未登記建物とは、すでに建築されているにもかかわらず、登記簿(表題部と権利部)に必要な情報が記載されていない状態の建物です。未登記建物はそのままでは所有権を証明できず売却も難しいのでご注意ください。
万が一、未登記建物を相続した場合はまず表題部を登記した後に所有権移転登記を行わなければなりません。
また未登記建物は建物が古い場合も多いため、不動産に関する情報を集めることも大切です。本記事では、未登記建物とは何か、未登記建物を相続するリスクとデメリット、登記申請の流れを紹介します。
目次
未登記建物とは、建築されているにもかかわらず、不動産登記簿に登録されていない建物です。特に個人所有の住宅や地方にある古い建物などで、未登記のまま放置されるケースが少なくありません。
未登記建物は登記されていないことで所有権や利用権の証明が難しくなり、様々なリスクやデメリットが生じます。
未登記建物を相続する場合、そのままの状態では所有権を証明できないため、不動産の売却もできません。
未登記建物を相続するリスクとデメリットを解説します。
未登記建物はそのままでは所有権を証明できないため、未登記建物を受け継いだことを証明するのも難しくなってしまいます。
未登記の建物であっても売買自体は成立します。しかし、未登記建物は売主の所有権を証明できない上に、買主もそのままの状態では所有権を主張できません。
したがって、未登記建物は売却するのが難しく、相続しても売却できないまま管理コストだけがかかり続ける恐れがあります。
未登記建物には抵当権を設定することができません。抵当権とは金融機関が融資の担保として設定する権利ですが、登記がなされていない建物では担保価値を評価できないため融資の担保にはなりません。
したがって、未登記物件を相続した人は相続不動産を利用して融資を受けることや建物を担保に入れリフォーム費用を捻出するなどもできません。
また、未登記物件を購入しようとする買主も金融機関から借入をして購入することはほぼできないといえます。
未登記建物では建物部分の固定資産税が課税されない恐れがあり、土地部分に高額な課税がなされる場合があります。
住宅が建築されている土地は固定資産税や都市計画税が減額される軽減措置が適用されるからです。
建築されている建物が未登記建物の場合、自治体が建物の存在を把握していない可能性もあり、固定資産税等の軽減措置が適用されない可能性があります。
未登記建物をそのまま放置しておくと、相続が繰り返されるたびに権利関係者が増えて相続手続きや登記申請が複雑になる恐れがあります。
場合によっては、雪だるま式に権利関係者が増えてしまう可能性もあるでしょう。
未登記建物を放置していると、過料が発生する恐れがあります。というのも、新築建物は原則として1ヶ月以内に登記を申請することが義務付けられているからです。
未登記建物を放置していると過料(罰金)が科される可能性があるのでご注意ください。
未登記建物を相続した場合、リスクやデメリット、トラブルを防ぐため、適切な手続きが必要です。未登記建物を相続した場合の流れを詳しく見ていきましょう。
まずは相続した未登記建物の現状を把握しましょう。具体的には、下記を確認しておくとその後の手続きを進めやすくなります。
未登記建物かと思ったが、そもそも被相続人が所有していたのではなく実は借家だったり、既に第三者が登記しているというような可能性もゼロではないからです。
建物の所在地や所有権についての確認は固定資産課税台帳や登記簿謄本で確認できます。
相続人が複数人いる場合は、誰が未登記建物を受け継ぐかを決定しなければなりません。具体的には、下記の流れで手続きを進めます。
被相続人が遺言書を用意していなかった場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が未登記建物を相続するか話し合わなければなりません。
未登記建物を受け継ぐ人物が決定したら、登記申請の準備を進めましょう。未登記建物を相続した場合、下記の登記申請を行わなければなりません。
未登記建物を相続した場合、まずは「建物表題登記」を行い、建物の所在地や構造、床面積などを登録する必要があります。
表題登記が完了したら、相続による所有権移転登記を行います。
このように、未登記建物を相続した場合は登記申請が複雑になるので、建物表題部登記の代理申請ができる土地家屋調査士や相続に詳しい司法書士に依頼するのが良いでしょう。
関連サイト法務局「不動産登記申請手続」
未登記建物を相続した場合は、登記申請や相続手続きが複雑になる場合が多いです。少しでも手続きをスムーズにするために、下記のことを注意しましょう。
それぞれ詳しく紹介していきます。
未登記建物が老朽化しており解体を予定している場合は、必ずしも登記を行う必要はありません。相続後すぐに解体する予定であれば、表題登記や所有権移転登記を省略できると決められているからです。
ただし、未登記建物を相続後に解体する場合、解体費用や手続きの責任は相続人が負います。
相続人が複数人いる場合は、誰がどれくらいの割合で責任や費用を分担するのか話し合っておかなければなりません。
また、解体工事が終わったら家屋滅失届を役場の窓口へ提出しましょう。そうすることで、翌年から建物に対する固定資産税がかからなくなります。
関連サイト東京都主税局「家屋(全部・一部)滅失届書 – 東京都主税局」
未登記建物に限らず、被相続人が遺言書を作成していなかった場合は遺産分割協議を行わなければなりません。
そして、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるのでご注意ください。相続人に漏れがあった場合は、遺産分割協議が無効になりやり直しが必要になってしまいます。
遺産分割協議が行う前には、相続人調査により相続人を確定させる作業が必要です。
不動産などの遺産を受け継ぐと相続税がかかる場合があります。相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除があり、遺産総額が基礎控除を上回ると相続税がかかります。
未登記建物についても相続税の課税対象となるのでご注意ください。相続税申告時に相続財産の漏れがあると、加算税や延滞税などのペナルティが発生してしまいます。
相続税の申告をミスなく確実に行いたい場合は、相続に精通した税理士に依頼することをおすすめします。
不動産を相続したときには、相続税申告や登記申請などが必要になり相続手続きが複雑になります。
特に、未登記建物を相続した場合は表題部の登記も必要になるため、相続人が自分で行うことは現実的ではありません。
不動産を相続した場合の相続税申告や手続きは、相続に強い税理士や専門家が多数在籍する「杉並・中野相続サポートセンター」までご相談ください。
当サポートセンターでは開業して30年以来、2,500件を超える相続の相談をお受けしてきました。弁護士・司法書士などの専門家と協力体制を取りながら、ご相談者様の相続手続きをワンストップでサポート可能です。
杉並・中野相続サポートセンターは西荻窪駅・徒歩1分に事務所を構え、下記エリアを中心とした地域密着の相続相談を承っています。ぜひご相談ください。
未登記建物とは、建物が新築されたときに登記申請されずに放置された建物です。
未登記建物は所有権を証明できないため、そのままの状態では売却は難しい上に、融資を受けるための担保にすることもできません。
未登記建物を相続した場合は、所有権移転登記の前に表題部の登記をしなければなりません。手続きが複雑になる可能性が高いので、相続に精通した専門家に依頼するのが良いでしょう。