被相続人が遺言書を用意していなかった場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
しかし、相続や遺産の状況によっては、遺産分割協議書を用意しなくても預金の解約手続きを行える場合があります。
具体的には、相続人が1人の場合や遺産が預金しかない場合は遺産分割協議書がなくても手続きを行うことが可能です。
本記事では、預金は遺産分割協議書なしでも手続きできるのか、手続きの流れや注意点について解説します。
目次
相続が発生した際、預金を相続するために通常は「遺産分割協議書」が必要です。遺産分割協議書は、相続人全員が遺産をどのように分配するかを話し合い、その結果を文書にまとめたものです。
しかし、すべての場合において、必ずしも遺産分割協議書が必要というわけではありません。
次の章では、遺産分割協議書なしでも預金の相続手続きを行えるケースを詳しく解説します。
相続人が1人しかいないケースや被相続人が遺言書を用意しており、遺産分割の内容が明らかな場合は遺産分割協議書がなくても預金の相続手続きを行えます。
詳しく見ていきましょう。
相続人が1人しかいない場合、遺産を分割する必要がないため、遺産分割協議書を作成する必要はありません。
相続人が1人しかいないケースでは、金融機関に必要書類を提出すれば預金の解約手続きが完了します。
被相続人が遺言書を作成していた場合、その遺言書に基づいて預金の相続手続きを行えます。
遺言書の内容通りに遺産分割を行う場合、遺言書などの必要書類を金融機関に提出すれば預金の相続手続きを行えます。
遺産が現金や預金のみで、他に不動産や株式などの相続財産が存在しない場合も遺産分割協議書を作成せずに相続手続きを行える場合があります。
この場合、金融機関所定の相続手続依頼書を提出すれば手続きが完了するからです。
ただし、後々のトラブルを避けるためにも、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印しておくことが望ましいでしょう。
相続人全員が遺産を法定相続分に従って分配することに同意している場合、遺産分割協議書を作成しなくても預金の相続手続きを進められます。
法定相続分とは、民法で定められた相続割合のことで相続人ごとに決められています。
法定相続分で相続手続きを進める場合、遺産分割協議書の作成は不要とされていますが、後々のトラブルを避けるために「法定相続分通りに遺産分割を行う」といった内容の遺産分割協議書を作成しておくと安心です。
遺産分割協議書なしで預金の相続手続きをする場合、被相続人が利用していた金融機関に連絡をして必要書類を用意する必要があります。
それぞれの流れごとに詳しく見ていきましょう。
まず、被相続人が預金を保有していた金融機関に連絡をし、相続手続きの方法や必要書類を確認しましょう。
金融機関によって、提出書類や手続き方法が異なる場合があるからです。金融機関に連絡をする際には、下記の情報を手元に用意しておくとスムーズです。
また、金融機関に被相続人の死亡を連絡すると、その時点で口座が凍結され原則として預金の入出金ができなくなることも理解しておきましょう。
続いて、金融機関から案内された必要書類を収集しましょう。一般的には、下記の書類が求められることが多いです。
預金の相続手続きをする際には、被相続人と相続人の関係性を証明する書類の提出が必要です。
被相続人が生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本を取得するのが難しい場合は、相続の専門家に相談しましょう。
必要書類が揃ったら、金融機関に提出します。書類提出の方法は金融機関によって異なりますが、一般的には窓口に直接持参するか、郵送での対応が求められます。
預金の相続手続きは、金融機関側でも確認作業に1~2週間ほどかかる場合があるため、できるだけ早めに書類を揃え、提出することが重要です。
書類の審査が終わると、いよいよ預金の払い戻し手続きが行われます。
相続人が1人の場合は、特に問題なく相続人の指定した口座に預金が振り込まれますが、相続人が複数いる場合は、法定相続分に応じた金額が各相続人に払い戻されることになります。
また、金融機関によっては相続人代表の口座に全額を振り込み、そこから相続人間で分配する形式を取る場合もあるので確認しておきましょう。
遺産分割協議書なしで預金の相続手続きを進めることは可能ですが、相続税申告や相続登記など別の手続きで遺産分割協議書が必要な場合もあります。
また、必要ないケースでも後々のトラブルを避けるために遺産分割協議書を作成しておくと安心です。
遺産分割協議書を作成せず預金の相続手続きを進めるときの注意点を解説します。
遺産分割協議書なしで預金の相続手続きを進める場合でも、相続税申告や相続登記といった他の手続きでは、遺産分割協議書の作成が必要になるケースがあります。
後から作成が必要で慌てなくてすむように、遺産分割協議を終えたら内容を協議書にまとめておくのが良いでしょう。
遺産分割協議書を作成せずに預金を相続した場合、後から相続人間でトラブルが発生する可能性があります。
相続人間での合意が容易ではなかった場合はもちろん、相続人に未成年者がいる場合や認知症などで判断能力が低下している相続人がいるケースも遺産分割協議書があったほうがよいでしょう。
遺産分割協議書がない状態では、後から相続人が「話し合いに合意していない」「自分は納得していない」と主張する可能性もゼロではないからです。
後々のトラブルを避けたいのであれば、遺産分割協議書の作成が不要なケースでも作成しておくことをおすすめします。
遺産分割協議書を作成し相続人全員が署名、押印すれば後から内容を覆すことは難しくなるからです。
預金の相続手続きでは、必ずしも遺産分割協議書の作成は必要ありません。
金融機関所定の届出書や依頼書に被相続人と相続人の関係性を証明する書類などを提出すれば手続きを行えるからです。
また、被相続人が遺言書を用意していたケースや相続人が1人のケースなどでは、そもそも遺産分割協議書の作成が不要な場合もあります。
ただし、相続人が複数いる場合は、後々のトラブルを避けるために遺産分割協議書を作成しておくと安心です。
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遺産分割協議書は誰がどの遺産を取得するかをまとめた書類であり、相続人全員が協議の内容に合意したことを証明する書類でもあります。
そのため、相続人が1人のケースや遺言書があるケースでは、遺産分割協議書の作成は不要です。
また、遺産が預金のみであれば金融機関所定の書類で手続きできるので、遺産分割協議書の作成は必要ありません。
しかし、相続税申告が必要な場合や相続人が複数人いて後々のトラブルを回避したい場合は、遺産分割協議書を作成すると良いでしょう。
遺産分割協議書の作成や相続手続きは、専門的な知識が必要な場合もあるので、相続に精通した税理士や司法書士、弁護士に相談することもご検討ください。