被相続人が所有していた仮想通貨も相続税の課税対象に含まれます。
また、仮想通貨を相続したときには、被相続人から相続人へ名義変更する際に一旦売却した扱いになるため、相続税だけでなく所得税もかかる点に注意しなければなりません。
相続発生時に被相続人が所有している仮想通貨に多額の税金がかかるのを避けたいのであれば、生前のうちに仮想通貨を現金化してもらうことも検討しましょう。
本記事では、仮想通貨の相続手続きの流れや発生する税金、相続時の注意点について解説します。
目次
被相続人が遺した仮想通貨(暗号資産)は、相続財産として扱われるため、相続人への名義変更手続きや相続税の計算などが必要です。
被相続人が所有していた仮想通貨を相続する流れは、下記の通りです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続発生後は、被相続人が利用していた暗号資産交換業者(仮想通貨取引所)を特定して問い合わせましょう。
被相続人が利用していた暗号資産交換業者を特定する方法は、主に下記の通りです。
暗号資産交換業者を特定した後は、業者に被相続人が死亡したことを連絡し、相続手続きや必要書類について確認しましょう。
問い合わせ後は、暗号資産交換業者から相続手続きをするための案内や確認事項が届きます。
暗号資産交換業者によって必要書類が異なる場合もありますが、一般的には下記の書類提出を求められることが多いです。
相続手続きが開始されると、被相続人が持つ暗号資産口座は一時的に凍結されます。暗号資産口座の凍結により、不正な取引やアクセスを防ぎ、資産が適正に相続されるよう保護される仕組みです。
なお、凍結中は口座からの出金や取引が行えないため、相続手続きが完了するまで待たなければなりません。
暗号資産口座の凍結が行われた後、暗号資産交換業者から相続手続きを進めるための必要書類が送付されます。
送付される書類の中に、添付書類についての情報も記載されているので、よく確認しておきましょう。
相続人は、送付された書類を確認し必要な情報を記入し、添付書類と共に返送します。書類不備があると手続きが遅れるため、丁寧に確認することが大切です。
また、場合によっては、相続人全員の合意書実印が必要となる場合もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
被相続人の暗号資産口座から相続人の暗号資産口座へ送金される必要書類がすべて提出され、相続手続きが完了すると被相続人の仮想通貨の払い戻しが行われます。
仮想通貨の相続手続きでは、主に下記の2種類の方法を選択可能です。
仮想通貨のまま移してほしい場合は、被相続人が利用していた暗号資産交換業者にて相続人が口座開設を済ませておく必要があります。
仮想通貨を相続する際、相続税と所得税・住民税が課税される可能性があり、合計で最大110%の税負担が生じる場合があります。
仮想通貨を相続したときにかかる税金について、詳しく見ていきましょう。
仮想通貨は、現金や不動産と同様に相続財産として評価され、相続税の課税対象に含まれます。相続税は累進課税制度を採用しており、遺産総額が6億円を超える場合、最高税率が適用され税率は55%になります。
仮想通貨のみで遺産総額が6億円を超えるケースは非常に稀でしょう。
ただし、相続税は預貯金や不動産など遺産総額に対してかかるので、被相続人の資産が多ければ相続税の税率が高くなってしまう可能性はあります。
仮想通貨の相続に関連する税金は相続税だけではありません。相続した仮想通貨を売却もしくは他の仮想通貨に交換した場合、利益に対して所得税および住民税が課税されます。所得税も累進課税制度を採用しており、最高税率は45%です。
なお、仮想通貨の取引による所得は「雑所得」として扱われ、他の所得と合算されるため、累進課税の対象となるのでご注意ください。
住民税は一律10%のため「相続税55%+所得税55%+住民税10%=合計110%」の税金がかかってしまう恐れがあります。
仮想通貨を相続したときに一度に多額の税金が発生することを防ぎたいのであれば、相続後に仮想通貨を売却するタイミングについても考慮する必要があるでしょう。
関連サイト国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」
仮想通貨の相続税評価額を算出する際は、相続した仮想通貨に活発な市場が存在するか否かで算出方法が変わってきます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
活発な市場が存在する仮想通貨を相続した場合、下記の2つの方法で相続税評価額を算出します。
