事業承継税制は平成30年の税制改正によって特例措置が設けられました。特例措置によって、事業承継税制の適用範囲が広がり、より多くの経営者が活用しやすくなっています。
事業承継税制のメリットが大きくなった一方で、特例措置を利用するためには令和6年3月31日までに特例承認計画を各都道府県に提出しなければなりません。
特例承認計画を提出してしまえば、提出後10年間に行われた自社株の生前贈与や贈与税は猶予、免除してもらえます。
そのため少しでも事業承継について考えている経営者は、特例承認計画を提出して損はないと言えるでしょう。
目次
事業承継税制とは、先代経営者が後継者に自社株を相続もしくは生前贈与してもらうときに活用できる制度です。
事業承継税制を適用すれば、自社株を引き継ぐときにかかる相続税や贈与税は全額猶予、免除してもらえます。
節税効果が高いので、事業承継についてお考えの方や納税資金の確保にお悩みの方は、適用を検討しても良いでしょう。
特例承認計画とは、事業承継税制の特例措置を利用するために必要な提出書類です。
事業承継税制は適用範囲が狭く使い勝手が悪いのがデメリットでしたが、平成30年の税制改正によって条件が大幅に緩和されました。
ただし条件が緩和された状態で事業承継税制を活用するのであれば、事前に特例承認計画を作成し提出しなければなりません。
この2点を踏まえ、実際に特例承認計画の作成方法や記入例を確認していきましょう。
特例承認計画の記入項目は以下の通りです。
それぞれ記入例とともに解説していきます。
事業者の名称だけでなく、事業内容や資本金の額、常時使用する従業員数も記入する必要があります。
特例承認計画と共に登記簿も提出するので、会社情報は登記簿に記載された内容と一致するようにしてください。記入例は以下の通りです。
主たる事業内容 | 生活関連サービス業(クリーニング業) |
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資本金額又は出資の総額 | 4,000,000円 |
常時使用する従業員の数 | 10人 |
従業員数に関しては役員を除いた社会保険加入者の数を記載します。
事業承継を行う予定の先代経営者の名前と代表権の有無を記載します。退任後に特例承認計画の提出を行う場合には、退任日も記載しましょう。記入例は以下の通りです。
特例代表者の氏名 | 杉並 太郎 |
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代表権の有無 | 有 |
特例後継者の欄には、自社株を相続もしくは生前贈与させたい後継者の名前を記載します。
特例後継者の欄に名前を記入していない方への事業承継税制の特例措置の適用は認められないのでご注意ください。特例後継者の欄には3人までの名前を記入可能です。
また、変更申請書を提出すれば、特例後継者を変更できます。記入例は以下の通りです。
特例後継者の氏名(1) | 杉並 太郎 |
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特例後継者の氏名(2) | 中野 花子 |
特例後継者の氏名(3) | 武蔵野 明 |
後継者が自社株を取得する時期や事業承継を行うまでの経営課題も記載する必要があります。ただし自社株を後継者が取得した後に、特例承認計画の提出をする場合には記載を省略可能です。
株式を承継する時期(予定) | 令和5年10月 |
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当該時期までの経営上の課題 | 原材料の高騰が続き、現状の利益率確保が困難になりつつある |
当該課題への対応 |
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「特例後継者が株式等を承継した後5年間の経営計画」では、後継者が自社株を引き継いだ後の5年間の経営計画を記載します。
売上や利益などの具体的目標金額が必要なわけではなく、後継者が今後も事業を続け発展させるために必要だと考えることを記載すれば大丈夫です。
中小企業庁が発表している記載例をもとに作成してしまっても問題ありません。
ただし事業承継後の経営を安定させるためにも特例承認計画とは別に、先代経営者と後継者が納得できる事業計画書を作成しておくのが良いでしょう。
実施時期 | 具体的な施策内容 |
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1年目 |
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2年目 |
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3年目 | 新工場の建設着工 |
4年目 | 新工場の運転開始 |
5年目 | 新工場の稼働の改善を行う |
特例承認計画は作成後に認定支援機関に所見を記載してもらう必要があります。
認定支援機関とは、中小企業に対して専門性の高い支援を行うために、国から認定された税理士や弁護士等の専門家です。
特例承認計画の別紙で用意されている「認定経営革新等支援機関による所見等」には、認定支援機関に関する情報を記載しておきましょう。
特例承認計画は、令和6年3月31日までに、各都道府県に提出する必要があります。令和4年の税制改正によって、提出期限が令和5年3月31日から令和6年3月31日までに延長されました。
特例承認計画の提出期限が延長されたことにより、以下の点に注意が必要です。
上記の影響を受け、事業承継の計画が変わる方もいるかもしれません。
特例承認計画を作成、提出するときにはいくつか注意すべきことがあります。それぞれ確認していきましょう。
特例承認計画を提出するのは、各都道府県庁です。そのため都道府県によっては特例承認計画の提出ルールが若干異なる場合があります。
提出する都道府県は会社の主たる事業所がある都道府県です。細かい提出ルールに関しては、各都道府県のHPを確認しておきましょう。
特例承認計画を提出すれば、提出後の最長10年間で事業承継税制の特例措置を利用可能です。10年もの長い月日の間に当初の事業承継計画に変更が出てくる可能性もあるでしょう。
以下のケースでは変更確認申請書を提出し、特例承認計画の内容を変更する必要があります。
特例承認計画をすれば、提出後の最長10年間は事業承継税制の特例措置を利用できます。特例措置は、従来の措置と比較して適用要件が大幅に緩和され、利用しやすくなっています。
メリットが大きい事業承継税制の特例措置を利用したい方は、ぜひ令和6年3月31日までに特例承認計画を提出してください。
しかし特例承認計画は作成の手間もかかりますし、認定支援機関の承認を受ける必要もあり提出まで時間がかかります。
事業承継税制に詳しい税理士に特例承認計画の作成や税制適用までのサポートを受けることを検討してみても良いでしょう。
杉並・中野相続サポートセンターでは、特例承認計画の作成もサポート可能です。
特例承認計画の作成から事業承継税制の適用、自社株以外の財産の相続税対策までご相談者様の事業承継を一括でサポートしてまいります。
初回利用者向けの無料相談会も行っておりますので、事業承継に関する疑問やお悩みがある方は、お気軽にお問い合わせくださいませ。
事業承継税制は平成30年の税制改正で設置された特例措置によって、大幅に適用要件が緩和されました。
しかし特例措置を利用するには、令和6年3月31日までに特例承認計画を提出しなければなりません。特例承認計画の作成自体は中小企業庁が発表する記入例をもとに作成可能です。
しかし事業承継を成功させるには、特例承認計画の作成だけでなく事業承継税制の手続きや相続税対策も行う必要があります。
経営者や後継者が本来の事業に集中するためにも、事業承継に詳しい税理士などの専門家に相談することもご検討ください。