していた方は、住んでいた住宅を売却した際に「居住用財産の3,000万円控除」を適用可能です。
それに対して、被相続人と同居していなかった方は控除が使えません。結果として支払う譲渡所得税の金額に差が生じてしまいます。支払う譲渡所得税が多くなった相続人は不公平感を感じる可能性もあるでしょう。
換価分割は家や土地など分割しにくい財産を公平に遺産分割できる手段のひとつです。メリットが大きい一方で売却時には手間もかかりますし、換価分割を行う際には遺産分割協議書で法定相続人全員が合意する必要があります。
換価分割をスムーズに行い、相続人全員が納得する遺産分割を行う際には相続に詳しい専門家への相談もご検討ください。
特に相続人菅で遺産の分け方について意見が合わず、トラブルになってしまうと解決まで時間がかかります。トラブルになる前に、相続に関する相談や対策をしておきましょう。
当サポートセンターでは、相続を専門に扱う税理士のみでなく弁護士や司法書士、不動産鑑定士などの専門家と連携を取りご相談者様の相続サポートを行います。
遺産分割協議書の作成から相続税の申告まで一括してサポートが可能です。相続手続きの手間やトラブルを減らしたい方は、ぜひ一度、お気軽にお問合せください。
初回利用者向けの無料相談会も行っていますので、相続に関する疑問やお悩みがある方はご連絡ください。
換価分割とは相続財産を売却後、現金化してから各法定相続人に分配する遺産分割方法です。家や土地などの不動産や株式など分割しにくい相続財産を分ける際に適しています。
換価分割は現金を法定相続人間で分けるので、公平に遺産分割できるのがメリットです。
一方で換価分割には売却時の手間がかかる、法定相続人全員の合意が必要などのデメリットもあります。換価分割を行うのであれば、相続人同士でトラブルが起きる前に遺産分割協議や売却手続きを進めていかなければなりません。
換価分割の手続きや遺産分割協議書の作成にお悩みであれば、相続に関する税理士や弁護士に相談することもご検討ください。