残高証明書については、被相続人が使用していた暗号資産交換所や取引所にて取得できます。
残高証明書を取得するのが手間であれば、取引所が公表している売却価格をそのまま相続税評価額にすることが認められています。
関連サイト国税庁「残高証明書等を活用した仮想通貨残高に係る相続税申告手続の簡便化(イメージ)」
なお、複数の取引所や暗号資産交換所で同一の仮想通貨を所有していた場合は、最も低い取引価格を相続税評価額として計算可能です。
被相続人が所有していた仮想通貨に活発な市場が存在しない場合は、仮想通貨の内容や取引実態をもとに個別に評価しなければなりません。
相続税の申告ミスや税務調査のリスクを下げるためにも、自分で評価額を計算するのではなく仮想通貨や相続に精通した専門家に評価を依頼するのが良いでしょう。
仮想通貨を相続したときにかかる税金を少しでも軽減したいのであれば、相続が発生する前、すなわち被相続人が死亡する前に仮想通貨を現金化してもらい資産の組み換えを行ってもらいましょう。
相続発生前に仮想通貨が現金化されていれば、仮想通貨の相続税評価額が高くなってしまい税負担が重くなることもないからです。
また、相続人が仮想通貨の取引に不慣れな場合、相続後の手続きや売却などの負担を減らすこともできます。
仮想通貨の相続には、通常の財産相続と異なる独特のリスクや注意点が存在します。主な注意点は、下記の通りです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
被相続人が仮想通貨デジタル資産を持っている場合は、所有している資産をリスト化してもらいましょう。相続発生後に、被相続人がどのようなデジタル資産を保有していたかを調査することは非常に難しいからです。
デジタル資産は名前の通りデジタルであり形がないので、そもそも存在自体が発見されない恐れもあります。
そのため、仮想通貨の取引をしている場合は、下記の情報をリスト化しておき、自分に何かあったときに家族や親族が確認できるようにしておきましょう。
相続発生後に、被相続人が所有していたパソコンやスマホはすぐに処分しない方が良いでしょう。仮想通貨に関する情報は、パソコンやスマホの中に保管されていることが多いからです。
相続後すぐに被相続人のデバイスを処分すると、情報を引き出せなくなり仮想通貨の相続手続きを進められなくなってしまう、そもそも遺族が仮想通貨の存在に気付けなくなる恐れもあります。
被相続人から相続人へ仮想通貨の名義が移るまで、取引や出金をするのは避けましょう。原則として、仮想通貨取引を本人以外が行うことは禁止されているからです。
関連サイトGMOコイン「本人以外による取引の禁止について」
また、遺産分割協議が完了するまで被相続人が所有していた仮想通貨は相続人全員の共有財産となります。
後から相続トラブルが起きることを防ぐためにも、名義変更が完了するまでは仮想通貨をそのままの状態にしておくのが良いでしょう。
まずは暗号資産交換業者との手続きを進めることが優先されます。相続人としての権利が認められ、名義変更が完了するまで、被相続人のアカウントから取引や出金を行わないことが重要です。
被相続人が所有していた仮想通貨は相続税の課税対象に含まれます。仮想通貨を含む遺産総額が基礎控除を上回る場合は、相続税申告をしなければなりません。
被相続人が仮想通貨を所有していた場合、仮想通貨の相続税評価額を算出しなければならないため、相続税申告の難易度が上がります。
また、場合によっては相続人調査や相続財産調査から専門家に任せた方が良いケースも多いです。
仮想通貨の相続税申告をミスなく確実に行いたい場合は、相続に強い税理士に相談するのが良いでしょう。相続税申告は、相続に強い税理士が多数在籍する「杉並・中野相続サポートセンター」までご相談ください。
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被相続人が所有していた仮想通貨は相続財産に含まれ、遺産分割および相続税の対象です。
なお、仮想通貨を売却もしくは他の仮想通貨に交換すると、所得税や住民税がかかるため、相続税と合わせると最大110%の税率がかかる恐れがあります。
このように、仮想通貨を相続したときは税負担が非常に重くなる場合もあるので、売却のタイミングには細心の注意を払いましょう。
仮想通貨で相続税の節税を行うことは難しいので、相続が発生する前に仮想通貨を現金化して別の方法で相続税対策をすることもご検討ください。
相続税対策には複数の方法があるので、何をすれば良いか迷ってしまう場合は、相続に強い税理士に相談してみることをおすすめします。